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一生懸命やるからおもろい。 〜恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」を読みました〜


恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」を読みました。
ピアノのコンクールを舞台とした青春群像劇です。

・爽やか!青春!

青春の美しさを思い出させてくれます。
何かにひたすらに打ち込むことの尊さ。
一生懸命やるからこそ、得られる感情がある。
私も何か打ち込むことを作り出し、まだまだ青春していきたいなと感じました。


・出会いの尊さ

登場人物たちは一つのコンクールを通して互いの演奏に触発され、自身の前向きな変化に気づいていきます。
本当の意味での「仲間」って、こうゆうことだなと。
自分が好きなことを本気で突き詰めていけば、自然と周りには自分と似た人間が残り、心の底で分かり合える。
そんな繋がりを大切にしていきたいなと思いました。

・日常に溢れる音楽、日常に溢れる幸せ

物語の中でしばしば「音楽とは身の回りに既にある」という描写がされています。
ふと耳を澄ませば、世界には音が溢れていて、つまりそれは音楽が溢れているということです。
日常に存在する音楽に気づくということは、身の回りの幸せに気づくということにも通ずると思います。
ストーブの音。カレー皿とスプーンが奏でる音。隣にいる大切な人の寝息。
身の回りの小さな幸せ、その幸せからこぼれ出す音楽に耳を澄ましながら、人生を味わっていきたいなと感じました。


・音楽への畏敬

テーマが壮大です。
長い長い歴史の中で、私たちが生きる人生なんてほんの一瞬、一小節にも満たないかもしれません。
そんな大きな流れの中に自分はいます。無力です。
無力だからこそ、好きに生きていいと思うのです。好きな音楽を聴き、好きな音楽を奏で、人生を楽しんでいればいいと思うのです。
登場人物たちのように自分が信じる道を進み、青春しながら与えられた人生を奏でていきたいと思います。


・もうこれは「読む音楽」

私は音楽の知識も経験もゼロに等しいのですが、それでも臨場感を味わうことができました。
特にピアノに入り込む主人公たちの姿、ゾーンに入って己の全てを解放していく姿の描き方が秀逸だなと感じました。
もちろん私は作品中に出てくる曲のメロディーなんて全く知りません。
それでも確かに、ピアノを弾く人たちがそこにいて、読む私の脳内に音楽が流れていくのです。
こんな素晴らしい読書体験ができたことに感謝です。
また、様々な登場人物の視点を切り替えながら、それぞれからの語りで物語が進んでいくのも楽しいです。
素晴らしい演奏を聴いた時には皆に共通して「素晴らしい」という感情が生まれます。それが誰かに教えられたわけではないのに、きっと人間は本能的に素晴らしいものを素晴らしい感じられるようになっているのだと思います。
きっと私がこの小説に感銘したように、あなたも感銘を受けるはず。そうなってくれたら、とても嬉しいです。


・一生懸命やるから得られる感情

登場人物たちはピアノに全力で打ち込むことで様々な感情を得ます。もちろんそれは美しいものばかりではなく、時に苦しさや辛さも伴うものです。
でもこれらの感情を得られるということは、それだけ真摯に向き合っているということです。中途半端な取り組み方では、きっと得られる感情も中途半端なものになります。
私もそんな素晴らしい感情を味わいたい。何かをやり切って、生きてる!と感じていきたい。
私にとってのピアノが何かはわかりません。とりあえず、今興味があるものを、全力でやってみてみたいと思います。
その先にどんなステージが待っているか、どんな音楽が奏でられていくのか。自分の人生がますます楽しみになってきました。


音楽に疎い人でもめちゃくちゃ楽しめて、人生の素晴らしさを一層味わえる素敵な作品になっています。ぜひ読んでみてください!

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