2021年ベスト作品TOP10【ネタバレ有り】
こういう内容の記事は、年末に出すのが本来の筋かもしれないが『はぐれ刑事 純情派』を見て育ち『ファイトクラブ』によって、はぐれながら過激派となることを心に決めたので、この体たらくである。
ちゅーわけで、お正月真っただ中の今、2021年のベスト10映画を短く評してやっていこう、いや!殺っていこうと思います。
ちなみに、この記事の内容は前回の大晦日総まとめスペシャルのYoutube配信の内容とほぼ同じなので、より詳しい戯言はそちらをご覧ください。
動画にはワースト10作品も語っておりますので、そちらも見て頂ければ幸いです~!
(※動画では、各ベストとワースト作品の内容に即時に飛べるように、概要欄に目次を付けております)
そいじゃ、いきますか。
(※作品タイトルの後に書いてあるURLは、Youtubeでその作品を特集した回のリンクです)
2021年映画ベスト10
【ベスト10】『Mr.ノーバディ』
特集回 https://youtu.be/lVWEBxFNMAA
この映画、昨今の90年代リバイバル的な痛快娯楽アクションだと思われているし、それは半分間違いではないけど、本質は"正義を盾にした暴力"への批判である。
何度も言うが、この映画も舐めてる奴が殺人マシンでした系ジャンルの一つで間違いないが、昨今の『ジョン・ウィック』や『イコライザー』などとは一線を画す作品になっている。
それはどこか?
この映画は、正義の名のもとに発動される暴力の傲慢さと恐ろしさを描くことで、一連のガンアクション映画のカッコよさを批判している。
たとえば、主人公の家に現れたギャングを皆殺しにした様子を、その子供や家族にまじまじと見せる演出や、主人公の祖父の精神が古き良き白人至上主義的価値観(西部開拓時代や第二次世界大戦時など)の中に居続けたりと、痛快な娯楽としてのガンアクションとして、素直に描くとするならば省くべき歪な表現が多い。
いや!逆にその歪さ、暴力を伴うカッコよさへの批判、カウンターが映画全体にある。だから良い!
【ベスト9】『哀愁しんでれら』
特集回 https://youtu.be/Fal5BsnagIE
この映画における最大のテーマは、"理想が崩壊したとき、人間は独善的なまでに狂う"ということだ。
貧しくも慎ましく育った娘(土屋太鳳)が、偶然から金持ち男(田中圭)と出会い結婚する。
まさにシンデレラストーリーかと思われたが、前妻との間に出来た一人娘のわがまま、学校のイジメ問題、そして金持ち一家の一員としての振る舞いを期待され、その重圧に彼女はついに狂ってしまう。
これは、シンデレラストーリーのその後を描いた改変ものであると同時に、ついに手に入れた理想が、実はそれとはかけ離れた不幸な現実だったことから、物語はある大量虐殺に発展するという顛末である。
この映画では玉の輿に乗れた女性を主人公にしているが、これは男女に関係なくありうる話である。
昨今、電車の中やイベント開催中の街中で起こる無差別殺人を実行するような事件が多く発生しているように感じるが、誰しもが皆、最初からそうだったわけじゃない。
犯人を擁護する気はさらさらないが、彼らがどのような環境と経験を経て、その犯行に至るかは、考え、見つめていかなければならない気がする。
その犯行に至るまでの半生の中で、何かしらの夢や理想を抱き、そこからの決定的な転落と、その後の人生への底なしの絶望がセットになれば、人は簡単に何かしらの自死にしろ他者への暴力にしろ、決断を下すように感じてしまう。個人の絶望に対し、社会がどうあるべきかを問い、考える作品でもあった。
【ベスト8】『犬部!』
特集回 https://youtu.be/O4xs92kBmX4
ペットを飼っている人、飼いたい人、飼っていた人、一度でも動物を可愛いと感じたことのある全人類は必見の映画。
ただ単に可愛いだけでなく、我々の社会の中でペットという身近のように感じる存在が、いかに危うい社会を生き、またそれは同時に人間のエゴが作り出しているということを痛感する。
殺処分される動物への悲しみと同時に、それを行う保健所の職員の苦悩と絶望を描くが、それを経たうえで、一人の日本人として何ができるか、どう命を考えるのかを鋭くも、優しく問うてくる作品。
ここで書いている御託はいいので、早く日本人は観ろ!
