相手の言葉を下敷きにして、軽口を叩いたり笑いを誘ったりする ~映画「Mr.ノーバディ」の場合
◆概要
【相手の言葉を下敷きにして、軽口を叩いたり笑いを誘ったりする】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「Mr.ノーバディ」
▶1
本作の主要キャラの1人・デイビッド(80歳頃の男性)。
彼は、FBIの捜査官だった。
しかしそれはもう昔のこと。いまは、とある老人ホームで平穏な毎日をすごしている。
いろいろあってある日、
・Step1:ハッチ(デイビッドの息子)がロシア系マフィアとトラブルになった時のことだ。
・Step2:数十人のマフィアが銃を持ち、ハッチに迫った。
嗚呼、絶体絶命!
・Step3:と、そこにたくさんのショットガンを持ったデイビッドが登場!
・Step4:彼はショットガンを連発し、マフィアと戦い始めた。
・Step5:ハッチは驚く。オッ、オヤジ!?
・Step6:ハリーは半ば呆れて「オヤジ、随分とたくさんショットガンを持ってきたな(You brought a lot of shotguns.)」。
・Step7:するとデイビッドは「ああ、お前は随分とたくさんロシア人を連れてきたな(Well, you brought a lot of Russians.)」。
▶2
ご注目いただきたいのは、「ああ、お前は随分とたくさんロシア人を連れてきたな」というデイビッドのセリフである。
このセリフは必要不可欠なものではない。これをカットして、すぐさま「デイビッド&ハッチ親子 v.s ロシア系マフィア」のバトルになだれ込んでも問題ないわけだが――しかしそれでは面白みを欠く。
そこで【相手の言葉を下敷きにして、軽口を叩いたり笑いを誘ったりする】という技法の出番だ。
ハリーのセリフ「オヤジ、随分とたくさんショットガンを持ってきたな」を下敷きに、「ああ、お前は随分とたくさんロシア人を連れてきたな」という軽口を叩いたことで、愉快なシーンになったといえるだろう。
また、銃撃戦の最中に軽口を叩いたことでデイビッドの強者感が強調され、「こりゃただ者じゃないぞ!」「どんな戦いっぷりを見せてくれるのだろうか……楽しみだ!」とワクワクした鑑賞者は少なくないと思う。
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