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#エッセイ
【詩】百億光年レター
138億年前に生まれた自我が、意志を持って拡大した。音のない爆発のあと宇宙は晴れ上がった。爆発による膨張で零下270度まで冷えた宇宙の種。ゆらぎが深い夜を抱きしめて、結合して溶け合い成長した。そこには他者を分かつふちや輪郭のようなものはなかった。自我は目に見えず質量は存在する暗い物質を主食として、身ひとつを作り上げていった。
自我は、引き延ばされた夢を見ていた。彼女が思い描いたアイデアは、百億光
【詩】あんてん・めーてん
幕あい
場面が切り替わる
ぼくは暗がりで 目を慣らす
板付きでじっと待つ
息をひそめた静けさ
ひんやりとした空気が
高ぶるぼくを
落ちつかせてくれる
舞台の上で踊るとき
精霊が宿ることを知っている
大むかしの人とつながっている
板のにおい
かびのにおい
稽古でながした
あせと血のにおい
ぼくは目を閉じて祈る
まぶたの暗さの方を信頼する
夕暮れに染まる海を想う
舞台袖にはけた海のセットの水面に
【詩】かなしきタイムトラベラー
夢のなかでしか 本音がいえない
かなしき タイムトラベラー
じぶんの生を 賭してきた その反動で
どの時代がじぶんのルーツか 忘れてしまった
きのうと きょうと あしたが分断される
裂ける時代をつなぎ合わせ
危機を救ってきた
でも だれの記憶にも残っていない
歴史と歴史のあいだの やみにすいこまれて
それが 美徳とされて
知らないあいだに ひび割れた時空のはざまに
じぶんを殺されてしまった
かなし