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弱おじの本棚

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読んだ本の記録です。
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2023年1月の記事一覧

比べちゃうよね。生きづらいよね。だって人間だもの。 〜「森に眠る魚」を読みました。〜

比べちゃうよね。生きづらいよね。だって人間だもの。 〜「森に眠る魚」を読みました。〜

角田光代さんの「森に眠る魚」を読みました。

ママ友の関係を描いた作品。
みんな色々抱えて大変だよなぁと思いました。

最初は仲が良かったママ友たちが、お受験などの価値観の違いから徐々にすれ違っていきます。

自分は自分。他人は他人。
そう割り切って生きられたら楽なのに、人間はどうしても他人と比べてしまう生き物だと思います。

そして比較の先に幸せは待っておらず、大抵は自己嫌悪に陥ったり、不安がよ

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いつか死ぬから今日と妻を大切に生きていたい 〜「美しい距離」を読みました。〜

いつか死ぬから今日と妻を大切に生きていたい 〜「美しい距離」を読みました。〜

山崎ナオコーラさんの「美しい距離」を読みました。

癌を患って入院する妻と、看病をする夫である主人公。

世の中に存在する数えきれないほどの人間関係。
そのちょうどよく、美しい距離というものは、決して決められた一定のものではなく、その人たちだけの唯一無二なものだと思います。

愛してるよと甘い言葉を囁き合うのが美しい距離なのか?
私はそうは思いません。

言葉にせずとも、お互いが心の中で相手を尊重

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この本に共感する生きづらい人の存在が、生きづらい僕の人生を肯定してくれる。 〜「すべて真夜中の恋人たち」を読みました。〜

この本に共感する生きづらい人の存在が、生きづらい僕の人生を肯定してくれる。 〜「すべて真夜中の恋人たち」を読みました。〜

川上未映子さんの「すべて真夜中の恋人たち」を読みました。

大好きな芸人のオードリー若林さんが推薦している本です。

読んだ感想として、「すごく綺麗だなぁ」と感じました。
言葉の一つ一つが、とても綺麗。

あとは、人間の感情や何気ないシーンを切り抜くのが、とても上手だなと思います。
こんな気持ちあるよな‥、とか。わかるわかる‥。なんて、共感しながらページをめくりました。

人付き合いが苦手で自宅で

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何かに狂って生きていたい。〜「ワラグル」を読みました〜

何かに狂って生きていたい。〜「ワラグル」を読みました〜

浜口倫太郎さんの「ワラグル」を読みました。
お笑いが大好きなので、とても楽しく読み進めることができました。

芸人、作家を主人公とした物語。
コンテストに向けた葛藤や、必死で目標に向かう素晴らしさが描かれています。

「ワラグル」=笑いに狂った人
という意味らしいです。

何かに狂えるってことは、とても幸せな人生だと思います。
私も何かに狂って、楽しかったと笑いながら人生を終えていきたいです。

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スピンオフが人生を豊かにするコツ 〜「祝祭と予感」を読みました〜

スピンオフが人生を豊かにするコツ 〜「祝祭と予感」を読みました〜

恩田陸さんの「祝祭と予感」を読みました。
最近読んだ「蜜蜂と遠雷」がとても面白かったので、続編となる本作を読んでみました。

登場人物の背景が詳細に描かれており、とても楽しく読めました。

俗にいう「スピンオフ」作品ですが、同じ世界線でも違う視点から見るとまた違った景色が現れて、とても面白いなと思います。

現実世界でも、そんな物の見方ができたら楽しいなと思います。

目の前の人は、どんな人生を歩

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小説が僕の人生を照らしてくれる光  〜「見つけたいのは、光。」を読みました。〜

小説が僕の人生を照らしてくれる光 〜「見つけたいのは、光。」を読みました。〜

飛鳥井千砂さんの「見つけたいのは、光。」を読みました。

育児に疲弊する女性、夫との関係や仕事に悩む女性、そして二人が共通して見ている育児ブログの著者である女性。

それぞれが抱える人生の苦悩。
きっと苦悩を抱えない人生などないのだと思います。

子供がいれば子育てに苦しみを覚え、子供がいなければ世間から向けられる冷たい視線に苦しめられ。
この人生には逃げ場なんてないのかと、悲しくなってしまいます

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悩んだ時は登山と読書 〜「山女日記」を読みました〜

悩んだ時は登山と読書 〜「山女日記」を読みました〜

湊かなえさんの「山女日記」を読みました。

みんな色々抱えているよな‥と、なんだか共感を覚えました。

山という偉大な存在に触れることで、自分の悩みがちっぽけに感じて、少し楽になれるのかもしれません。

そして自分を高い視点から俯瞰することで、人生とうまく向き合うことができ、冷静に判断を下すことができるのかもしれません。

また、登場人物たちを見て、共に山を登る存在がいることは、とても幸せなことだ

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普通に生きるって普通に幸せで普通に難しい 〜「コンビニ人間」を読みました〜

