マガジンのカバー画像

SF、読書のよろこびマガジン

150
大人になってからSFの楽しみを知った人の記録。本が好き、ゲーム興味ないかたはここで。
運営しているクリエイター

#マンガ

すばる7月号を学校の図書室に置こう

すばる7月号を学校の図書室に置こう

すばる7月号を読んだ。
李琴峰さんのアイオワ滞在記が良すぎて共有したいので、ここだけでもカッターで切り取って小冊子にして全国の高校の図書館に吊るそう。

アイオワ大学で、反LGBTQの活動家が講演をすることに、大学生たちが一斉に抗議する。
コールで、アートで。それぞれのスタイルで反差別を態度で示し、近所の車はクラクションを鳴らし、武装警察まで巻き込む騒ぎ。
その一部始終をその場にいるような迫力で記

もっとみる
クリスマスに一番不向きなプレゼント、福本伸行の「二階堂地獄ゴルフ」単行本

クリスマスに一番不向きなプレゼント、福本伸行の「二階堂地獄ゴルフ」単行本

クリスマスに一番適したプレゼントはケーキ。
一番適してないのは二階堂地獄ゴルフの単行本だ。

「カイジ」よりもさらに前の、売れるとは思われてなかったころの福本伸行の作風。
題材はゴルフ。
ぎりぎりでプロテストを落ち続けて35歳になった男の悲哀、だんだん周囲からめんどくさい人と思われていてもプライドを捨てきれない意地、そういうことを描いている。

ゴルフでなくても「漫画」や「お笑い」に置き換えて読め

もっとみる
永田カビさんを「わかる」人が沿道で旗を振り、ゴールテープを切る姿を見届けるけど、誰も代わってあげられない【マンガ感想】

永田カビさんを「わかる」人が沿道で旗を振り、ゴールテープを切る姿を見届けるけど、誰も代わってあげられない【マンガ感想】

永田カビの新作「膵臓がこわれたら少し生きやすくなりました。」を読みました。

ずっと人間の業のようなものに責められている人が、自分を絞り切って絞り切って吐き出した火の玉のようなゲロのようなコミックエッセイの終わりを見届けました。

冒頭は病院脱出シーンで始まる。
海外ドラマかゲームの導入のよう。
点滴をトイレに隠して、ナースセンターを通り抜け、逃げてしまう。

過去作でも心身ともに痛めて入院してい

もっとみる
【海外マンガ】「ワイン知らず、マンガ知らず」で、芸能人格付けチェックの向こうへ

【海外マンガ】「ワイン知らず、マンガ知らず」で、芸能人格付けチェックの向こうへ

「ワイン知らず、マンガ知らず」を読みました。
読む前に驚いたのが、まず、本のでかさ。
成人男性がページに広がるブドウ畑にすっと手のひらを滑らせられる。

あと、3300円する。

えっ、マンガ一冊で?と思われるでしょうが、しっかりした装丁。金かかってます。
本のサイズや、フリーハンドの枠、ゆったりした時間感覚とか、読む前から日本の一般的なマンガと違う価値観のものだ!とわかって嬉しくなる。
南国の仮

もっとみる
【宇宙人狼】久しぶりに買った漫画【海外マンガ】

【宇宙人狼】久しぶりに買った漫画【海外マンガ】

宇宙人狼やん!!

昔からのファンの方には「宇宙人狼やん!!」と言われても舌打ちされるかもしれないけど、萩尾望都「11人いる!」の導入には、流行が二回りぐらいして最新の流行と重なったことに興奮した。

10人の初対面の候補生たちに課せられた最終テスト。一定期間、宇宙船の中で問題なくすごすだけでいいのだが、いざ来てみると一人多い。何者か。どこまでテストでどこからアクシデントなのか。

候補生たちが二

もっとみる
がん闘病マンガ「断腸亭にちじょう」の巻数表示がつらい

がん闘病マンガ「断腸亭にちじょう」の巻数表示がつらい

がんの家系で、40を越えたら気をつけようと思っていた漫画家が、39で大腸がん宣告をされてからの日々。
「たら、とか、れば、とか いくらでも浮かんでくる」

エゴサして褒められても皮肉をつぶやくような「ひねくれ漫画家」である作者が、がん宣告をされる。それも、症状はわりと進行しているようだ。
父親が死んだ病気と同じものが、予想より30年ほどはやく来た。
告知されたときも現実じゃないみたいにぼーっとして

もっとみる
宗教2世の漫画家、菊池真理子さんは、宗教を批判したいわけじゃないです!

