今日は名車マセラティに乗らないかと誘われた。というのはいつも通る百貨店脇の地下鉄入口の前でその車の特別展示があって、セールスの人に声をかけられたのだ。黒豹のような車でエンジンを唸らせて誰を迎えに行くか、想像だけならぼくだってできるんだけど。ぼくは「いえ」と短く言って階段を降りた。