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分身たち

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書いた言葉は、自分から生まれた自分だと思っているので。詩がいます。
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#現代自由詩

【詩】白色

【詩】白色

一つ一つこぼれていたもの、掬ってはすぐに消えて涙に変わる、薄く色づいた頬に優しく触れたかったけど、今はただ痛いだけだと言うから、伸ばした手を静かに下ろして、周りの空気の時間が止まる、時計は壊れてしまった。
見えるのは白い世界、白紙のノートみたい、それはきっとなにも線がついていないもの、始まりはどちらでもいいもの、型がない無形なものね。
まだ残像は見えるけど、見上げた先もずっと白い、本当は落書きでも

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【詩】春一番

【詩】春一番

花の中に見たことがある星があって、
花びらが舞うのと同時に、
その星達も弾け飛んだ、
ぐるぐるぐるぐる巡って、
中心には大きな光の集合体が完成、
あなたの生まれた日、
もう一度同じ場所に立った時は、
限りない空間の中で、
祝福の歌を歌います。
あなたが望んだ世界になっているかな、
あなたはなんでここにいて、
すぐにいなくなってしまうんだろう。
後ろとか前とか右とか左とか、
そんなふれられない場所に

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【詩】鬼ごっこ

【詩】鬼ごっこ

目が覚めると、目の前にはどこか見慣れたような気がする運動場、まわりは走っている音がして、それを横目に歩き出す、鉄棒とか、縁石とか、コンクリートの道路とか、踏み出した一歩は、なんだか重怠い。
白衣を着た顔のない案内人、その後ろに着いて行く、校舎の端へ進んでいき、次第に日影が多くなる、死角になった瞬間に、壁に飲み込まれる。
こちらを見てる、2つの影、互いに溶け合って絡み合って、こちらを見てる、睨んでい

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【詩】遠足日和

【詩】遠足日和

川の向こうに誰かがいたような気がして、
水流の糸が複雑な動きをしながら、
わたしの足元に絡みついてきた、
繋がって繋がって、心地よく、
深淵の、潜れば底が見えない場所、
夢に落ちる手前にある、
膜に身を包まれる柔らかい感覚が、
今日の朝に挨拶をする。

まだ維持できているね、
今も流れ続ける川は、
いずれは海につながるんだろうけど、
そこに着いたら、次はどこにいくんだろう。
緑の服が良く似合うきみ

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【詩】曇天の詩

【詩】曇天の詩

日曜日の夜はいつもの夜と存在が違う、隔離されているようで、知らない人と相席になるような居心地の悪さがある、きっと本当は寂しいんだ。

君と目が合った瞬間、君の音が暴走した、そのひとつひとつ、拾い上げることが出来なかった、落ちた音は激しく粉砕した、踏んだらきっと根が張るくらいしみるだろうね。

そんなに顔を近づけたら、無数の雑音に飲み込まれる、砂嵐の容赦ない喝采、そんなのは、飲み込んでも吐き出した、

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【詩】流星惑星交響曲

【詩】流星惑星交響曲

夜がまっくらなのは、人が寄せ集まって、みんなで光を作るためなのかな、優しいあなたはそう言うのだろうけど、ぼくは、ひとりひとりが自分を見つめて、自分と手を取り合うために用意された1人部屋を作るためなんだと思っている。
星は綺麗で、願いもこめたくなるけど、自分の願いすらわからないでいたら、あっという間に消えちゃうね、長々と手紙でも書いて、遠い先の星にとどけてもらうのが1番確実かもしれない。
火星と土星

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【詩】山々青々、透明になる

【詩】山々青々、透明になる

枝の交差点が続く中、
ひたすら歩いていくと石の信号があって、
右に行こうか左に行こうか、
または上に行くか、
いっそのこと来た道を戻るか、
選択権がそちらにあるのかぼくにあるのか、
その判断を誰がしてくれるのでしょうか。
こんな姿になったのは、きっと、
入口で待機していた警察官が、
不思議がって色々聞いてきたから、
途中で出会った医者が、
心配して体に触れてきたから、
優しい女神様は何も言ってこな

