弱さを知るおじさん

読んだ本とか生きてて感じたこととか。

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頑張っても人生はなるようにしかならないけど、頑張らなくても人生はなるようになる。

人生はなるようにしかならない。 夢に向かって一生懸命に日々を生きる人にとって、その言葉は悲観的に感じられる。 反対に言えば、人生はなるようになる。 たとえ頑張ることを放棄してしまっても、人生とはなるようになってしまうものだ。 人生の終着地点は、「なるよう」で決まっている。 頑張る道を選んでも、頑張らない道を選んでも、たどり着くのは結局「なるよう」だ。 頑張る人にとって、「なるよう」にたどり着くことは屈辱だ。 なんだ。こんなに頑張ってきたのに、「なるよう」にしかな

    • 生きづらいこの世界で僕にできるのは、きっと想像をすることだけ。〜「授乳」を読んで感じたこと〜

      村田沙耶香さんの「授乳」を読んだ。 3つの短編が収録されており、それらに共通するテーマが「生きづらさ」だったらような気がする。 男性ならこう生きろ。 女性ならこうやって生きるべき。 多様性が謳われる現代だけど、結局根本にある思い込みや決めつけを排除することはできない。 作中の主人公たちは、自らの世界に閉じこもって、世界と壁を隔てることで生きていこうとする。 だが、それにもやがて限界が来る。 どうしたって人間は社会的な生き物だから、外の世界と繋がらなくてはいけない瞬間が

      • 「生殖記」を読んで、自分という存在について理解が深まった話。

        朝井リョウさんの「生殖記」を読んだ。 人間という存在について考えさせられ、理解が深まる一冊。 小説としては勿論、哲学書のような感覚でも楽しく読ませていただいた。 人間なんて所詮動物であり、生存して繁栄していくことが目的として刷り込まれている。 だから人は結婚して子供を産み育てる。 子育てが大変だ。パートナーに不満がある。 そう言いながら、レールから外れることに比べたら楽だから、大きな流れに身を任せる。 自分の人生を考える。 結婚して、子供を育てたいなと思う。 それは1

        • 言いたいことを言うのはさ。かっこいいのさ。〜「オパールの炎」を読みました〜

          桐野夏生さんの「オパールの炎」を読んだ。 ピル解禁運動をされた実在の女性をモチーフにしたフィクション。 女性差別や女性軽視、この国が歩んできた歴史や過ちを知ることができて、とても勉強になった。 作者の小説を読んで感じることは、「強いな」ってことだ。 彼女は女性を代表して物語を使って世界に語りかけている。 自分の考えをしっかりと持ち、それを言葉で世界に投げ込んでいく。 カッコ良いな、と思う。 文学とは、カッコいいのだ。 言いたいことを言えないのなら、書いてしまえばいい。

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          曖昧な世界だからこそ、確かな感情を愛して生きていたい。〜「サンショウウオの四十九日」を読みました〜

          朝比奈秋さんの「サンショウウオの四十九日」を読んだ。 一つの肉体に二人が共存するという設定で、人間とは何か、他者と自分を分け隔てる境界線はどこにあるのかを考えさせられる。 自分が自分であると言える理由なんて、考えてみるほどに実は曖昧なものかもしれない。 自分が自分だと思っている存在は、実は自分じゃなくもう一人の他者なのかもしれないし。 他者の視点から自分の人生の成り行きを見守っている感覚になる瞬間もあるし。 そのくらい、自分という存在は曖昧なのかもしれない。 自分が自分

          曖昧な世界だからこそ、確かな感情を愛して生きていたい。〜「サンショウウオの四十九日」を読みました〜

          死にたいって嘆くけど結局根っこにある「生きたい」〜「東京島」を読みました〜

          桐野夏生さんの「東京島」を読んだ。 女性の強さ、人間に備わった生きることへの欲望について、物語を通じて思い知らされた。 物語の舞台は無人島。 そこからどうにか脱出しようとする過程の中で、登場人物たちの心理がリアルに描かれていく。 例えば私が無人島に放り出されたとして、自分が助かるためにどうでも良い他人を蹴落としたりもするだろう。 食べ物がなくなったら、しょうもない大嫌いなあいつの肉を喰らってでも生きようとするかもしれない。 きっとそれは本能だ。 人であり動物であるか

