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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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記事一覧

【題未定】一律適用の危険性:「探究的学び」と教科特性の矛盾【エッセイ】

【題未定】一律適用の危険性:「探究的学び」と教科特性の矛盾【エッセイ】

  現在、学校文化において大流行中なのが「探究的な学び」という言葉である。どの研修へ出かけても、どの教科書会社の社員と話をしても、その言葉が出ないことはない。

 こうした教育や学校でスローガン的に掲げられた言葉を教科単位に落とし込んでいくのが教科書会社や現場教員の仕事である。文科省の言う「探究」とは問いに対して仮説を立て、検証するという行為を指すようであるから、それを教科ごとに具体的な授業として

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英語力92位? 日本人は本当に英語が苦手なのか

英語力92位? 日本人は本当に英語が苦手なのか


英語力民間調査、92位という報道先日NHKが「英語力民間調査 日本は92位 調査開始以来 最低水準」という煽情的なトップで日本人の英語力低下に関する問題を報道しました。

こうした報道は手を変え品を変え繰り返されていますが、今回はNHKが英語教育をごり押ししたい文科省や英語教育推進論者の片棒を担ぐ番が来たようです。

NHKによる「調査」と「指標」の混同そもそもこの調査はどれほど信ぴょう性、信頼

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【題未定】「思考力先行」の弊害―教育現場で見過ごされる知識の不足【エッセイ】

【題未定】「思考力先行」の弊害―教育現場で見過ごされる知識の不足【エッセイ】

 昨今の教育業界は「思考力」の極端な重視があらゆる場所、分野に及んでいるのは業界関係者ならば周知の事実だ。学習指導要領という学校教員にとっての金科玉条から、教材、試験などあらゆる部分にその傾向が見られる。

 指導要領では「主体的、対話的で深い学び」という言葉が連呼され、教科書は「思考力・判断力・表現力」を養成するという名の下に課題学習のページを増量、共通テストでは長文形式の読み取り問題が跋扈して

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教員不足の「追加募集をさらに追加」──教育崩壊の足音

教員不足の「追加募集をさらに追加」──教育崩壊の足音


熊本市教員採用試験追加募集の追加先日、熊本市は初めて教員採用試験の受験者、合格者の不足を補うための追加募集を実施しました。ところが52人の追加を目標として募集をかけたところ、応募は19人となり依然として不足したままの状態が続いています。

そのためさらなる追加募集を行うようです。

この結果に対して教育委員会のコメントは以下のようなものです。

「バチが当たった」という言いぐさに読んだ方はどのよ

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「学校司書」はどこに?見えにくい役割とその重要性

「学校司書」はどこに?見えにくい役割とその重要性

「司書教諭」と「学校司書」学校図書館を実質的に管理する「学校司書」なる職種が存在するのをご存じでしょうか。教育関係者には釈迦に説法だが、それ以外の人たちにとっては公共の図書館司書との違いが分かりにくいかもしれません。

この制度の分かりにくいところはそれと似た「司書教諭」という制度が存在するためです。この二つを混同している人は少なくないと思います。

学校図書館の設置や運営を規定した「学校図書館法

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「ICTで名を成した熊本市教育委員会の名が地に堕ちた日」

「ICTで名を成した熊本市教育委員会の名が地に堕ちた日」


教員不足、52人の追加募集熊本市教育委員会は2025年度の市立学校教員採用試験において、定員割れのために52人の追加募集を行うことを発表しました。

採用予定である314人に対し、52人不足の定員割れとなっており、追加募集の試験は12月1日に実施する予定のようです。

追加募集となった原因全国的に教員の不足はここ数年の社会問題となっています。とはいえ、どこも1倍を割り込む事態までには至っておらず

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スマホと学力低下とその真相:スマホ悪玉論は金科玉条か否か

スマホと学力低下とその真相:スマホ悪玉論は金科玉条か否か


スマホ悪玉論昨今、スマホを目の敵にした言説を見ることは少なくない。東洋経済のオンライン記事にいまさら目新しさの無い記事が一つ加わっているのを発見しました。

まあ中身は所謂「スマホ悪玉論」の練り直しであることは間違いありません。しかしこの記事には少し異なる点が存在します。

今回の記事は、この手の記事に対して批判的な意見となる「スマホを使用している分だけ勉強や睡眠にあてる時間が短くなるから」とい

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「大阪府の高校無償化で大混乱?私立人気と公立崩壊の真相とは」

