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書くことは「救い」 〜湊かなえさんの「未来」を読みました〜


湊かなえさんの「未来」を読みました。
なんでしょう。色んな感情が生まれました。
言葉にできない、何とも言えない感情ばかりですが、感想を書いてみたいと思います。

本書を読んで感じたのは、「書く」ことが救いになるということです。
登場人物たちは皆、様々な問題を抱えながら生きています。そして必ずしも報われたとは言えない終わり方です。

世界にも様々な問題があります。
目の前の人を救ったところでその問題の根本が解決されるわけでもなく、その問題のすぐ隣にはまた別の問題が存在しているわけで。無力な自分には何ができるのでしょうか。

他者の苦しみを想像すること。みんなそれぞれ苦しみを抱えながら生きているとイメージすること。

しんどい状態にいる人が紡ぐ言葉で、別のしんどさを抱える人間が救われることもある。
苦しみだらけの世界だからこそ、ほんの一瞬他人の優しさに触れることで、幸せに思えることもある。

物語の中で、主人公へ未来の自分から手紙が届きます。
その手紙へ返事を書くという行為によって、日々の苦しみを消化し、命を繋いでいく姿が印象的でした。

それぞれの苦しみがあり、その苦しみが折り重なって世界が進んでいきます。
未来が明るいと信じられたなら、きっと苦しい今も前向きに生きていけるのだと思います。

「書く」ことが誰かを救うかもしれないし、何より自分自身を救ってくれます。
苦しみを小説に書くことではその問題自体が解決されるわけじゃないけど、その物語を読んで「あ、わかってくれる人もいるんだ」と思えたなら、きっとその人は救われます。
仮に物語の主人公たちがこの小説を読んだなら、少しだけ報われる気持ちになるんじゃないかと思います。

山積みの問題と向き合おうとすると、自分の無力さを実感させられます。
何ができるのか。とりあえず、書いてみようかなと思っています。

未来は明るいよ!と希望を与える未来の自分からの手紙のように。
誰かを救えるなんて傲慢かもしれないけど、自分が紡いだ一言で少し前を向ける誰かがいるかもしれないのだから、そんな可能性が1%でも生まれるのだから、私は書いていきたいなと思うのです。

書くという行為が自分自身を救います。
この世界に対して無力だと自分を責めてしまうけど、きっと全ての人を救うことなんてできないけど、救えない自分を救うのは、やっぱり書くという行為によってこそ、実現されると思っています。

この小説を読むことで、書いてみようという気持ちが湧き上がってきました。
書くことで救われていく。あなたの苦しみも、書くことで少し和らぎ、誰かの苦しみを少しだけ和らげることができるのかもしれません。

書くことで、この苦しみに塗れた人生を、少しでも楽しんでいけたらなと思っています。

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