          死にたいって嘆くけど結局根っこにある「生きたい」〜「東京島」を読みました〜

          綺麗じゃない世界観が生み出す綺麗なオチ 〜「人獣細工」を読みました〜

          小林泰三さんの「人獣細工」を読んだ。 決して綺麗な話じゃない。 むしろ、目を背けたくなるようなダーティーな世界。 そんな物語なのに、読後の爽快感はなんだろう。 きっと、ダーティーだけど、綺麗なのだ。 物語として。 ホラーに分類されるものと思われるが、あまりにも驚いて悲鳴をあげた後に、残るのは「やられた!」という一種の清々しさだったりする。 そうして癖になる。脳が侵食される。ある意味で、これはドラッグのようなものだ。 汚いのに、綺麗。 目を向けたくないものをちゃんと見

          綺麗じゃない世界観が生み出す綺麗なオチ 〜「人獣細工」を読みました〜

          ピンと張りすぎた心の弦を、優しく緩めてくれる一冊。〜「かすり傷も痛かった」を読みました〜

          箕輪厚介さんの「かすり傷も痛かった」を読んだ。 以前に出版された「死ぬこと以外かすり傷」に対するアンサー的な本で、心境の変化や生き方に対する考え方が大きく変わっていて、読んでいてとても面白かったし、共感できた。 そして何より、心が緩む一冊だなと感じた。 もちろん、良い意味で。 頑張れ。負けるな。もっとやれ。 成功のために書かれた意識の高い本なら山ほどあるが、本書のように「やっぱりあんまり無理しすぎるもんじゃないでっせ」と宥めてくれる優しい本は稀有だ。 だけど、決して人

          ピンと張りすぎた心の弦を、優しく緩めてくれる一冊。〜「かすり傷も痛かった」を読みました〜

          異常な物語を愛する僕らもきっと異常。〜「殺人出産」を読みました〜

          村田沙耶香さんの「殺人出産」を読んだ。 普通とは何だろう? そう考えさせられる。 こんな設定を思いつく作者は、良い意味で「異常」だなと思う。 この本がすごく人気らしい。 異常な作者が書いた、異常な物語が。 だったら、楽しく読んでる僕らの側だって、実は異常なのだろう。 隠しているだけで。 皆、普通を演じながら日々生きているだけの、異常者なのかもしれない。 普通なんて、この世界にはないのかもしれない。 むしろ、普通なんていう固定観念を取り払ったほうが、自由に軽やかに、こ

          異常な物語を愛する僕らもきっと異常。〜「殺人出産」を読みました〜

          僕たちはどこまでいっても人間みたいだ。〜「なぜヒトは心を病むようになったのか?」を読んで〜

          「なぜヒトは心を病むようになったのか?」を読んだ。 進化心理学、面白い。 一見無意味に思える心の反応が、実は生存を有利にするためのものだったりする。 きっと私たちはどこまで行っても人間であり動物だ。 飯を食い、生きる。 その確率を上げるために、本能的な部分で見えない力が私を支配してくれている。 もちろん、不都合もある。 だけど、これは私を守ろうとしている反応なんだと、理解できれば心は軽くなる。 知は力なり。 知れてよかった。 人間として苦しみながら生きる日々が、

          僕たちはどこまでいっても人間みたいだ。〜「なぜヒトは心を病むようになったのか?」を読んで〜

          読書ってより毒書。ヤバいに触れることで、反面教師を得られる。〜「緑の毒」を読んで〜

          桐野夏生さんの「緑の毒」を読んだ。 犯人がヤバい。 まともではない。 だけど、その犯人もまた、人である。 私も同じく、人である。 人ってやばい。 人って怖い。 例えば大きなストレスがあったとして。 人生なんてどうにでもなってしまえと思えてしまう出来事が起こってしまったとして。 僕が犯人のようにヤバい行動を取らないと、100%言い切ることができるのだろうか? 僕はそこまで、僕を、そして人間を、信頼できてはいない。 人なんて脆い。 ふとしたきっかけで、嘲笑していた対