「大阪府の高校無償化で大混乱?私立人気と公立崩壊の真相とは」

大阪府の高校無償化の影響大阪府では私立高校を含めたすべての高校(いわゆる一条校がほとんどですが)で授業料無償化がスタートしました。

その件に関しては以前私自身も記事化しています。

この制度の影響は大きく、公立高校の半数近くが定員割れを起こす自体となりました。そこでこの状況を改善し、公立高校の受験倍率を引き上げるために入試日程を早める制度を差来年度にも大阪府教育庁は導入するというニュースが報道さ

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新潟県、教員採用定員割れの衝撃

新潟県、教員採用定員割れの衝撃


新潟県の教員採用試験、定員割れ教員採用試験の定員割れに関しては、もはや問題となって久しくなります。地方ならまだしも、大都市圏でも無視できない状況であるのは多くの人が認めるところでしょう。

とはいえ、その問題の渦中にあるのは中学校教員、ついで小学校教員であって、教科の専門性の高い高校においてはいまだ高い倍率が維持されているのが現状でした。

ところがついにその牙城が崩されようとしています。

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SNSとテスト正答率の相関を真面目な顔をして分析する文科省、あるいはマスコミこそ何かが低下しているのかもしれない

SNSとテスト正答率の相関を真面目な顔をして分析する文科省、あるいはマスコミこそ何かが低下しているのかもしれない


全国学力調査先日、4月に実施された全国学力調査の結果が公表されました。

このテストは全国の小6と中3を対象に実施された学力調査(国語と算数・数学2教科)で、同時に生活状況などのアンケートも実施されていました。

SNSの利用時間と学力テストの関係その結果の中でSNSの利用時間と学力テストの結果に言及されている報告がなされています。

まずこの結果に関して言えば、調査するまでもなくあまりにも明ら

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川崎市教員、休暇不正取得の案件に関する雑感

川崎市教員、休暇不正取得の案件に関する雑感


川崎市教員、休暇不正取得川崎市の教員が新型コロナウイルスの感染拡大防止のための「特別休暇」を申請したにもかかわらず、出勤をしていたということで給与の返納を求められるという件がニュースになっています。

では今回の特別休暇に対し、どうして不正取得と見なされたのでしょうか。

特別休暇中に出勤今回の特別休暇を不正取得と見なされた理由は休暇中に出勤をしたことにあるようです。

今回の事例に関し、私はニ

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不登校児童に退学届要求をした目黒区教委が陳謝する事件についての雑感

不登校児童に退学届要求をした目黒区教委が陳謝する事件についての雑感


不登校児童の増加問題近年、日本の教育現場で不登校児童の数が増加している現象は深刻な問題となっています。この問題には家庭環境、友人関係、学校の雰囲気、さらには学業のプレッシャーなど多くの要因が絡み合っており、一概に特定の何かを原因と分析することは不可能です。

また、不登校の増加の背景には、学校という制度そのものの柔軟性の欠如や、個々の児童に対するサポート体制の不足が挙げられます。今回の目黒区の事

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日大の不祥事続出問題、日本社会における組織の構造的な問題

日大の不祥事続出問題、日本社会における組織の構造的な問題


日大、重量挙げ部の金銭不正徴収ここ数年、日本大学では不祥事が続出しています。そんな中でさらに新たな不祥事が明るみになりました。

今回の内容はもはや部活動という学内組織が行っているとは思えないほどに悪質です。本来、奨学生として学費が免除になっている学生に虚偽の通知を行い、あたかも大学側のように扮して金銭をだまし取るという手口です。これは詐欺集団や犯罪組織のそれに類するものでしょう。

これまでの

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SNS上のいじめやトラブル、学校がどう関わるか

SNS上のいじめやトラブル、学校がどう関わるか


「いじめの重大事態」に認定SNSにおけるトラブルは、昨今学校内で起こる問題の最も大きなものの一つでしょう。小学校のようなスマホやネットに触り始めたばかりの年齢から、高校生や大学生など利用方法をある程度理解しているはずの世代まで、どの年齢帯にも起こる揉め事となっています。

最近は職場やママ友や趣味のコミュニティにおいて、成人同士でのトラブルの火種となることも少なくないようです。

さて、佐賀県で

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