マガジンのカバー画像

教育問題に関する私見と雑観

468
私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
運営しているクリエイター

2022年6月の記事一覧

「文科省の官僚は現場を経験すべき」という暴論と短絡思考への恐怖

「文科省の官僚は現場を経験すべき」という暴論と短絡思考への恐怖

教育行政に振り回される教育現場これまでも教育行政に教育現場が触れ回される事例は枚挙に暇がないほどありました。

ゆとり教育の開始と失敗、脱ゆとりへの急旋回、その後は大学入試改革から英語外部試験の頓挫、新指導要領からの共通テスト改革などここ10年でもイベントが山盛りでした。

それに加えて#教師のバトンからの教員の労働問題と給特法など、学校や教育制度だけでなく、教員への労務管理などでも振り回され続け

もっとみる
一般入試は本当に平等で公平か

一般入試は本当に平等で公平か

私の勤務校では、そろそろ推薦型や総合型選抜の準備が始まる時期です。

この手の筆記型で無い試験に対して抵抗感のある人は多いようです。

教員の中でも賛否が別れます。

自分が努力して一般入試で大学に行った人ほど、批判的に考える傾向があるように感じます。

筆記試験が平等的に見えるそれと比べると、筆記試験は一見すると極めて平等なシステムに見えます。

学力は努力をしなければ身につきませんし、実際、高

もっとみる

学習環境を整える方法、5選

生徒と面談をしていると、家庭学習でのことで相談を受けることがあります。

その中でも多いのが、家で集中できないという悩みです。

もちろん、根本的な問題自体は本人の自覚であったり、学力不足であったりするのですが、それでも物理的に解決可能なことがあります。

高校生ぐらいの年齢の場合、学習環境に関して無自覚であることが多いようです。

そこで、学習環境、特に勉強をする個室の環境に関して普段生徒に話し

もっとみる

学校行事は失敗こそが高い教育効果を生む

学校行事の中止や縮小ここ数年、日本中の学校で行事が中止、規模縮小していました。

このことに関しては私の様に無駄な行事が減って学校のすべきことが精選された、という感想を抱く人もいれば、生徒の多様な経験の場が失われたと感じた人もいるでしょう。

今年度からは、徐々に再開への方向に動いている学校も多いようで、行事を望んでいた人にとっては朗報かもしれません。

ところで、多くの学校ではこの数年の縮小の動

もっとみる
「板書の力」の過大評価と授業手法の変化

「板書の力」の過大評価と授業手法の変化

教員界隈(特に小中学校の先生方が多いようですが)のSNSでは板書の事に関しての報告事例が多くあります。

インスタなどでもキラキラ板書の報告事例を見かけるも少なくありません。

板書に関する書籍を出版している人もいるようです。

板書を工夫すること自体は授業準備や教材研究において重要だと思いますし、それを共有するという取り組みも非常に有意義でしょう。

しかし、果たして板書ベースの授業というのが本

もっとみる

「貧しいからこそ、四年制大学に奨学金を利用してでも進学すべき」という考え方

多くの学校と同じように、私の勤務校にも多様な生徒が在籍しています。

そうした生徒達を送り出し、その後の彼らの人生の続きを伝え聞くたびに、四年制大学へ進学すべきと強く感じることがあります。

高卒と大卒の収入や社会的立場の差その理由として挙げられるのが、高卒と大卒の生涯賃金の大きな格差です。

私が最初に送り出した生徒はすでに30半ばを迎え、今の時点でも卒業後の進路によって経済格差は広がっているの

もっとみる
「理不尽に耐えること」は学校教育の範疇か?

「理不尽に耐えること」は学校教育の範疇か?

