「Mr.ノーバディ」を何度も観ていたら、主人公より父親の方に感情がゆくようになった。FBIで日夜悪党を退治していたが、今や老人施設の入居者。輝いていたあの頃が懐かしい。その気持ちの表れが、ひがな眺めているあのテレビの西部劇だったのだと思う。いいわやっぱりこの映画。
主役のボブ・オデンカークをあえて語ってこなかった。彼はもともと作り手の側で、作家や脇役として才を発揮してきた。本格的なアクション俳優はこれが初めて。なのでこのシリーズ以外で活躍せず、コメディ作家のままでいてほしいのである。ともあれ歳は私とひとつ違い。私も京急バス内で静かに笑むか?
2021年公開の「Mr.ノーバディ」(原題「Nobody」)を観た。いやあ最高である。平凡な生活に憧れて引退した政府の特務機関員が、ある事を機に眠っていた暴力性を目覚めさせる、といった物語である。どう見ても冴えない見た目の主人公がとてもよい。音楽のチョイスがまたよいのだ。必見。
映画「Mr.ノーバディ」だが、すでに型はある。「96時間」「イコライザー」などの、普通の中年がじつは強者だった、というもの。けれどこの主人公、本当に見た目が冴えないのだ。そして無双でもない。殴られ放られ、徐々に覚醒してゆく。これらがよい。そして場面に合った往年の名曲。最高である。