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繕い繋ぐリメイクのこと

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直し繕う仕事のこと。ヴィンテージドレスのリメイク、お母様のウェディングドレスのリメイク、廃材リメイク作品など。古き良きものを長く大切に。
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#私の仕事

【繕う日々】ドレスを縫うときにだけ発動する謎の特技

【繕う日々】ドレスを縫うときにだけ発動する謎の特技

 ドレスを縫うときだけ、両利きになれるという謎の特技を持っている。

 わたしは右利きなのだけど、気がついたらいつの間にか左手でも縫えるようになっていた。左右どちらからでも縫えるので便利だ。

クロスドミナンスとは 目的や行動によって利き手を使い分けることをクロスドミナンスという。例えば文字を書くのは右手だけど、お箸を使うのは左手、というように。「クロスドミナンス」は、日本語では「交差利き」と呼ば

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【仕立て屋の繕う日々】ドレスと学問は両立できるか?

【仕立て屋の繕う日々】ドレスと学問は両立できるか?

 「ドレスと、学問は両立できるか?」

 ここのところ、そんなテーマをかかげて生きている。

 わたしはドレスをつくる仕事をしている。そのかたわらで、日本の繊維製品の歴史についての「研究」もしている。

 最初はじぶんの興味と関心のためだけに、日本各地の繊維製品をめぐる旅をしていただけだった。ところが知れば知るほどそれだけでは物足りなくなってきて、とうとう通信制の大学院に入って研究をするようになっ

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パンが食べられないのなら、ドレスを作ればいいじゃない! #創作大賞2024

パンが食べられないのなら、ドレスを作ればいいじゃない! #創作大賞2024

 ドレスデザイナーになるにはどうしたらいいですか? どこで学べばいいのですか? そんな質問を最近受けるようになった。

 だけどわたしはいわゆる「フツー」の道を歩んでここまできていない。それどころか、中学生のときの家庭科の成績もひどかった。ここだけの話なのだけど、10段階評価でなんと2だった。そんなわたしが、いったいどうしてウェディングドレスを作れるようになったのか。

 そこには、娘の存在が大き

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めちゃくちゃいいドレスができた #3行日記

めちゃくちゃいいドレスができた #3行日記

めちゃくちゃいいドレスができた。
それがすべてだと思った。

…というThreadsが、いつもよりちょっとバズった日。

Threadsのドレスの仕立て屋タケチヒロミ (@takechihiromi)

いっしょにワクワクしてくれてありがとう

いっしょにワクワクしてくれてありがとう

何がうれしいってやっぱり、新しくウェディングドレスのリメイクのお問い合わせがあったとき。

もちろん、お仕事をいただけるってことがとってもありがたいし、うれしいんだけど、

まずその前に「次はどんなドレスなんだろう〜」ってワクワクする気持ちがいちばん最初に来る。だって世の中にはひとつとして同じドレスがないんだもん。だから次はどんなドレスが来るのか、う〜ん、楽しみ、早く見てみた〜い! って、子どもみ

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旅するウェディングドレス、チェコへ。

旅するウェディングドレス、チェコへ。

キューバ、チェコ、マルタ島、ロンドン…。

これらはわたしがつくったドレスが旅した場所。それはもはやわたしが旅したとは言えないだろうか。言えないか。

でも気持ちはいっしょに旅するような気持ちで花嫁さまとドレスを送り出している。心をこめてつくったドレスが世界中を旅している。そう考えただけでうれしい。わくわくする。わたしの旅するドレスたち。

旅するドレスドレスをつくる仕事をしているわたしは無類の旅

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レースを縫いつけ終わるころには

レースを縫いつけ終わるころには

10月末にインフルエンザにかかってから、なかなか体力が戻らなかった。

熱が下がってからも微熱が続き、頭痛が続いていた。ようやく治ってからも、どうもしゃっきりしないというか、やたらと眠くなったり、疲れやすくなっていた。

そうなってくると人間よろしくない。

自己肯定感がだだ下がり。見なくてもいいSNSを見てしまって、みんながバリバリと仕事をこなしているのを見て意味もなく落ち込んだり、だれもわたし

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花々と星々を縫いとめる|お母さまのウェディングドレスのリメイク

