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書店の話

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#物書きになりたい

イチ従業員が考える「書店員が疎かにしてはいけないこと」

イチ従業員が考える「書店員が疎かにしてはいけないこと」

先週↓が発売されました。

責任編集は翻訳家の柴田元幸さん。年3回の発行で(2・6・10月の15日頃)古今東西の海外文学を紹介してくれる文芸誌です。

ここ最近は、村上春樹さんが訳したトルーマン・カポーティの短編が掲載されています。今号は「夜の樹」。社会の片隅に潜む悪意の闇に、そしてそれと出会ってしまった不条理に戦慄を覚える名作です。

自分の分の品出しを終え、文芸誌コーナーへ向かうとどこにもない

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ハードボイルド書店員日記【174】

ハードボイルド書店員日記【174】

「これはおかしいでしょ」

4月並みに気温が上がった休日。昔の職場へ足を運ぶ。某スーパーマーケットの2F。児童書コーナーの脇から入った。

「こどものとも」などの福音館書店の月刊誌が面陳されている。本来は定期購読のみで返品できない商品だ。版元の了承を得たのだろう。現物が1冊も店にないものをいきなり年間予約というのは敷居が高い。

黒いスニーカーの先端が、日本史及び世界史のエリアへ向く。己が担当し、

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「単行本の復刊」と「天邪鬼の心意気」

「単行本の復刊」と「天邪鬼の心意気」

驚きました。

村上春樹さんが1983年に出した最初の短編集「中国行きのスロウ・ボート」が単行本で復刊するそうです。値段は1980円。発売日は2月21日とのこと。

文庫版もまだ購入できます。

気になったので、チェーン系書店の在庫状況を調べてみました。多くのお店が文庫版を置いています。今後どうなるかはわかりませんが、当面は併売していくのでしょう。

ぜひ大型店で両方を手に取り、比べてみてください

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イチ非正規従業員が「書店のゴミ捨て」に思うこと

イチ非正規従業員が「書店のゴミ捨て」に思うこと

有益な情報です。助かりました。

書店で働いているとダンボールに触らない日はまずありません。そして文具や雑貨類、備品などが入った大型の箱にはしばしば太い金属が付いている。いままではどうにか外していました。

複数の紙を留めたホッチキスの針についても言及されています。「リサイクル工程の分離機で取り除けます」「古紙の再生紙工程の邪魔にはならない」とのこと。気がラクになりました。

お笑いコンビ・マシン

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「多様なニーズに応える」と「好き」は共存可

「多様なニーズに応える」と「好き」は共存可

こういう記事を読むと刺激を受けます。

「佐賀之書店」をご存知ですか?

直木賞作家・今村翔吾さんがオーナーを、カリスマ書店員・本間悠さんが店長を務める本屋です。昨年12月にJR佐賀駅の構内にオープンしました。

本間さんの講演も記事になっています。

「いつでもそこにある“駅の本屋”であり続けたい」
「多彩なジャンルの本を満遍なく置く」

素晴らしい。

お店の画像や動画を見て、セレクト系ではな

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ハードボイルド書店員日記【173】

ハードボイルド書店員日記【173】

書店の1日は荷開けから始まる。

雑誌と新刊、そして補充分。雑誌は付録を付けて棚に出す(コロコロコミックやゼクシィみたいに大量に入るものは、積める分だけ開ける。残りは仕入れ室にストック)。書籍は新刊と補充分を分け、ジャンルごとに長机の上へ置く。置けなくなったら各担当が使うブックトラックへ移す。

すべての書店が同じ方式で動いているわけではない。都内の大型店だと雑誌と新刊は前日の午後に入る(雑誌とム

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「棚の縮小」&「大ヒットしない良書を置いてこそ」

「棚の縮小」&「大ヒットしない良書を置いてこそ」

「ジュンク堂書店 弘前中三(なかさん)店」が、4月30日に閉店するそうです。

オープンは2012年。当初は百貨店の6階と7階に展開していましたが、2018年に6階へ集約したとのこと。

全体的に各ジャンルの在庫を減らしたのか、あるいは特定の棚だけを削ったのかが気になりました。

以前働いていた書店も、閉店を迎える前に売り場を縮小しました。削られたのは洋書、学参、児童書。並行して上の階にあった事務

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イチ非正規書店員が「レジ内の水分補給」に思うこと

イチ非正規書店員が「レジ内の水分補給」に思うこと

スーパーは大変ですね。

わざわざ貼り紙をするのだから、レジで水分を取ることに文句を言う人がいたのでしょう。

例の感染症が猛威を振るっていた時期に「スーパーは遊び場、レジャーランドではありません」というツイートを目にしました。つまりそういう状況が全国で起きていた。自分たちは国や自治体が少人数でと訴えても家族総出でレジに並び、子どもたちを店内で大騒ぎさせる。気に入らないことがあれば心ない言葉を投げ

