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【詩】帰りの会

目の前に映る鏡越しの自分を、本当の自分だって証明できますか、なんて問題は、苦手な算数か、複雑な理科か、果ては深く巡らす道徳か、簡単に答えまで辿り着けないんじゃないかと思う。そもそも答えなんてあるのか、テストで空欄のまま提出したら×がつきそうだけど、×の根拠を書いてほしい。
授業参観じゃ、いつも以上の視線が錯綜して、そのレーダーが心臓に突き刺さる、挙手して、存在確認して、私を生きたら、この手を掴んでくれるといい。
ずっと願いを唱えてる、でも、いまはそれしかできない、だって青空が続くから、広い広い運動場を走り抜けるしかないんだって、校内放送で言っていたよ。放送係のあの子は、きっと今日も深呼吸をしてから、マイクに命を吹き込んでいる。
放課後の音楽室では、静かにピアノの音が響いてた、なんて曲かは知らないけど、心地がいいのは確かだから、毎日聴いている。始まりの音と終わりの音は、実は一緒なんだよって、木琴やら鉄琴の音が一同に教えてくれた。
明日もまた、ここに来れるように、あの質問に答えられるように、落ちた宿題のプリントを掴んで、教室を後にする。

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