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読後寸評

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読んだ本で感じたことを綴っています。 好きな作家はラディゲですが、最近よく読むのはジェンダー論。A4用紙1枚程度で、800〜1000字程の感想文です。
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各地の駅メロ誕生のエピソードを綴った本「駅メロものがたり」

各地の駅メロ誕生のエピソードを綴った本「駅メロものがたり」

本(駅メロものがたり)(敬称略)(長文失礼します)

全国の駅に流れる発車を知らせるメロディー(駅メロ)について、その採用までのエピソードを紹介した本です。私がこの本を知ったのは筆者の藤澤志穂子さんが新聞の人物欄に紹介された記事であり、これはなかなか興味深いと新書版を買って読んでみました。ちなみに出版は交通新聞社という鉄道や交通専門の新聞・出版社です。

プロローグに「紹介する18の駅は、音楽によ

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AIによって変わる社会で生き残る仕事の指南書「10年後のハローワーク」

AIによって変わる社会で生き残る仕事の指南書「10年後のハローワーク」

本(10年後のハローワーク)(長文失礼します)

AI((人工知能)の登場により、10年後の仕事がどのように変貌するかを推測して解説した本です。筆者の川村秀憲さんは長年人口知能の研究を続けている北海道大学大学院の教授で、専門家から見たAIで変化する社会の10年後を予想しています。

最初に筆者が掲げるのは、AIに何かを奪われるのではなく、AIと共存しながら快適に生きていけるようにしたいとのことで、

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「好く力」とは⁉️コラムニスト酒井順子さんの新刊本「消費される階段」

「好く力」とは⁉️コラムニスト酒井順子さんの新刊本「消費される階段」

本(消費される階段)(長文失礼します)

コラムニスト酒井順子さんの新刊本です。私がこの本を知ったのは新聞の夕刊で、記事を読んで面白そうなので、買って読んでみることにしました。中年女性の未婚の本音を綴った「負け犬の遠吠え」がベストセラーとなった筆者ですが、正直これまでその著書を読んだことがありませんでした。

女性の本音を日常目線で書くコラムは、やはり性と世代が違う自分にとって、共感する事項が見当

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意識高め150冊の書評本「あなたの代わりに読みました」

意識高め150冊の書評本「あなたの代わりに読みました」

本(あなたの代わりに読みました)

文芸評論家の斎藤美奈子さんの書評本で、副題が「政治から文学まで、意識高めの150冊」というものです。休刊した週刊朝日の読書欄に連載された「今週の名言奇言」10年分490冊の中から154冊を筆者が選んで、ジャンル別に掲載しています。

見開き2ページで1冊の本を紹介し右上に「名言奇言」を文中の文章をそのまま引用し、左中段に本の出版社と値段、下段に追加のコメントが書

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倫理が資本主義の改善策となる⁉️「倫理資本主義の時代」

倫理が資本主義の改善策となる⁉️「倫理資本主義の時代」

本(倫理資本主義の時代)(長文失礼します)

「哲学界のロックスター」と呼ばれるマルクス・ガブリエル著の新書です。私がこの本を知ったのは新聞の書評欄ではなく文化欄での特集記事であり、環境破壊や経済格差、さらに貧困などの諸問題を抱える現代の資本主義を、哲学の一分野である倫理により改善していこうとする考察と提案の本です。

私がこの本のタイトルを見て最初に思い出したのが、本書を監修し、文中にもその名前

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サプリメントより滋養食と説く本「食べて、100歳」(^ ^)

サプリメントより滋養食と説く本「食べて、100歳」(^ ^)

本(食べて、100歳)

副題が「サプリメントより滋養食」という、長寿のためには何を食べれば良いかを指南した本です。筆者の永山久夫さんは今年92歳になる食文化史研究家で、まさに自ら実践してきた長生きをするために良いとされる食材を多く紹介しています。

食文化史研究家である以上、歴史上の食に関する文献などを参考にしながら解説していますが、古くは平安時代、さらに江戸時代にも日本人の生活の知恵が生み出し

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2024年下期の芥川賞受賞2作品を読んで

2024年下期の芥川賞受賞2作品を読んで

本(サンショウウオの四十九日)(2作品受賞なので、長文失礼します)

今年下期の芥川賞受賞作品です。受賞作は文藝春秋を買ってきて毎回読んでいますが、今回は読む前から様々なメディアに取り上げられ、特に結合性双生児をテーマにした作品ということで、ひときわ話題になっていたと思います。

結合性双生児といえば、個人的な記憶ではベトナム戦争での枯葉剤の影響で生まれた男性の双子を思い出してしまいましたが、どう

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料理の基本のキの本‼️「調理以前の料理の常識」(^ ^)