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ハードボイルド書店員日記【172】

ハードボイルド書店員日記【172】

「ない? ああそう」

閑散期の平日。しかし荷物は多い。先月ひとり辞めたから尚更そう感じる。混み具合に留意しつつレジを抜け、品出しを急ぐ。昼休憩を半分削るという切り札が脳裏を掠めた。だがよくよく考えたらそんなカードは配られていない。あったとしても私には見えない。少なくとも最低賃金でサービス早出を繰り返す非正規書店員の手元には。

「取り寄せもできないの?」「すんません」「そこは『申し訳ございません

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ハードボイルド書店員が気になる「2024年本屋大賞ノミネート作」

ハードボイルド書店員が気になる「2024年本屋大賞ノミネート作」

本屋大賞のノミネート10作品が決まりました。

スイマセン、恥ずかしながらどれも未読です。現場の書店員の感覚だと、最も売れているのは川上未映子さんの「黄色い家」でしょうか。

あらすじを見ると、なかなか重そう。目の当たりにしたくない人間の一面を覗いてしまいそうな怖さを覚えました。一方で彼女たちの背負った業は決して創作の産物ではなく、いつだって己も当事者になり得る。その事実から目を逸らしたくない気持

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「閉店=終わり」とは限らない

「閉店=終わり」とは限らない

素晴らしい。

阿佐ヶ谷で40年以上営業してきた街の本屋「書楽」が1月31日に閉店しました。しかし跡地で八重洲ブックセンターが新たに開店するそうです。2月10日オープンとのこと。

何より感銘を受けたのは「本屋で働いている従業員のうち希望した人は継続して勤務するそうです」のくだり。前にも書きましたが、駅前再開発に伴う閉店で職を失った経験があります。すぐ近くで新規店がオープンするにもかかわらず非正規

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「ふたりの人気作家」及び「第43話」から学んだこと

「ふたりの人気作家」及び「第43話」から学んだこと

東野圭吾さんの新刊が売れています。

シリーズ第2弾です。なお第1弾は単行本が2020年に発売され、昨年文庫になりました。

どちらもあらすじをチラ見しただけで「これ面白いやつだ」とテンションが上がりました。特に「覚醒する女たち」のハードボイルドな空気に惹かれます。興味のある方は↓を。

実は何年か前に東野さんのある新刊を読んで「もしかしたら、この方のピークはすでに…」と首を傾げたのですが(スイマ

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もしハードボイルド書店員が「SHIBUYA TSUTAYA」の従業員なら

もしハードボイルド書店員が「SHIBUYA TSUTAYA」の従業員なら

渋谷のスクランブルにTSUTAYAが帰ってきます。

4月25日にリニューアルオープン。書店は5階~7階の「ここでしか出会えない体験でつながるフロア」のなかで展開されるようです。

イメージが浮かびました。居心地のいいクールな空間。ワールドワイドでクリエイティブな客層を想定した品揃え。「こんな本があるのか」と「この棚にこれ?」「この本の隣に?」を併せた驚きに期待したい。三者が揃えば確実に「ここでし

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ハードボイルド書店員日記【171】

ハードボイルド書店員日記【171】

若い人の本離れ。

嘘だ。いまも新潮文庫の太宰治「人間失格」と「ヴィヨンの妻」が売れている。どちらも青空文庫で、つまり無料で読める。にもかかわらず買ってくれたのだ。いいことあるよ。頑張って。頑張らなくてもいいけど。

今度は女性。同じく新潮文庫の三島由紀夫「ラディゲの死」だ。短編集。ラディゲは混合物ゼロの天才である。光文社古典新訳文庫の「肉体の悪魔」を勧めたい。あれを16歳から18歳の時に書いたな

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