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【詩】ラブレター

【詩】ラブレター

君はいつも笑顔だけど、
その顔に、何枚皮膚が張り付いていて、
ちゃんと呼吸ができているのか、
外側と内側の君はちゃんと泣くことが出来て、
不器用な笑顔をしないで、
君が見えているものに、
歪みやズレはないのか、
濁った水中のような、眩暈と臭気に飲み込まれていないか、
いつだって君は一人で涙を流す。
近くにいたはずなのに、
それが実は手が届かないくらい遠くにいて、
まるで空気を掴むのと同じくらい、

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【詩】黄昏時の詩

【詩】黄昏時の詩

隣には、手を繋いで眠る君がいたハズなのに、バスに揺られてボクも眠っていたら、キミの姿は見えなくなっていた。
停車ボタンを押したら、たくさんの花が咲いて、座席からも手すりからも、色とりどりの花が生まれた。
欲しいものはそれじゃない、声に出せばいいのに、その言葉は飲み込んで、笑顔で手を振ってみたよ。
紫色の花びらが落ちたさきに、しずかな水溜まりが出来ていて、それを掬って上に投げたら、藍色の空になってい

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【詩】さくらさく。

【詩】さくらさく。

桜が咲くと、どこからともなく声がして、根元あたりには、その声に呼ばれた次の桜が集まっていた。

水の中に潜れば、花びらが水面を覆っていて、魚と一緒に、お祝い事に持っていこうかと、ひとつひとつ丁寧に、手先の器用さを活かして花束を作っていた。

心地よい陽の光は、綺麗な影を作り出してくれた、誰も見捨てないし、離れないように手を繋ぎましょう、だから、どうかそんな寂しい顔をしないでほしい。

今日から一斉

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【詩】帰りの会

【詩】帰りの会

目の前に映る鏡越しの自分を、本当の自分だって証明できますか、なんて問題は、苦手な算数か、複雑な理科か、果ては深く巡らす道徳か、簡単に答えまで辿り着けないんじゃないかと思う。そもそも答えなんてあるのか、テストで空欄のまま提出したら×がつきそうだけど、×の根拠を書いてほしい。
授業参観じゃ、いつも以上の視線が錯綜して、そのレーダーが心臓に突き刺さる、挙手して、存在確認して、私を生きたら、この手を掴んで

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【詩】ガラスの手紙

【詩】ガラスの手紙

螺旋の階段を降りれば、心地よい沼につかるようで、いつもと違う呼吸が出来た。
手と手を合わせて、まるで挨拶をするように、ともにお茶を嗜むように、時間を味わうことが、きっと、お互いを理解するのに必要だったんだ。
そこにある音だって、香りだって、いっそのこと自分が溶けてしまってもいいくらい、浸透してくるから、自然に手が伸びてしまう。私にも、ちょうだいって、言いたくなる。
キラキラした輝きを持って帰れば、

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【詩】片道切符

【詩】片道切符

今日の結果を覆したいなら、昨日の今を生きている私に伝えて下さい。結果がわかるなら、手段もわかるだろうから。
嘆いていても戻らなくても、それでもいいから前に進むなら、どうぞお先にお進みくださいませ。
今日は昨日の明日で、過去も未来もないというなら、正しい答えもないと思う、そもそも、何をもってまるなのかばつなのか、わかりやすく私に教えてほしい、納得できるものを。
あの人がいえば、あの人の答えで、その人

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【詩】最低気温

【詩】最低気温

青と白の間、遠いところに黒があって、境界線がない空間が広がっている。
無数の手が何かを掴もうとしているけど、透明なのか、存在しないのか、掴むことができない。
大きな車に乗り込む、道はガタついて安定しないし、何度も頭をぶつけた。痛い。
外は見えない、あの空間だけ、都市部のビル群は形だけ残っているけど、息はしていないようだった。
もうすぐ夜明けになるのに、みんな口を縛られているから、耳を澄ますことしか

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