          読書ってより毒書。ヤバいに触れることで、反面教師を得られる。〜「緑の毒」を読んで〜

          窓から眺めていてもいいし、自分が生きたい方向に進んでみてもいい。〜「いのちの車窓から2」を読んで〜

          星野源さんの「いのちの車窓から2」を読んだ。 前作のいのちの車窓からを読んでから、長い時間が経った。 人は変わる。 僕の考え方も、見えている景色も、あの時は大きく変わっている。 これからの人生をどう生きようか。 敷かれたレールをただ進んでいくだけの人生。 人生なんて決まっている? 運命ってものがあって、僕たちがどう行動したところで、起こる事象は何も変わらない。 そう諦めて生きてしまってもいい。 辛い時は、流れに身を委ねて、ただ流されていくだけでいい。 元気がある

          窓から眺めていてもいいし、自分が生きたい方向に進んでみてもいい。〜「いのちの車窓から2」を読んで〜

          ダメで元々の人生を、今日も気楽に生きていく。〜「なんだか今日もダメみたい」を読みました〜

          竹中直人さんのエッセイ「なんだか今日もダメみたい」を読んだ。 タイトルがまず素晴らしい。 竹中さんのお人柄を表している。 なんかダメみたい。 それでも前を向き、とりあえず生きてみる。挑戦してみる。 本書は竹中さんの自伝的なエッセイだ。 様々な出来事を経て、今日まで生きてきたことがわかる。 本当にもうダメだと思うことも何度だってあるだろう。 今日もダメみたい。そんな感じでいい。 明日もダメかもしれないけれど、ダメじゃない可能性だって少しはある。 ダメみたい。ダメでいい

          ダメで元々の人生を、今日も気楽に生きていく。〜「なんだか今日もダメみたい」を読みました〜

          この人生を転がり続けていこう。「転がる珠玉のように」を読みました。

          ブレイディみかこさんの「転がる珠玉のように」を読んだ。 人生は色々あるよな、と感じた。 色々あって、全てはなるようになっていく。 今こうして、生きていることが何よりの証明だったりする。 転がって生きていこう。 無理に自分の足で突き進む必要なんてない。 自然の流れに身を任せて、転がって、そこから見える景色を楽しめる分だけ楽しんで。 そうやって、人生を楽しんでいけたらいいなと、思わせてくれる一冊でした。

          この人生を転がり続けていこう。「転がる珠玉のように」を読みました。

          ダークでお洒落な世界観。「薬指の標本」を読んで。

          小川洋子さんの「薬指の標本」を読んだ。 恋愛の辛さ、苦しさ、色んな感情が詰め込まれた物語だった。 決して明るい物語ではないのだけど、静謐でダークな世界が何だか癖になる。 読後はおしゃれな気分と人生への虚無感が入り混じったような、何だかうまく言葉にできない感情になれた。 筆者の世界観が好きだなと感じました。

          ダークでお洒落な世界観。「薬指の標本」を読んで。

          政治の批判するならこれくらいの小説書く覚悟を持ちな?〜「もしも徳川家康が総理大臣になったら」を読んで〜

          「もしも徳川家康が総理大臣になったら」を読んだ。 政治を批判する私たち。 だけどその声は届くはずもない。 この小説はどうだろう。 歴史上の偉人が総理大臣や政権を担うという斬新な設定で、そこと比較して現在の政治の足りない部分を的確に指摘していく。 ただ不平不満を述べているだけの私たちとは違う。 小説の力を感じた。 ただの愚痴も、文学に乗せてしまえばそこに宿る重みが違う。 理想の社会。思い通りにはならない世界。 その上で、どうあるべきか。 正解なんてわからない。 だけど、

          政治の批判するならこれくらいの小説書く覚悟を持ちな?〜「もしも徳川家康が総理大臣になったら」を読んで〜