【ベスト7】『ヤクザと家族』
【ベスト6】『すばらしき世界』
【7】特集回 https://youtu.be/IamYLI6OkvU
【6】特集回 https://youtu.be/knTKPp70dHE
この二作は、どちらも近しいテーマを扱っているので同時に語ります。
どちらも一般社会の中で、近づき難い、近づきたくない"ヤクザ"を考えるということが主題になった作品です。
日本は壊滅的な敗戦から、奇跡のような経済成長を遂げた国ですが、その敗戦後の荒廃の中でヤクザといわれる集団が、地域社会の治安維持から生活環境の再構築、インフラ整備まで貢献していた歴史がある。
それは戦後の混乱期に国家権力、主に警察が著しく機能しなかったことに機縁するが、高度経済成長期を迎えた社会でいつしか地域住民の味方から、権力抗争に明け暮れる無法集団へと変貌し、次第に世論はヤクザ組織を排除する運動が盛んになった。
そんな歴史を経た"ヤクザ"に世間のイメージは、義理と人情という美徳と、暴力と破滅という荒廃がセットである。
そんなヤクザ者の苦労と生き様を、時代と共に無様なほど美しく描いたのが『ヤクザと家族』であり、過去を悔いる賢明さと第二の人生を必死に生きようとする凛々しさと、哀しみを描いたのが『すばらしき世界』である。
是非ともこの二作を、あなたの中にあるヤクザ像、その偏見と愛情とをセットにして、見比べてみてはいかがでしょう?
【ベスト5】『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』
特集回 https://youtu.be/-Wo20vruLGQ
こんなアクション邦画が見たかった!
前作は主演の岡田准一氏のアクションスキルと原作の良さを微塵も出し切れていない、CGとスローモーションで構成された駄映画でしたが、二作目は傑作です!サイコーです!
オープニングのカーアクションからアドレナリンドバドバでキ◯玉が縮こまるアクションシーン、今作の悪役である堤真一扮する宇津帆(うつぼ)の純粋な愛の渇望と狂気への疾走、物語の構成、撮影の妙、エスカレートする怒涛の肉体アクションと、決して爽快ではない哀愁漂うクライマックス。
ドラマとして、アクションとして、エンタメとして、世界に誇れるアクション日本映画、爆誕!
【ベスト4】『ベイビーわるきゅーれ』
特集回 https://youtu.be/jTziTQVYV5g
こんなアクション邦画が見たかった!その2!
日本のインディーズ映画(というと失礼かもしれないが)の規模で、ここまでの傑作ができることに純粋に感動している。
ベスト5『ファブル2』は各スポンサーからの潤沢な予算やスタッフの技術と規模もあるが、それより大幅に小規模であろうこの映画がここまで観客を沸かせ、SNSを通じて全国で大ヒットしている。
この映画もある意味『ファブル』同様に、殺しを生業にする者がその素性とスキルを隠し、日常生活のなかでひっそりと暮らすというまんま同じ設定であるにも関わらず、主人公を二人の10代の女子フリーターにしてしまったことが秀逸でもある。
ファブルの設定をJK上がりのティーンズ女子二人にするだけで大発明なのに、さらに本物のガンアクション、格闘、コメディ、そして映画に対する製作者全員の愛情が、ガッチガチに詰め込まれた大傑作!
観ろ!観ろ!観ろーーーーーッ!
【ベスト3】『最後の決闘裁判』
特集回 https://youtu.be/0cloAA6ycX4
リドリー・スコットがこの映画で言い放ったのは「女性を覆う男性権威的な社会って、14世紀から全ッッッ然変わってねーじゃんよ!」である。
その語り口は、ビックリするぐらい黒澤明の『羅生門』であり、世紀を超えて黒澤的ストーリーテリングは色褪せないことを証明したわけだが、この手法でリドスコが描いたのは、歴史の中でいかに男たちは女性を"産む機械"あるいは、エゴイズムや自己愛のはけ口としてしか扱ってこなかったか?という真実である。
そのような理不尽な世の中で、子を宿し、産めるのは女性のみが成せる偉業であり、そこから生まれる愛情こそが、我々人類の歴史を紡いできたという事実と、そうであってもこの社会を構成する要素の中にある"男性的な価値観"がゆくゆくはその女性と、彼女が産み落とした命さえも飲み込んでしまうという終わらない不条理(あくまで映画の舞台14世紀ヨーロッパの世界の中で)である。
この14世紀フランスで起きた決闘裁判を思考することによって、男共は身の回りにいる女性に何ができるか考えるキッカケにするべきである!
