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アポロが超泣いたお気に入り🍀

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超泣けるやつをここへ入れとこ〜っと♬
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#小説

【ピリカ文庫】東京のおじさん

【ピリカ文庫】東京のおじさん

【Osada Akane's Case  ー 長田茜の場合】
こんな人生しか生きられないなら、
もう終わりにしていい。

幼い頃は分からなかった。
いや、疑問すら抱かなかった。
親の言う通りにしていたら、誉めてくれた。
欲しいものは、何でも買ってくれた。

やりなさいと言われたことは、全部やってきた。
少しずつ、本当に少しずつ。
水底に澱が溜まっていくように。
気が付いたら、私の心の中の疑問が大き

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病弱ちゃん〜オマージュ〜

病弱ちゃん〜オマージュ〜

規則正しい生活や栄養価の高い食事。
しっかり運動すれば病弱から解放されると、誰が言ったのだろう。

デタラメな生活をしている人たちも元気なのに、
私ときたら何をやっても病気になる。
早寝早起きの生活は、クラスのみんなが観ているテレビの話題について行けず心が沈んでしまう。

栄養価の高い食事は胃もたれやお腹を下してしまい、太れない。

「あかりに水泳を習わせよう」
パパが言い、ママも賛成した。

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わたしの可愛いキンクマくん

わたしの可愛いキンクマくん

推しごと、推している物事。

現在はわたしが設定したショートの主人公、
「キンクマ」を心の中で推している。

キンクマがかわいくて仕方ない。
ネズミの目線、知能を持ったハムスターなら、
何を考え、行動するだろう。

わたしはキンクマへ役割を持たせた。
「俯瞰している」「線対称の線」

実験的にキンクマを当事者にしてみたが、
物語が入り組んでしまい、わたしは消化不良のまま
自動投稿へセットしている。

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【小説】革命の日

【小説】革命の日

 昨夜遅くまで降り続いていた雨は、夜明け前に止んだようだ。塵や埃が洗い流されたみたいな、すっきりとした青空が広がっている。グランドの水はけも、思ったよりは状態が良さそうだ。

 小学校最後の運動会だから、と、担任の石川先生が熱心に誘ってくれて、休みがちだった正樹も参加する気になったようだった。
 正樹がはじめて「学校に行きたくない」と言い出したのは、六年生に進級してすぐのことだった。

「行きたく

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小説: ペトリコールの共鳴 ㊱

小説: ペトリコールの共鳴 ㊱

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最終話 ペトリコールの共鳴 ⑤
 都心へ向かう帰りの電車は土曜日で空いていた。
膝に乗せたリュックのポケットはメッシュ素材になっており、キンクマが熟睡する姿が見える。

 ペットショップでひとりぼっちだったキンクマと
妻に依存していた俺は、人生において最悪な状況や事件を一緒に乗り越えた家族だ。

 キンクマはキンクマで、人間との生活は言語とネッ

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名もなき夜に【#夜行バスに乗って】

名もなき夜に【#夜行バスに乗って】

帰る、ということは
帰る場所がそこにあるということだ。

帰る場所には待っている人がいる。
それで初めてそこがホームとなる。

僕の帰る場所と呼べるところは、
もうどこにもない。

東京の部屋はただそこに居を構えているだけで、帰る場所という言葉には値しない。僕の帰る場所はずっと、生まれた時から住んでいたあの家しかなかった。

だけど、父を追うように安らかに空へ還った母の葬式を終え、実家を処分して荷

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短編: 最期の言葉 最初の別れ

短編: 最期の言葉 最初の別れ

スーパーの軒先ではカーネーションが半額で売られ
母の日が過ぎたのを曜日以外で知る。
今年はカーネーションすら買わなかった。

うちの母は去年、ちょうど今の時期に他界した。
母の日を祝った数日後だった。
思ったより早く、思ったより静かに、思ったより呆気なく母は私の元から居なくなり、そして今日が来る。

