伊藤聡

会社員兼ライター。書評、映画評、美容記事、ジェンダー論を中心に、いろいろ書いております。| Twitter : https://twitter.com/campintheair | メール so.ito.so@gmail.com

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マガジン

  • 雑記

    特にこれといったテーマもなく書いた雑文です

  • 映画の記録

    見た映画に関する記録です

  • 読書の記録

    読んだ本の感想をまとめたものです

  • スキンケア本『電父』(平凡社)のすべて

    2023年2月24日発売の書籍『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社)について知ってもらうための記事です

  • 音楽の記録

    好きな音楽について書いたものです

最近の記事

中年に「ドラゴンクエスト3」をクリアする元気と時間はあるのか

リメイクが発売されたさて「ドラゴンクエスト3」である。1988年(昭和ラストイヤー)にファミコンで発売されたロールプレイングゲーム。以降、複数のハードにまたがって何度となく再発表された作品で、私もファミコン版、3DS版でプレイしたが、今度は映像もHD-2DとなってSwitchやPS5などでリリースされた。まあ、HD-2Dが何なのかは、私もよくわかってないんだけど。ドラクエの初期タイトルといえばもう、発売日にソフトのひったくり犯が出るくらいの、とんでもない大流行をしていた。あれ

    • 「誰もが認める名曲」にノレない

      あまのじゃくな性格が原因で、「誰もが知っている大ヒット曲」や「万人が認める名曲」にうまくノレない。どうにもしらけてしまうのである。思い起こせば、高校時代にビートルズのCDリイシューが始まり、毎月発売されるアルバムを順番に買っていったが、「イエスタデイ」(1965)は聴くのが照れくさかった。同曲が収録された『HELP!』(1965)は好きなアルバムだったけれど、「イエスタデイ」だけは飛ばしてしまっていたのである。イントロの時点でむずがゆい。また私は、一定のキャリアを重ねたミュー

      • 『レッド・ワン』『ロボット・ドリームズ』

        『レッド・ワン』『レッド・ワン』は、サンタが誘拐されてしまった? という設定のキッズ映画です。劇中、サンタは実在しており、北極の秘密の土地に住んでいます(『ブラック・パンサー』のワカンダのように、バリア的な何かで見えないようにしてあります)。サンタ(聖ニコラウス、通称ニック)が誘拐されるという一大事に、警護役のカラム(ドウェイン・ジョンソン)と、誘拐されたサンタの行方の手がかりを持っていそうなジャック(クリス・エヴァンス)が、協力しあってサンタ救出へ向かいます。かくして、クリ

        • みんなで大きな家に住もう

          家賃が払えなくなったらひとり暮らし最大の恐怖は、家賃が払えなくなることではないだろうか。大学を卒業し、親が仕送りをやめたその日から、私は長らく、家賃が払えずに住む場所を失う恐怖と隣り合わせの人生を送ってきた。仕事を辞めれば、みるみるうちに貯金は減っていく。やがて家賃を滞納し、家を追い出されて行き場を失う。あゝ無情。とはいえ、実家にだけは絶対に帰りたくないのである。中学のとき、不良のトモヒロ君にさんざん嫌がらせをされたし、とにかく田舎は絶対にイヤ。私はトモヒロ君のいない東京が大

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        記事

          君は本当に女性と交際したいのか

          【以下の質問に対する答えを、「そう思う」「そう思わない」のいずれかで考えながら読んでみてください】 女性と会話をしても楽しくない 他の男性には交際相手がいるのに、自分にいないのは不公平だと感じる 自分の申し出を女性に断られたとき、腹が立つ 交際はしたいが、そこに至るまでのプロセスが面倒でしかたない 時間をムダにしたくないので、すぐに性行為に持ち込みたい グラビアアイドルが「本当は水着になるのが嫌だった」などと言うのは、プロ意識に欠けていると思う 複数の交際相手が

          君は本当に女性と交際したいのか

          「家父長制」の定義

          「家父長制」とは家父長制(patriarchy)とは、男性による支配を目的とした社会制度や慣習、考え方を意味します。家父長制はまず何より「支配」を目的としています。もともとは、家族において父親が長となる仕組み、家族を支配して特権的な地位を占めるシステムを指していました。父親が家族に関する決定、判断を下し、母親や子どもがそれに従う。この仕組みを、社会全体に範囲を広げて置き換えれば、大統領や総理大臣、内閣閣僚などの要職を男性が独占している状態も家父長制的であるといえます。また首長

          「家父長制」の定義

          「男らしさ」の定義

          「(有害な)男らしさ」とは 支配的な立場であろうとする 主導権を握ろうとする 性行為に積極的である 競争を好み、勝ち負けにこだわる 対人関係において攻撃的(抑圧的、脅迫的)である 権力、富を得ることを第一の目的とする 感情を抑制する(喜怒哀楽のうち、怒り以外を表出しない) 同性愛を嫌悪する トランスジェンダー、中性的な人に対して敵意を向ける 女性を蔑視する 女性蔑視を、男性同士の絆を強めるための手段として使用する 男性に対して従順でない女性を罰しようと

          「男らしさ」の定義

          『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』と、使ってしまった禁断の切り札

          ※作品の内容や結末に触れています。 社会現象化した作品に決着をつける前作『ジョーカー』(2019)は、全世界で10億ドルを超える興行収入を記録した大ヒット作品である。劇中で描かれる鬱屈した男性像や、ホアキン・フェニックスの熱演によって社会現象化したが、同時に、主人公ジョーカーを真似た模倣犯が現実に犯罪を起こすなど、マイナス面も注目された話題作であった。こうした経緯を受けて作られた続編は、なんとミュージカルにして法廷劇。まるで映画作家みずからが、制御できないほどに過剰な影響力