【ベスト2】『KCIA 南山の部長たち』
特集回 https://youtu.be/Cp1zoamCR2Q
1979年10月26日の夜、韓国中央情報部(KCIA)の部長キム・ジェギュは宴会の席で目の前にいた当時の大統領パク・チョンヒを射殺した。
この韓国現代史の大事件を、再び映画化した今作だが、出演者全員の演技合戦が素晴らしい!
暗殺実行犯キム・ジェギュを演じたイ・ビョンホンを中心に、パク・チョンヒ大統領を演じたイ・ソンミン、韓国を捨ててアメリカへ亡命した前KCIA部長を演じたクァク・ドウォン、右を見ても左を見ても、眉間にしわを寄せたオッサンしかいない!(ひとり女性がおりましたが……)
なのに、彼らの真っ黒にどすグロい腹の探り合いと、絶対的な権力を持つ大統領からの傷口に塩を塗った挙句、さらに胃に穴が開きそうな痛烈な嫌味を、平身低頭で無理やり飲み込むしかない側近たちの苦悩!絶望!怒り!の嵐に目が離せない!
「このままでは国家そのものが危うい」と、みんな思っているのに、誰かが"その一手"を打つと、たちまち反逆者に吊るし仕上げ!
命を懸けたダチョウ倶楽部の「俺も!」「俺も!「じゃあ俺も!」「どーぞ!どーぞ!」合戦の結末は如何にッッッッッ!!!!
【ベスト1】『スワロウ』
特集回 https://youtu.be/4Wbg1-ahx1U
男は全員観ろ!今すぐ観ろ!『最後の決闘裁判』とセットで観ろ!
ここまで完璧に、現代を生きる女性の不条理を描いた作品はない!
リドスコの『最後の決闘裁判』は女性を覆う男性社会の不条理を描いていましたが、この映画はそれ以上に女性が女性であることの幸せと、一人の人間としての幸せを同時に考えさせる映画です。
女性が女性であることの幸せとは、いったい何でしょうか?
それは一般的に(少し前時代的ですが)いえば、愛する人と結婚し、子を産み、育てることかもしれません。
では、人間としての幸せとは何でしょう?
自分の夢を叶えること?自分の信念や正義を信じ貫くこと?愛する他者の為に生きること?働くこと?正しく生きること?善く生きること?
人間として幸せになるということを考え出すと一気に、その幅が広がります、それは社会において定義されるようなことでは無く、至極個人的な動機と願望によって達成される問題です。
さて、上に書いたように女性が女性としての幸せを望むのではなく、人間として、一個人の幸せを願ったとき、そこに結婚や出産というかつての女性的な幸福がなかったとして、誰が彼女を責めることができるでしょう?
その権利は誰が持っていて、誰が行使できるのでしょう?
この映画には、前時代的な"女性の幸せ"から解き放され、真に人間として自由になる本当に美しい女性が描かれています。
彼女の戦いと決断、そして勇姿を心に焼き付けて下さい!
野郎は絶対に観ろよ!リドスコの『最後の決闘裁判』とセットで絶対に観ろよー!!!!!!!
あとがき&ワースト10作品リスト
長くなりましたが、最後まで呼んでくれた皆様、本当にありがとうございます!大急ぎでまとめた2021年ベスト10ですので、いささか乱文ではございますが大感謝でございます!
Youtubeの動画では、これに付け加えワースト作品10もお喋りしていますので、ご興味ある方は覗いてくださると幸いです!
ちなみにワーストの10作品はコチラ
【10】『AVA / エヴァ』
【9】『ヴェノム・カーネイジ』
【8】『藁にもすがる獣たち』
【7】『樹海村』
【6】『あの頃。』
【5】『ディア・エヴァン・ハンセン』
【4】『100日間生きたワニ』
【3】『花束みたいな恋をした』
【2】『太陽は動かない』
【1】『竜とそばかすの姫』
最後になりましたが、皆さん明けましておめでとうございます!
今年もどうぞよろしくお願い致します!
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