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出光社員の「週1先生」が失敗する未来しか見えない。


「週1先生プログラム」とは

千葉県松戸市の松戸市教育委員会は出光興産の社員を週に1日、市内の中学校に派遣する「週1先生プログラム」を9月から始めると発表しました。

社員が市立第一中で原則週に1回、約8時間勤務する。校務の効率化や合理化への助言をしたり、実際に授業でゲストティーチャーとして話したりする。

ゲストティーチャーとして講義をするというのは生徒にとっては非常に良い経験となるでしょう。

ただ気になるのは「校務の効率化や合理化への助言」という部分です。

果たしてどれほどの実効性があるでしょうか。

外部の干渉を嫌う教員文化

学校は数十年にわたって社会から治外法権を獲得した特殊な団体として機能してきました。

警察権力でさえ内部に入れないケースが多々あったのは周知の事実です。

そのような特殊な環境において、出光興産の社員のアドバイスがどこまで実現可能なのか、かなり微妙ではないでしょうか。

校務の効率化など、おそらく民間から見れば非効率なことは存在しますが、そもそも公務員の仕事の多くは非効率で面倒だが、法律的に瑕疵の無い手続きを行うことが前提となって設計されています。

書類仕事の大半は無駄であったとしても、公開請求などで痛くもない腹をさぐられないように、あるいは万が一のリスクを考慮して行っているものでしょう。

民間のコスパを考えた手続きの簡略化とはそもそもの設計思想が異なっています。

それに加えて教員の中には手仕事、手間暇、無駄こそが子供の心に良い影響を与えると信じている人間が少なくありません。

彼らに効率化を促せば、心や気持ちを置き去りにしているという反発が起こるのは必須でしょう。

外部企業の一社員の指摘をどこまで改善に生かす姿勢を取ることができるか、微妙なところでしょう。

教育委員会、肝いりの学校まで

今回の中学校の改革は必ずしも失敗するとは言えません。

今回はまずお試しということで、市内の一校からスタートしたということです。

おそらくは、この施策や方針に対して好意的な態度を示した校長のいる学校、教育委員会の肝いりということでの進捗調査や訪問が頻繁に行われるであろうこの一校であれば、ある程度の成果は見込める可能性はゼロではないでしょう。

出向している社員もある程度やる気に溢れた人であることは想像に難くありません。

現場教員としても、テスト校として行われている施策にこれ見よがしに反対の立場を示す人はそこまでいないでしょう。

しかし、この一校での試みを複数、市内全域で行うことは可能でしょうか。

もちろん実行するだけならば可能かもしれませんが、非協力的な管理職、現場からの反発、モチベーションの低い出向社員、これらの組み合わせから見えてくるのは、民間と学校のさらに深まった溝だけです。

方針自体は決して悪いものではない

民間企業の機動力や効率性を学校現場に導入するという観点は決して間違ってはいないでしょうし、社員を出向させることも決して悪手ではありません。

しかし、このままでは彼らは現場において「お客さん」扱いしかされないでしょう。

もし本当にこうした改革を行いたいのであれば、権限や立場を同時につけなければ難しいのではないでしょうか。

お飾りではない、ある程度強い権限をセットでつけることで初めて学校を変えることは可能になります。

そしてそのためには教育委員会だけでなく、首長や都道府県、さらには文科省が総力を挙げてサポートする、例えば特区を設定するなど、ことが必要でしょう。

ひとまずは今回の施策の行く末を見守りたいと思います。

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