母からの最期は
「凛は本当にかわいい」
瞼を閉じたまま、かろうじて聞こえる声は
『さようなら』でも

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【小説】手紙⑨

【小説】手紙⑨

 前略 お元気ですか。
 すっかりご無沙汰してしまいました。
 早いもので、加奈子さんが亡くなってから、もうすぐ一年が過ぎようとしています。私たち家族の生活も、少しずつ日常を取り戻し、加奈子さんのいない日々に、ゆっくりゆっくり慣れていっているところです。

 今朝、遺品を整理していた母が
「懐かしいものが出てきたのよ」
 と、古いスケッチブックを見せてくれました。そっと開いてみると、どのページにも

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それでも私が小説を書く理由

それでも私が小説を書く理由

私は小説家に向いていない。

そもそも小説家に向いている人ってどんな人だろう。
文章を書くのが上手い人?
小説が大好きで何万冊も読んでいる人?
創作のアイデアが次から次へと浮かんでくる人?
オリジナリティ溢れる表現ができる人?
人を楽しませるのが好きな人?

そんなのよくわからないけど、
終わりまで書く、それができない人は向いていない。
というのは、間違いないだろうな。

そういう意味で言っても、

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ねねこグラフィカルについて語りたいのだよ

ねねこグラフィカルについて語りたいのだよ

今日は有給休暇を取得した。
「ねねこグラフィカル」を読むためだ。

最初に書いておこう。太陽氏(アポロン)は大切なnote仲間であり、リスペクトしているのは確かだが、この記事は友情による宣伝ではない。才気溢るるクリエイターによる、渾身の娯楽小説の面白さを伝えたい。ただその思いで書いている。ま、noteでオイラが宣伝したところで、劇的に読者が増えるわけがないのは、太陽氏が一番分かっているだろう。

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読書感想文『ねねこグラフィカル』を読んで(939字)

読書感想文『ねねこグラフィカル』を読んで(939字)

アルファポリスというサイトで、
noter でもある アポロ さんが
小説を発表しました。

リンク先

そちらでも感想を書かせていただいたの
ですけれども、
ネタバレしない感じで、私なりの感想を
ここ note でも書きたいと思います。

最近、読書を再開しつつある私にとって、
この作品『ねねこグラフィカル』は、
うってつけの小説でした。

自分の気持ちに率直に従って書かれた、
とてもクリエイテ

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絵描きの掌編 胡桃シリーズ 第二話 〜向日葵の心のままに〜

絵描きの掌編 胡桃シリーズ 第二話 〜向日葵の心のままに〜

向日葵の心のままに

 今日は僕たちの結婚式である。
 この春、二年あまり一緒に生活をした彼女にプロポーズして、今日という日を迎えたのだ。残暑の厳しい八月にしたのは、夏と向日葵が大好きな彼女が望んだからだ。まあ、実際式場が空いていたこともあるが。
 温泉リゾート内設えの瀟洒なチャペル。着慣れない白いタキシードにもぞもぞしながら、我が新婦を待つのである。
 定番のオルガンによるメンデルスゾーンの結

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ただ、純粋に創作したい

ただ、純粋に創作したい

実際のところ
実生活にかける時間がより増えて
たまにnoteへ入ると、妙な倦怠感がくる

以前は罪悪感があった、スキ制限にかかると
今は、開放感がある(←窓を開けた感じ)

今のわたしは、文章に手ぐせが出て
直そうにも、直しようがなく
全ては読み手がどう思うか、なので
わたしが個人攻撃をしていると思うなら
自由にわたしを磔にしなさいと、諦めた

様々な思いを巡らせながら
他の素晴らしい創作を拝見す

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春霖が穴をくだってゆく

春霖が穴をくだってゆく

春の長雨を「春霖(しゅんりん)」と呼ぶ

関東が強風続きの日
広島は雨が降りしきった

特に理由がないのだが、春霖になると
無性に聴きたい曲があり
透明な線が降りてくるのを、冬との別れに感じる

季節の変わり目は、雨がカーテンをひく

心胆へは敏感に重さを得てゆく
寂しさや悲しさが重力になる
これといった憂鬱がないのに
表と裏のあいだには、底が見えない穴が開いて

埋めようとせず、春霖が穴を降って

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