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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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2023年8月の記事一覧

「AI研究者に2000万円支給」は若者のニーズとマッチしているのか?

「AI研究者に2000万円支給」は若者のニーズとマッチしているのか?


研究者引き止めの秘策?文部科学省は2024年度から、AI開発トップ人材の経済支援の一環として、若手研究者に年2000万円、大学院生に年600万円を支給する制度を設けることを発表しました。

この金額は果たして妥当なのでしょうか、あるいは実際に研究者たちのニーズに沿っているのでしょうか。

海外のAIエンジニアの年収国内の企業の場合、年収800万円程度が、海外の場合は10万ドル程度という記事を見か

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「教員業務支援員」に実効性はあるのか?

「教員業務支援員」に実効性はあるのか?

中教審の緊急提言教員採用試験の倍率の低下、中途退職の増加、産休病休代替職員の未確保など、日本中の公立学校では教員不足が問題化しています。

そんな中、中教審の特別部会が文科省に提言書を提出しました。

現場教員からの指摘こうした動きを評価する声がある一方で、批判的な声も存在します。

「3分類」の内訳と実効性業務の3分類は以下のようなものになります。

「学校以外が担うべき業務」

「学校の業務だ

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熱中症が大量発生しても練習を続ける異常な判断

熱中症が大量発生しても練習を続ける異常な判断


山形市の中学校で13人が熱中症で搬送山形市の中学校で体育祭の練習中に13人の熱中症が発生し、救急車で搬送された後も練習が続行されたという事件が報道されていました。

この日は熱中症警戒アラートが発令されており、そもそも練習を行うかどうかを判断すべき日でもあったようです。

山形県では先月も…山形県では米沢市で先月、女子中学生が熱中症で死亡する事件が起きています。

こちらの事件では熱中症が危険視

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大阪府の高校無償化の肝は「高校版ふるさと納税制度」

大阪府の高校無償化の肝は「高校版ふるさと納税制度」


大阪府の高校無償化大阪府の高校は私立学校も含めて原則無償化することが決まりました。

決定までは紆余曲折があったようで、上限60万円の支給としていた点で府は大阪私立中学校高等学校連合会と対立していました。

この理由としては60万円を超える額に関しては私立学校側が負担をするという点だったのですが、府側が限度額を63万円としたことで連合会と合意したということです。

3万円の攻防はなぜ年間3万円の

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全国学力調査に「義務教育の体をなしていない可能性」切り捨てる丸山知事の見識の浅さ

全国学力調査に「義務教育の体をなしていない可能性」切り捨てる丸山知事の見識の浅さ


丸山知事の発言島根県の丸山知事が全国学力調査の算数の結果に関して「日本の義務教育の見直しが必要」という見解を発したニュースを見かけました。

元記事によると「椅子4脚の重さが合計7キロあった場合のこの椅子48脚分の重さ」を問う問題を例に挙げて

との発言をしたようです。

このことに関して考察をしてみたいと思います。

問題の内容に関してこの問題は「令和5年度調査 全国学力・学習状況調査」の小学

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出光社員の「週1先生」が失敗する未来しか見えない。

出光社員の「週1先生」が失敗する未来しか見えない。


「週1先生プログラム」とは千葉県松戸市の松戸市教育委員会は出光興産の社員を週に1日、市内の中学校に派遣する「週1先生プログラム」を9月から始めると発表しました。

ゲストティーチャーとして講義をするというのは生徒にとっては非常に良い経験となるでしょう。

ただ気になるのは「校務の効率化や合理化への助言」という部分です。

果たしてどれほどの実効性があるでしょうか。

外部の干渉を嫌う教員文化学校

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「研修の有無や充実度を意識する」若者が教員を避けるのは必然

「研修の有無や充実度を意識する」若者が教員を避けるのは必然

入社研修で充実度を求める若者たち入社研修、20代社会人の9割が「研修の有無や充実度を意識する」が学上の調査で判明したというニュースが上がっていました。

これは20代の社会人363人を対象に実施したアンケートで、多くの若者が社内研修による基本事項の確認や徹底を求めていることがわかります。

教員の研修システムでは近年人気が落ち続けていると言われる学校の教員の研修体制はどんなものでしょうか。

一見

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「公設民営大学」という壮大な失敗、そして大学選択の決め手は学費という厳しい現実