普通に生きるって普通に幸せで普通に難しい 〜「コンビニ人間」を読みました〜

村田沙耶香さんの「コンビニ人間」を読みました。
数年前に一度読みましたが、再度手に取ってみました。

主人公はコンビニでアルバイトをする女性。
周囲からずっとバイトをしていることや結婚をしていないことを不思議がられて、生きづらさを感じています。

普通の人生は嫌だと言いながら、やっぱり私たちは普通の人生をどこか望んでいて、普通の人生を生きられていることに安心してしまう生き物だと思います。
ちゃんと

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運命が与えてくれた今という世界線にありがとう 〜平野啓一郎さんの「マチネの終わりに」を読みました」〜

運命が与えてくれた今という世界線にありがとう 〜平野啓一郎さんの「マチネの終わりに」を読みました」〜

数年ぶりに平野啓一郎さんの「マチネの終わりに」を読みました。
名作すぎました。

運命ってなんなんでしょうか。
たった一つのボタンのかけ違いで、目の前の現実は全く違うものになってしまう。

あの時ああしていれば、今の現実は違っていたのに。
でもそこに、人間の力なんて本当に及ぶものなのでしょうか。

仕方がないこと。なるべくようにして、こうなっているという感覚。

運命のイタズラで進められていく人生

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自分を好きでいられるように行動することこそが「成功」〜羽田圭介さんの「成功者K」を読みました。〜

自分を好きでいられるように行動することこそが「成功」〜羽田圭介さんの「成功者K」を読みました。〜

羽田圭介さんの「成功者K」を読みました。

芥川賞を受賞した作者がテレビ出演を通して有名になっていき、色んな女性と関係を持ったり高級車買ったりいい所に住んだりと「成功者」になっていくお話し。
そしてそれが本当に幸せなのか?っていうお話し。

成功とは何か?
と考えされられました。

世間で言う成功を手に入れたとしても、そこから得られる喜びは刹那的で、すぐにその幸せにも慣れてしまい、自分の手元を離れ

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一生懸命やるからおもろい。 〜恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」を読みました〜

一生懸命やるからおもろい。 〜恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」を読みました〜

恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」を読みました。
ピアノのコンクールを舞台とした青春群像劇です。

・爽やか!青春!青春の美しさを思い出させてくれます。
何かにひたすらに打ち込むことの尊さ。
一生懸命やるからこそ、得られる感情がある。
私も何か打ち込むことを作り出し、まだまだ青春していきたいなと感じました。

・出会いの尊さ登場人物たちは一つのコンクールを通して互いの演奏に触発され、自身の前向きな変化に気

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書くことは「救い」 〜湊かなえさんの「未来」を読みました〜

書くことは「救い」 〜湊かなえさんの「未来」を読みました〜

湊かなえさんの「未来」を読みました。
なんでしょう。色んな感情が生まれました。
言葉にできない、何とも言えない感情ばかりですが、感想を書いてみたいと思います。

本書を読んで感じたのは、「書く」ことが救いになるということです。
登場人物たちは皆、様々な問題を抱えながら生きています。そして必ずしも報われたとは言えない終わり方です。

世界にも様々な問題があります。
目の前の人を救ったところでその問題

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何が正解かなんてわからないから、今の感情を大切に選択する。〜朝井リョウ「武道館」を読みました。〜

何が正解かなんてわからないから、今の感情を大切に選択する。〜朝井リョウ「武道館」を読みました。〜

朝井リョウさんの「武道館」を読みました。

アイドルって大変だなぁと思うとともに、アイドルに対して尊敬の念を抱くようになりました。

恋愛がタブーとされるアイドル。
アイドルとしての自分。そのもっと前に存在する、一人の人間としての自分。

その時の感情に忠実に、恋愛へと突き進むこと。ファンやメンバーのために、自分の気持ちを理性的に押さえつけ、アイドルとしての役割を全うすること。

そのどちらが正解

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上手くいかなくても大丈夫だよ。それはあなたのほんの一部だから。〜「ドーン」を読みました。〜

上手くいかなくても大丈夫だよ。それはあなたのほんの一部だから。〜「ドーン」を読みました。〜

平野啓一郎さんの「ドーン」を読みました。

平野さんの提唱されている「分人」という考え方が好きです。
人生を楽にする知恵だなと思います。

接する人や場面によって、違う自分がいる。
それぞれの自分を、別の人間だと考えてみる。

例えば大嫌いな仕事に行かなくてはならない。
その仕事に行く自分は、今ここにいる自分とは別の「分人」だとして考えてみればいい。

会社でどんなに怒られようが罵られようが嫌な思

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