          『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』と、使ってしまった禁断の切り札

          『シビル・ウォー アメリカ最後の日』と、地獄めぐりの旅

          重厚な画づくりで描くアメリカの分断『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(原題:CIVIL WAR)は、映画プロダクションA24最大の制作費をかけたとされる話題作です。予告編の時点で、かなり重厚な画づくりであると予想はつきましたが、実際に見てみると相当な迫力でした。まずはショットの強さ、画の力で観客を圧倒するタイプの作品だったと思います。米世論の分断をもっとも如実に感じさせる大統領選を間近に控え、非常にタイムリーな作品であったのではないでしょうか。分断を煽る政治家が支持される状

          『シビル・ウォー アメリカ最後の日』と、地獄めぐりの旅

          『Cloud クラウド』と、答え合わせのできない映画

          転売屋から読み解く日本社会(?)なにしろ変わった映画である。思いもよらない展開の連続で先が読めない。この作品が現代日本の空気をとらえているのはよくわかるし、劇中の登場人物やできごとが何らかの暗喩となっていることも予想できる。しかし、具体的に何のメタファーなのか、どういったテーマなのかと考えると、理解し切れない部分が残るのだ。映画を見ると、つい「答え合わせ」をしたくなる私のような人間を、そうかんたんに解釈させないぞと突き放すような部分が、『Cloud クラウド』にはある。そこが

          『Cloud クラウド』と、答え合わせのできない映画

          デヴィッド・M・バス『有害な男性のふるまい』(草思社)

          見知らぬ女性に声をかける男性先日、井の頭線に乗った際に、電車内で話している若い男女を見かけた。ふたりの会話が耳に入ってきたが、男性は、駅の近くで面識のない女性に声をかけ、どうにか連絡先を聞こうと、女性が乗った電車のなかまで着いてきてしまっていたことがわかった。男性は、女性のインスタを教えてもらおうと粘っていて、女性はひきつった笑顔でそれを断っていたが、男性はなかなかあきらめない。近くにいた私は、恐怖でいたたまれなくなった。とても見ていられない。「電車のなかまで着いてくる人って

          デヴィッド・M・バス『有害な男性のふるまい』(草思社)

          『ナミビアの砂漠』と、でたらめだが正しい怒り

          映画のフォーマットでしかできない表現映画らしい映画を見た、という気がした。映画のフォーマットでしかできない表現をしていると感じたし、せりふではなく画や音で伝わる場面が多いのもすばらしい。とはいえ劇的にストーリーが変化するわけではなく、主人公と恋人の関係性や、勤務先などの比較的地味な描写が続くのだが、最後までどうにも目が離せなかった。なぜこのように緊張感が持続するのだろうか。作品冒頭、最近ではまず見かけないスタンダードサイズの画面に驚き、複数の音声が同じボリュームで飛び込んでく

          『ナミビアの砂漠』と、でたらめだが正しい怒り

          manipulate を日本語でなんと言う?

          適切な訳語がない海外の映画を見ていて気がつくのは、会話のなかで manipulate(人を操る)や exploit(搾取する)といった単語がよく出てくることだ。今日、映画館で見た『ビートルジュース ビートルジュース』でも、高校生の登場人物がごく当たり前に使っていた。こうした言葉が出るたびに、日本と海外の差を感じてしまう。海外の文化圏では、他人を自分の思い通りに動かすために、物事を大げさに表現したり、脅したり、混乱させたりといった手段で操ろうとするのは倫理的に間違っているという

          manipulate を日本語でなんと言う?

          ベル・フックス『フェミニズムはみんなのもの 情熱の政治学』(エトセトラブックス)

          フェミニズムの初期衝動自信に満ちていて、堂々とした本だった。フェミニズムという思想の可能性を理解し、すべての人を幸福にする有意義な考え方だと確信している人でなければ書けない本だと思った。フェミニズムへの全幅の信頼がまぶしく輝いていて、読んでいて圧倒されてしまう。まだ十代であった著者がフェミニズムに衝撃を受け、自分の進んで行く方向を照らしてくれるものだと感じた、その興奮と初期衝動が伝わってくるようである。読みながら、私が高校時代にニュー・ウェイヴと出会い、この音楽ジャンルには自

          ベル・フックス『フェミニズムはみんなのもの 情熱の政治学』(エトセトラブックス)

          『ヒットマン』と、「男らしさ」を持て余した主人公

          グレン・パウエルの勢いリチャード・リンクレイター監督、グレン・パウエル主演のクライムコメディが『ヒットマン』です。『トップガン・マーヴェリック』(2022)以降ぐっと勢いが増し、一気に人気俳優の座に躍り出たグレン・パウエル。「彼でスター・ウォーズを撮ってほしい」「007にはチャラすぎるか」「ガイ・リッチーとは相性よさそうだぞ」など、キャスティング妄想がひろがるスター俳優になりました。本作も好調なようで、グレン・パウエル効果もあってか劇場はほぼ満員。本作は、監督と主演俳優の組み

          『ヒットマン』と、「男らしさ」を持て余した主人公

          『ラストマイル』と、令和の一億総プロレタリア時代

          ※こちらの記事は映画の内容に触れています。 当初の予想を裏切る強いテーマ性大ヒット中の話題作『ラストマイル』である。私は会社の同僚に勧められて見たのだが、この経緯からしていかにもヒット作らしいと思う。当初は、予告編で描かれていた「物流倉庫から出荷される貨物に、爆弾が仕掛けられていた」というミステリーじかけの展開から、わかりやすいエンタメ作品をイメージしていた。しかし実際に見てみると、より重要なモチーフとして、日本の劣悪な雇用形態や労働環境、過労死、低賃金労働、貧困など、シリ

          『ラストマイル』と、令和の一億総プロレタリア時代