梅雨の時期になり、雨の日が増えてきました。特にここ数年は突然のゲリラ豪雨に襲われることがあります。

私自身は自動車通勤なのでそこまで影響はない(と言っても前方視界が塞がれて怖いことがありますが)のですが、生徒は自転車通学も多く朝からずぶ濡れで学校に来るケースがあります。

着替えも無いため、早退をするように促した先日、ゲリラ豪雨が降ったため、生徒がずぶ濡れで学校へ来ていました。

体操着も持って

もっとみる
「ノートの取り方」を考える

「ノートの取り方」を考える

新学年がスタートした時、特に新入生の授業では必ず話をすることがあります。

それは「ノートの取り方」です。

もちろん、中学校で普通に生活を送ってきている彼らは、すでにノートを取る習慣自体はできています。

しかし、そのほとんどは黒板の板書や教科書の記述を無目的に写すだけに過ぎないのが現実です。

今回は私が年度当初に生徒に説明する「ノートの取り方」を軸に、ノートについて考えたいと思います。

もっとみる
カリスマ講師の映像授業だけで教育は成立するか

カリスマ講師の映像授業だけで教育は成立するか

教育問題がマスコミやSNSで話題になっているとき、訳知り顔のコメンテーターや高偏差値大学入学(≠高学歴)自慢の人がよく口にするのが

「教師不要、カリスマ講師の映像授業を見せればよい。むしろ効率がいい」

という言葉です。果たしてこの言葉を実際に日本中の学校で実行することで効率性は上がるのでしょうか。

学校の役割学校の役割には大まかに2つが考えられます。

一つは学力、そしてもう一つは社会性の養

もっとみる
「板書を写したノートの提出」に見る、非効率的な無駄や形式を重んじる文化

「板書を写したノートの提出」に見る、非効率的な無駄や形式を重んじる文化

学校文化の中には、令和を迎えた現代社会では忘れ去られたような文化がいまだに現存しています。

生活指導はその典型と言えます。

眉検査、スカートの長さや前髪、後ろ髪の長さ、ルッキズムを体現したかのように他人の容姿にダメ出しをしていきます。

そして、学校で教える教科学習に関してもそうした風習が存在しています。

それが「板書を写したノートの提出」とその評価です。

「板書を写したノートの提出」の表

もっとみる
「頭の中の音読」癖が学習効率を下げる

「頭の中の音読」癖が学習効率を下げる

読解速度の遅い生徒との会話教員、特に担任をしていると教科以外の学習相談を受けることは多々あります。

学習の悩みや時間管理など多岐にわたるのですが、中でも多いのが文章読解力に関する相談です。

その多くが、国語の文章が読み終わらない、焦って読むと内容が入ってこない、というものです。

そうした生徒と話をするうちに気づいたことがあります。

それは、彼らの多くが「頭の中の音読」をしているということで

もっとみる

生徒に教員の勤務時間を伝えることの重要性

以前、働き方改革に関しての私見を書きました。

日本社会全体が生産性の向上やライフワークバランスの調整、働き方改革の推進という方向に進む中で、遅まきながら学校教員の世界もその動きが進みつつあります。

とはいえ、依然として無休での働かせ放題システムである給特法の改正は進まず、公立学校の教員は長時間労働に励んでいます。

部活動の地域移行は中学校から進むようですが、こちらも道半ばといったところでしょ

もっとみる
「解説をしたい」という教員のエゴ

「解説をしたい」という教員のエゴ

授業形式の変化と学校現場の対応「アクティブラーニング」や「主体的対話的で深い学び」といったキーワードが教育業界では流行っていますが、校種によって取り組みは大きく異なります。

学齢が低いほど、それらへの取り組みの熱意も強まるようです。

実際、小学校ではかなりの授業がディスカッション形式になっている学校もあるようです。

もちろん、授業形態による学習効果に関しては賛否があります。そもそも学力の定義

もっとみる
「私立学校教員」の仕事、学校広報

「私立学校教員」の仕事、学校広報

教員志望者が減り続ける中、当然私立学校教員を目指す教員志望者も増えるということはありません。

とはいえ、教員を目指す学生や公立学校からの転職を考える人がいないわけではありません。

そうした方に参考となるような情報を共有したいと思います。

公立学校にない仕事=「学校広報活動」「ない」と書きましたが、最近は公立の高校などでは多少は宣伝活動を行ってるようです。

それでもパンフレットを配ったり、説

もっとみる