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分身たち

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書いた言葉は、自分から生まれた自分だと思っているので。詩がいます。
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#眠れない夜に

【詩】肌に触れたら垂れずに残る

【詩】肌に触れたら垂れずに残る

傘をさしたところで、結局どこかは濡れてしまうから、完全に防ぐなら、全身膜で覆うしかないね。
ただ、そうなると呼吸が出来なくなって、体の中を循環してる水も熱も感情も排出しないことになるから、隙間があるほうが案外生きやすいのかも。

水たまりを避ける生き方をしているが、本当は思いっきり水たまりに突っ込んで、下から濡れる道を歩んでいくことに夢見てる。
なにも背負わず、まわりを気にしないで先のことを心配し

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題名が思いつかない。

題名が思いつかない。

綺麗に言葉を見つけて、たくさんの想いを表現したくて、あれやこれやと手を出してみるけど、結局虚無感だけが残っている状態が、私の通常運転。

ほんとは、夢とか目標とかあるんだよ、こんな風になりたいってさ。
その到達したい場所までが遠過ぎて、届かなくて、ごろんと横になって目を閉じた時に浮かぶ光景が、今の私を包み込んでいるようにも見えるし、真綿で首を閉めているようにも見える。生き地獄かな。

小さなことか

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【詩】1度も起きない夜に憧れて

【詩】1度も起きない夜に憧れて

個性とか自由とかいうわりには、無意識に当たり前と言う名の否定に引っ張られて、それが普通になっていることに気づいていないことが、何よりも怖かった雨の日の夜。
自分というわりには、この世界を生きていくために仮面をつけることが、生存戦略になっていること、少しでも列からずれたら、容赦なく後ろ指をさされて、体を貫通して痛みに悶え苦しむこともあるって気づいた新月の夜。
息するのも苦しいな、酸欠になりそうだけど

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【詩】白色

【詩】白色

一つ一つこぼれていたもの、掬ってはすぐに消えて涙に変わる、薄く色づいた頬に優しく触れたかったけど、今はただ痛いだけだと言うから、伸ばした手を静かに下ろして、周りの空気の時間が止まる、時計は壊れてしまった。
見えるのは白い世界、白紙のノートみたい、それはきっとなにも線がついていないもの、始まりはどちらでもいいもの、型がない無形なものね。
まだ残像は見えるけど、見上げた先もずっと白い、本当は落書きでも

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【詩】ワイヤレスイヤホン

【詩】ワイヤレスイヤホン

音がある生活が当たり前だから、まったく意識もしていなかったし、そばにいるのが正常と認識していた、だけど、些細なことで、ぼくから音が消えた、足元はぐらついて、道標がいなくなったようだった。
耳に入るのは、吐き気を引き起こすような雑音だけ、砂嵐のような、ぐしゃぐしゃした、まるで、阿鼻叫喚とでも言おうか、なにもかもを逆さまにした世界、そんな中に踏み込んでみれば、ぼくそのものの存在すら忘れる、あれ、ぼくは

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【詩】青色の教え

【詩】青色の教え

青い空の下には、群青のカーテンが散りばめられていて、小さな枠のなかを確認すると、ひとりひとりの呼吸が聞こえた、線路が行き交うのを横目に、大きな橋を渡り切ったら、森の中に佇む白い塔が現れる。一つの物語が終われば、
またすぐ別の物語が始まり、永遠に走り続けているけど、環状線のように巡っているのかもしれない。目を描くこと、顔を描くこと、体を描くことが、一枚の紙の上で作られていくのに、何度も何度も白紙にし

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【詩】春一番

【詩】春一番

花の中に見たことがある星があって、
花びらが舞うのと同時に、
その星達も弾け飛んだ、
ぐるぐるぐるぐる巡って、
中心には大きな光の集合体が完成、
あなたの生まれた日、
もう一度同じ場所に立った時は、
限りない空間の中で、
祝福の歌を歌います。
あなたが望んだ世界になっているかな、
あなたはなんでここにいて、
すぐにいなくなってしまうんだろう。
後ろとか前とか右とか左とか、
そんなふれられない場所に

