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#複製

山の記憶、「山」の記憶

山の記憶、「山」の記憶

 今回は、川端康成の『山の音』の読書感想文です。この作品については「ひとりで聞く音」でも書いたことがあります。

◆山と「山」
 山は山ではないのに山としてまかり通っている。
 山は山とぜんぜん似ていないのに山としてまかり通っている。

 体感しやすいように書き換えると以下のようになります。

「山」は山ではないのに山としてまかり通っている。
「山」は山とぜんぜん似ていないのに山としてまかり通って

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始まりと途中と終わりがあるもの

始まりと途中と終わりがあるもの

 今回は「始まりと途中と終わりがないものに惹かれる」の続きを書きます。

「「複製」という言葉のイメージ」の続編でもあります。

*始まりと途中と終わりがあって、たちまち消えてしまうもの
 作品と呼ばれるものの話です。

 始まりと途中と終わりがあるものには、たちまち消えてしまうものがたくさんあります。でも、それを記録したり、録音したり、録画すると、始まりと途中と終わりがあって、残っているものにな

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うつろう かげろう

うつろう かげろう

 見出しの付いた各文章は連想でつなげてありますが、断章集としてお読みください。どこからでもお読みいただけます。

*言葉を転がす

 映る、鏡に映る、水面に映る、瞳に映る、壁に映る、スクリーンに映る
 映る、見える、眺める

 映す、鏡に映す、水面に映す、瞳に映す、壁に映す、スクリーンに映す
 映す、見る、観る

 映してみる、映しみる
 映して見る、映し見る
 移して見る、移し見る

 うつしみ

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顔(散文について・02)

顔(散文について・02)

 再掲です。

*「ジャンルを壊す、ジャンルを崩す(言葉とイメージ・07)」
*「壊れていたり崩れている文は眺めているしかない(散文について・01)」 

 今回は、上の記事の続きですが、以前に散文――「何をどんなふうに書いてもいいもの」と私はイメージしています――を模索=模作していたときに投稿した文章を再投稿します(少し加筆してあります)。

 散文は眺めるものだ、とも私はイメージしているので、

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「複製」という言葉のイメージ

「複製」という言葉のイメージ

 今回は「複製について」という連載の枠を外してお話しします。

*複製なのに複製に見えない
・複製としての楽曲(複製について・01)
・絵画の鑑賞(複製について・02)
・複製でしかない小説(複製について・03)

 複製についての記事を書いてきて感じたことがあります。

 これだけ身のまわりに複製があり、世界は複製に満ち満ちているというのに、複製が目につかないのです。

 正確には以下のように言

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複製でしかない小説(複製について・03)

複製でしかない小説(複製について・03)

「複製としての楽曲(複製について・01)」と「絵画の鑑賞(複製について・02)」の続きです。

複製として意識されない複製
 前回のまとめから大切な点を引用します。

 このように、絵画、楽曲、小説の順で、複製として目立つし、意識されると言えそうです。というか、そんな印象を私はいだいています。

     *

 いずれにせよ、複製としての作品を鑑賞する場合には、自分が鑑賞しているのが複製であると

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絵画の鑑賞(複製について・02)

絵画の鑑賞(複製について・02)

「複製としての楽曲(複製について・01)」の続きです。

オリジナル(原物)と複製がはっきりしている
 楽曲と小説にくらべると、絵画ではオリジナルと複製がはっきりと分かれているイメージがあります。版画を除き、オリジナルは一枚しかないようです。

 それに対し、複製は多数あります。今、多数と言いましたが、これは正確な言い方ではありません。複製が多数あるのは有名な絵画に限られるのです。

 無名な絵画

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複製としての文字

複製としての文字

 前回の「文字を書いてもらう」でお話ししたことを箇条書きにまとめてみます。

・機械は「同じかどうか」を基本とする「はかる」世界にいる複製である。だから、杓子定規に作動する。
・人は「似ている」を基本とする印象の世界で生きている。だから、適当であり、いい加減である。

・人の書く文字には個人差があるので「似ている」世界にある。
・活字は「同じ」であるように人がつくったため、文字としては例外的に「同

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【小話集】似ている、そっくり、同じ

【小話集】似ている、そっくり、同じ

 今回の記事はとても長いです。太文字のところだけに目をとおしても読めるように書いていますので、お試しください。なお、小話間で重複があるのは、そこが大切だという意味ですので、どうかご理解願います。

【小話0】
 似ている、そっくり、ほぼ同じ、同じ、同一を体感するのには、刻々と変っていく時計――アナログでもデジタルでも日時計でも腹時計でもいいです――を見つめたり、耳を傾けたり、触れたり、目をつむって

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文字を書いてもらう

文字を書いてもらう

 文字は複製だとよく思います。誰が(何が)どこでいつ書いても「同じ」でなければ文字とは言えないわけですから、複製以外の何ものでもありません。

 ちなみに、「(何が)」とは機械のことです。

 一方で、どれも「同じ」なのかなあ、という疑問も浮んできます。

 文字は「同じ」なのではなく、むしろ「似ている」ではないでしょうか?

 複製を定義するのが私の目的ではないので、ここは適当にいこうと思います

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複製としての楽曲(複製について・01)

複製としての楽曲(複製について・01)

「複製について」という連載を始めます。とはいうものの、自分にとって不案内な分野やジャンルについてお話しすることが続くだろうと予想しています。

 ですので、あくまでも素人の私の印象と意見として、文字どおりご笑覧いただければ幸いです。

 今回の「楽曲」についても私は疎いです。私は重度の中途難聴者なので、現在は音楽を聞いて楽しむことがほとんどありません。

 補聴器はしていますが万能ではないし(聞こ

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「写る・映る」ではなく「移る」・その2

「写る・映る」ではなく「移る」・その2

  今回は「「写る・映る」ではなく「移る」・その1」の続編です。

 まず、この記事で対象としている、『名人』の段落を引用します。

 前回に引きつづき、上の段落から少しずつ引用しながら話を進めていきます。 

*開かれた表記としての「ひらがな」
・「生きて眠るかのようにうつってもいる。しかし、そういう意味ではなく、これを死顔の写真として見ても、生でも死でもないものがここにある感じだ。」

「生き

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【レトリック詞集】人間の「人間もどき」化、「人間もどき」の人間化

【レトリック詞集】人間の「人間もどき」化、「人間もどき」の人間化

 今回は、「【小話集】似ている、そっくり、同じ」の続編です。

【レトリック詞1】賞賛、嫉妬、恐怖
 人には、ヒト以外の生き物のすることで、笑って済ませることと笑って済まされないことがある。人が笑うのはプライドがあるせい。

 人には、機械のすることで、許せることと許せないことがある。人が許さないのはプライドがあるせい。

     *

 AIに対し、人はきわめて人間的に反応する。ほほ笑む、嫉妬

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とりあえず仮面を裏返してみる(断片集)

とりあえず仮面を裏返してみる(断片集)

 今回も断片集です。見出しのある各文章は連想でつないであります。緩やかなつながりはありますが、断章としてお読みください。今後の記事のメモとして書きました。

看板、サイン、しるし

 街を歩くと看板がやたら目に付きます。目に付くと言うよりも、こちらが無意識に探しているのかもしれません。無意識に物色しているとも言えそうです。

 たぶん、そのようにできているのでしょう。看板は人の目を惹いてなんぼだと

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