「公設民営大学」という壮大な失敗、そして大学選択の決め手は学費という厳しい現実


大学誘致ブーム1990年代から2000年代初頭にかけて日本中の地方都市に私立大学が設置されました。

この時期に流行ったのが「公設民営大学」です。

その多くは設置段階で自治体の人口減少や地域振興策の一環として誘致予定地の無償(あるいは限りなく無償に近い)貸与など、通常では考えられない優遇を受けていました。

そうした大学がどうなったかを見ていきたいと思います。
(公設民営大学はそれ以前から設置

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「シェフ」から「ソムリエ」へと変わる教員の役割

「シェフ」から「ソムリエ」へと変わる教員の役割


職業と役割の変化教員の仕事の変化について昨今さけばれているのが、ティーチングの役割の低下、というものです。

ところがこのニュアンスが非常に分かりづらく、教員の仕事は無くなる、授業は動画やオンラインで十分、といった極論を口にする人も多いようです。

教員の中にも(特に年配の人は)教員の仕事は授業だから、動画なんぞ使わずに俺の授業を聞け、と高圧的になる人もいるようです。

こうした原因は学校や授業

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プールの水で賠償の学校、採用試験日程誤送付で賠償無しの教育委員会

プールの水で賠償の学校、採用試験日程誤送付で賠償無しの教育委員会


プールの水を出しっぱなしに大して賠償を求めるプールの水の管理ミスにより、かかった水道代を担当教員に対して賠償を求めるという対応を行うケースは毎年よく耳にする話です。

今年もまた、その事例集に神奈川県の新たな一例が増えました。

私は以前、ちょうど1年前に同じ記事を書いているようです。(毎日記事を書いているため、記憶があいまいです)

どうやら教育委員会という組織は業務上のミスについて、労働者で

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「副校長・教頭に「補佐役」」をつけるという文科省の新たな「やった感」改革案

「副校長・教頭に「補佐役」」をつけるという文科省の新たな「やった感」改革案

教員の長時間労働が問題となる中で、学校管理職もまた長時間労働を強いられている状況にあります。

そんな状況を改善するための「画期的」な案を文科省がまた思いついたようです。

制度の概要この「補佐役」は「マネジメント支援員」と呼ばれるそうです。

主な業務は出勤管理、外部との渉外、国や自治体のアンケートの処理などということです。

支援員の人件費の1/3は国が補助を出すことで、教頭や副校長の負担を減

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文学部軽視の現政権の方針、人口減少社会の受け入れるべき現実

文学部軽視の現政権の方針、人口減少社会の受け入れるべき現実


理工系重点施策と反発理工系人材育成に関して文科省が重点的に予算を配分することが以前から話題になっています。

その動きに対して否定的な意見を上げる人文系科学者は少なくないようです。

「大学の理系転換への動き」に対する危機感記事中の引用を見ると明らかなように、「理系強化」は歓迎だが「理系転換」は拒絶、ということです。

もちろん彼らの意見に正論的な部分を感じないわけでもありません。

かつて文科

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タブレットの更新を考えていない行き当たりばったりのGIGAスクール

タブレットの更新を考えていない行き当たりばったりのGIGAスクール

やはり、というべきでしょうか、この問題がついに表面化してきました。

タブレットなどの学校利用の端末の更新費用です。

端末を買い上げ、貸与していた自治体そもそも2020年のGIGAスクール前倒しはコロナ禍による緊急対応という題目が掲げられていたため、生徒支給に対して予算が別枠であてがわれていました。

当然ながらこの予算は通常体制に戻った時点でカットされることは自明であり、ICT関連に詳しい方の

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難関大学向けの無料学習塾は行政の無駄が多過ぎる

難関大学向けの無料学習塾は行政の無駄が多過ぎる

難関大学合格へ無料学習塾を足立区が設置している記事を見かけました。

昨日、似たような記事を書いたばかりですが、絡めてまとめていこうと思います。

どうして行政で全て賄うという無駄を作るか昨日の記事では福岡県の難関大向のオンライン授業に関して触れましたが、行政はどうやらこうした無駄事業を好む傾向があるようです。

今回の足立区の事業においては、行政が塾的な学習支援を行っています。

区の子供支援セ

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