花々と星々を縫いとめる|お母さまのウェディングドレスのリメイク

春に手がけたウェディングドレスの物語です。

わたしは神戸でウェディングドレスのリメイクとお仕立ての仕事をしています。最近では、遠方からのお問い合わせも増えてきました。

今回ご連絡をいただいたのは、広島にお住まいの花嫁さま。どんなドレスに出会えるのだろうとワクワクしながら、神戸から広島へドレスをお迎えに行きました。花嫁さまとドレスに会うための、しあわせな日帰り旅です。

お母さまのウェディングド

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あきらめて、あきらめないことにした。

あきらめて、あきらめないことにした。

もうあきらめた。

よりによって大学のテストと、ドレスの仕事の繁忙期が重なっている。

いつも「何でよりによって、こんなに忙しいときに限ってみんないっぺんに重なっちゃうんだろう!」ってずうっと思って生きていたけど、

どうやら「重なる」ものらしい。そう思ってあきらめることにした。

だから全部、どれもあきらめずにやることにした。

あきらめて、あきらめない。何のこっちゃ。

春のうたと、レース遺跡の修復作業

春のうたと、レース遺跡の修復作業

春の繁忙期がやってきて、ずっとアトリエにこもって作業をしている。ドレスのお直しとリメイクの仕事なので、ひたすらコツコツと手を動かす作業がほとんどだ。この季節はいつもそう。

作業中はずっとラジオをかけているので、おかげで「春ソング」にはずいぶんくわしくなった。

娘(16歳)が「春ソングプレイリスト」をつくるというので、いくつかおすすめを教えてあげた。

お気に入りの羊文学からは「マヨイガ」
これ

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noteでの受賞歴・寄稿歴をまとめました|ドレスの仕立て屋と文筆家、旅ライター タケチヒロミ(2024.11加筆修正)

noteでの受賞歴・寄稿歴をまとめました|ドレスの仕立て屋と文筆家、旅ライター タケチヒロミ(2024.11加筆修正)

ドレスの仕立て屋と文筆家、旅ライターのタケチヒロミです。

ドレスの仕立て屋と文筆家、旅ライターって?わたしの本業はウェディングドレスの仕立て屋、リメイク作家ですが、文筆家としての仕事もしています。

以前、原稿を依頼されたnoteの編集担当の方から、わたしのことを「文筆家」とおっしゃっていただきました。「文筆家」、なんて素敵な響きでしょう。古い物語のなかの架空の職業のようです。そういう意味では「

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ドレスは環境問題に貢献できるか? 排出されたエアバッグで作ったウェディングドレス

ドレスは環境問題に貢献できるか? 排出されたエアバッグで作ったウェディングドレス

ファッションにもサスティナブルが当たり前の時代がやってきました。サスティナブルとはサステナブルとも言い、「持続可能な社会を目指す」価値観です。繊研新聞を見ても、毎日どこかしらにサステナブル関連記事が見つかります。

わたしはウェディングドレスのお仕立てとリメイクをしているのですが、近年は環境問題やSDGsへの関心から、リメイクのお仕事の依頼が増えてきました。お母さまのウェディングドレスのリメイクや

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人に求められた仕事をしていたら、なりたい自分になっていた話。

人に求められた仕事をしていたら、なりたい自分になっていた話。

「今の仕事は楽しいけど、これからもずっとやりたいことなのかと言われると、ちょっとわからなくなるんです」

先日お客様である花嫁様から、そんな悩みを打ち明けられた。

そして、私がウェディングドレスのリメイクの仕事をするようになった経緯を聞かれる。

う〜ん、それが自分でもビックリなんだけど、いつの間にかこうなっていたんだよね。

その時々の流れや出会いに従い、そして人に求められるがままに与えられた

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「つくる」ことも「まなぶ」ことも。

「つくる」ことも「まなぶ」ことも。

このどんよりした天気のせいもあるのかもしれないけれど、なんとなく不安で、何も手につかない時、「つくる」仕事があってよかったなあと思う。

手を動かしていると、心が落ち着くから。

今しているのは、「お母様のウェディングドレスのリメイク」

ドレスを作られたのは、仕立て屋だったおばあさま。

三世代の想いを繋ぐ仕事。

いつもよりも少し長い時間をかけてじっくり取り組んでいる。

「つくる」ことも「ま

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