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【詩】鬼ごっこ

【詩】鬼ごっこ

目が覚めると、目の前にはどこか見慣れたような気がする運動場、まわりは走っている音がして、それを横目に歩き出す、鉄棒とか、縁石とか、コンクリートの道路とか、踏み出した一歩は、なんだか重怠い。
白衣を着た顔のない案内人、その後ろに着いて行く、校舎の端へ進んでいき、次第に日影が多くなる、死角になった瞬間に、壁に飲み込まれる。
こちらを見てる、2つの影、互いに溶け合って絡み合って、こちらを見てる、睨んでい

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【詩】遠足日和

【詩】遠足日和

川の向こうに誰かがいたような気がして、
水流の糸が複雑な動きをしながら、
わたしの足元に絡みついてきた、
繋がって繋がって、心地よく、
深淵の、潜れば底が見えない場所、
夢に落ちる手前にある、
膜に身を包まれる柔らかい感覚が、
今日の朝に挨拶をする。

まだ維持できているね、
今も流れ続ける川は、
いずれは海につながるんだろうけど、
そこに着いたら、次はどこにいくんだろう。
緑の服が良く似合うきみ

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【詩】曇天の詩

【詩】曇天の詩

日曜日の夜はいつもの夜と存在が違う、隔離されているようで、知らない人と相席になるような居心地の悪さがある、きっと本当は寂しいんだ。

君と目が合った瞬間、君の音が暴走した、そのひとつひとつ、拾い上げることが出来なかった、落ちた音は激しく粉砕した、踏んだらきっと根が張るくらいしみるだろうね。

そんなに顔を近づけたら、無数の雑音に飲み込まれる、砂嵐の容赦ない喝采、そんなのは、飲み込んでも吐き出した、

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【詩】流星惑星交響曲

【詩】流星惑星交響曲

夜がまっくらなのは、人が寄せ集まって、みんなで光を作るためなのかな、優しいあなたはそう言うのだろうけど、ぼくは、ひとりひとりが自分を見つめて、自分と手を取り合うために用意された1人部屋を作るためなんだと思っている。
星は綺麗で、願いもこめたくなるけど、自分の願いすらわからないでいたら、あっという間に消えちゃうね、長々と手紙でも書いて、遠い先の星にとどけてもらうのが1番確実かもしれない。
火星と土星

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【詩】最低気温

【詩】最低気温

青と白の間、遠いところに黒があって、境界線がない空間が広がっている。
無数の手が何かを掴もうとしているけど、透明なのか、存在しないのか、掴むことができない。
大きな車に乗り込む、道はガタついて安定しないし、何度も頭をぶつけた。痛い。
外は見えない、あの空間だけ、都市部のビル群は形だけ残っているけど、息はしていないようだった。
もうすぐ夜明けになるのに、みんな口を縛られているから、耳を澄ますことしか

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【詩】ソーシャルネットワーキングサービス

【詩】ソーシャルネットワーキングサービス

1人で歩く言葉を追いかけても、どんどん差が開いていくから、あんなことを言わなければと後悔するころには、もう散らばり過ぎて掴めなくなっている。
たった1人の友達なのに、背中をさすってあげることも、果たしてそれが正解かどうかなんて考えている、愚かな私をどうか叱って。
ある日は、笑顔だったのに、別の日には、表情が変わる君を見ては、天気と同じように変化するのだねって、憎しみを隠した声色で合図を出した。

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【詩】濃霧注意報

【詩】濃霧注意報

浮かぶ泡とゆらゆらしてる水のしたは暗くて、無数の目と手がこちらにおいでと手招きしてる、誰が行くかと一蹴して、急いで水面の壁を突き破る。いつかみた人魚姫もこんな気持ちだったのか、泡になって消えずに、自ら王子の首を狙いに行ったのかな。
流木の船に乗って世界をまわる、なんなら木の葉も一緒に付き添って、覗き込んだら、同じ顔がそこにあって、やっぱり呼ばれていることに気がつく。
どこからか陽気な音楽が聴こえて

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