料理の基本のキの本‼️「調理以前の料理の常識」(^ ^)

本(調理以前の料理の常識)

実用本ですが、読んで非常に参考になったので感想を述べることにしました。タイトル通り料理の基本の基を解説した本で、初版本は2004年発行であり、料理好きなので買っておきながら2024年の今年まで読まなかった本です。

最近読んだ栄養学の本との関連性を見つけて、20年経ってやっと読んでみることにしました。病気で入院以来、その後の食生活には気を配って料理もしてきたつもりでし

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直木賞受賞の短編集は一級のエンタメ小説「ツミデミック」❗️(^^)

直木賞受賞の短編集は一級のエンタメ小説「ツミデミック」❗️(^^)

本(ツミデミック)

今年下期の直木賞受賞作品です。同時に発表される芥川賞は文藝春秋に全文が掲載されるので、毎回買って読んでいますが、直木賞が掲載されるオール読物は全文掲載ではないので、興味がある作品を見つけると。単行本を買って読んでいました。

今回も新聞の紹介記事などで読んで面白そうだと思い、単行本を買って読みましたが、期待以上の作品集でした。内容は6作品からなる短編集で、それぞれ独立した物語

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1980年代一大ブームとなった哲学書の文庫本「構造と力」

1980年代一大ブームとなった哲学書の文庫本「構造と力」

本(構造と力)(長文失礼します)

1983年に出版されて一大ブームとなった浅田彰著作の文庫本です。当時あまりのブームになったので、個人的にアレルギー反応を示してしまい、単行本は結局読みませんでした。関連の解説本も多く出版されましたが、最も親しんで読んだのは雑誌「宝島」に当時連載され、愛読していた山崎浩一氏の「なぜなにキーワード図鑑」での「ポスト構造主義」であり、スキゾ・パラノの対比、スキゾ・キッ

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漫画家相原コージさんのうつ病体験記第3弾「うつ病になってマンガが描けなくなりました退院編」‼️

漫画家相原コージさんのうつ病体験記第3弾「うつ病になってマンガが描けなくなりました退院編」‼️

本(うつ病になってマンガが描けなくなりました 退院編)

漫画家相原コージさんのうつ病体験記の第3弾です。最初の「発病篇」2冊目の「入院編」に続くもので、今回が完結編となります。1冊目の発病に至った経過や2冊目の病院での入院生活の様子は、漫画ゆえのリアルな描写で、うつ病に苦しむ筆者の心境がひしひしと伝わってきました。

ただ入院編の最後では回復の兆しが出ていたので、今回の「退院編」も発売と同時に買

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ムショメシ(刑務所の食事)の実情を書いた本「めざせ!ムショラン三ツ星」

ムショメシ(刑務所の食事)の実情を書いた本「めざせ!ムショラン三ツ星」

本(めざせ!ムショラン三ツ星)

刑務所の給食(食事)事情を書いた本です。私がこの本を知ったのは新聞の書評欄ではなく、夕刊の一般記事でした。料理好きなので早速読んでみようと本屋へ行きましたが、在庫がなく注文して取り寄せた次第です。それほど新聞で取り上げられながらも、やはり特殊な部類に属する本なのではと思います。

筆者の黒柳桂子さんは、愛知県の岡崎医療刑務所に勤務する管理栄養士(法務技官)である国

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定食屋で織りなす人情物語「定食屋「雑」」(^。^)

定食屋で織りなす人情物語「定食屋「雑」」(^。^)

本(定食屋「雑」)

「三千円の使い方」や「ランチ酒」などで人気の原田ひ香さんの小説です。私がこの作家の小説を最初に読んだのが「三千円~」で、次が「ランチ酒」でした。最初の作品は財テクの参考になりましたし、「ランチ酒」は個人的に料理と食事、お酒も好きなので、結局シリーズ3冊全部を読んでしまいました。

今回は本の題名の通り、店名が「雑」という定食屋の物語で、各章ごとに料理名が付いています。第1章が

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田中角栄元首相が逮捕された戦後最大の疑獄事件「ロッキード」

田中角栄元首相が逮捕された戦後最大の疑獄事件「ロッキード」

本(ロッキード)(敬称略。超長文失礼します)

戦後最大の疑獄事件といわれたロッキード事件を検証したノンフィクションの本です。筆者の真山仁は「ハゲタカ」などドキュメンタリータッチの小説を数多く執筆しており、元首相の田中角栄逮捕という衝撃的な結末で事件の幕が降りながら、今でも多くの謎に包まれた事件となっています。
文庫本で600ページ超の量でしたが、読みやすい文章と検証しながらの数々の仮説が繰り広げ

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