宗教2世の漫画家、菊池真理子さんは、宗教を批判したいわけじゃないです!

漫画家の菊池真理子さんが、宗教団体からの脱退を漫画に書いていて警告を受けた?とかで、以前Twitterで多少話題になっていました。

ぼくは宗教関連のことに詳しくないし、そこを批判するわけじゃないです。
菊池さんは、自分も宗教2世で、親の言う教えがほかの子と違うことに気づいて悩んで、そこから脱退した。
そのときになんの圧力もくわえられなかったことをツイートしている。

だから、話題に乗っかった人が

もっとみる
【海外マンガ】病の前に芸術は無力だと思ったけど。「テイキング・ターンズ」が届いた

【海外マンガ】病の前に芸術は無力だと思ったけど。「テイキング・ターンズ」が届いた

「テイキング・ターンズ」は、書店に並べる場合、どのコーナーに置くべきかわからない本です。
エイズが死に至る病だったころの医師やナース、そして患者の言葉が、イラスト入りで描かれている。アメリカのマンガなのでいちおうアメコミだけど、ぼくの知っているアメコミではない。

正体不明の死の病だったころのエイズ病棟では、人生の最後にも「同性愛者だから」「エイズが怖いから」と、家族すら来てくれない患者がいる。

もっとみる
【読書】獄門島

【読書】獄門島

かつて流刑にあった罪人の子孫が住む島「獄門島」に、ニューギニアで終戦をむかえた探偵がやってくる。
有名ですがシリーズ初体験。横溝正史の金田一耕助シリーズ「獄門島」。

いま、名探偵と入力したら予測変換で「コナン」と「少年の事件簿」のほうが上だった。孫よ。有名になったのう。

金田一耕助には、若いハツラツとしたイメージがないけど、名探偵として難事件を解決したあと、兵隊になってニューギニアで生活してい

もっとみる
【漫画レビュー】表紙だけで人生!フレデリック・ペーターズ「青い薬」

【漫画レビュー】表紙だけで人生!フレデリック・ペーターズ「青い薬」

バンドデシネ(フランス語圏のマンガ)初体験でこの本を選んだのは、あまりにも濃いオレンジの表紙が、ぱっ!と目に飛び込んできたから。

日本の浮世絵はフランスで人気があったときくが、そのときにフランス人が驚いた紺色のようなオレンジだ。荒れる海にソファーが浮かんでいる。その上でほほ笑むふたり。
この表紙だけでほぼ人生。この本の語っているすべてがこの表紙にある。人生はたいへんだけど、目の前の幸福をみていき

もっとみる

「生理ちゃん」は「ギャルと恐竜」ぐらいのポップさでアニメ化されるべき

小山健「生理ちゃん」が最終回らしくてしょんぼりしている。

「ギャルと恐竜」ぐらいのポップさでアニメになってほしかった。まさかの実写映画化はあったけど、映画館は、わざわざ足を運ぶところだ。
ふだんアニメを見ている男性の生活圏内に自然にはいってくることが、この作品の「完結」だと思っていた。

毎回オムニバスで、さまざまな職業や立場のちがう男女が主人公になる。
女性には生理ちゃん、男性には性欲くん、と

もっとみる
【マンガレビュー】変えのきかない顔面力。山田芳裕「望郷太郎」1

【マンガレビュー】変えのきかない顔面力。山田芳裕「望郷太郎」1

20年代に初めて買ったマンガ「望郷太郎」。
オビの文句は「人間五百年」だった。
「へうげもの」の織田信長が人間五十年だった。そのつぎに描くのは、太く短く生きた男じゃなくて、時間をかけて生きることを選んだ男だ。

山田芳裕作品は、スポーツゲームの隠しキャラに「デカスロン」の主人公が出たらしいとか、「度胸星」がメチャクチャ面白いのに打ち切られたらしいとか、本屋で「へうげもの」が視界に入ってくるとか、ニ

もっとみる