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2024年8月の記事一覧
『発達性トラウマ「生きづらさ」の正体(著:みき いちたろう』〜心の病、多様性の時代
【内容】
トラウマによって発達障害に近い症状が出るということを、心理学の見地から紹介した解説書。
【感想】
近年ブームとなったトラウマの存在に対して否定的な見解を持つアドラー心理学とは対照的に、この本はトラウマの存在を認めることで、さまざまな社会問題を捉え直そうとしています。近年、発達障害や人格障害と診断される人々が増え続けていますが、その中には極度のストレスからくるPTSDが影響しているケース
『フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔(著:高橋昌一郎) 〜人類史に残る天才マッドサイエンティスト(?)の生涯
【内容】
コンピューターの理論をはじめとして、量子力学、ゲーム理論など、あらゆる分野の一流の研究をしたフォン・ノイマンの業績と生涯を追った本。
【感想】
『博士の異常な愛情』(スタンリー・キューブリック監督)に登場するマッドサイエンティストのキャラクターは、フォン・ノイマンをモデルにしたとされています。
その天才性から「火星人」とまで呼ばれたフォン・ノイマンが、いかに全人類に多大な影響を与えたか
『天才論 立川談志の凄み(著:立川談慶)』〜談志という名のカリスマ。影響力と人間性、そして個人的な違和感
【内容】
立川談志の弟子、立川談慶の落語家になるまでと、間近で談志を見続けた弟子から見た談志論。
【感想】
立川談志について書かれた本は、これまでに何度も読んできました。立川談志という落語家は、後世に大きな影響を与えた人物であることは間違いありません。その点では、彼は非常に偉大な存在なのでしょう。
しかし、彼が生前にテレビで語っていた政治や社会情勢についての話は、どこかで聞いたことがあるような内
『invert 城塚翡翠倒叙集』(著:相沢沙呼)」〜推理小説という枠組み自体を楽しむキャラクター小説
※ネタバレします。
【内容】
霊媒することが出来る(?)探偵の若い女性探偵、翡翠によるシリーズものの第2作。
【感想】
第一作では、清純派美人霊媒探偵という設定の主人公・翡翠が、ラストでS気質の天才奇術師という意外な一面を見せ、読者を驚かせました。この衝撃的などんでん返しを踏まえ、続編ではより複雑な仕掛けを凝らした物語が展開されてます。
翡翠の設定が一作目途中までの設定であれば、筆者としてもそ
『能面検事(著:中山七里)』 一度走り出した『真実』を、誰が止められるのか?
【内容】
決して表情を変えることのないやり手の検事の不破の活躍を描いた小説。
※ちょっとネタバレします。
【感想】
この作品は、複雑な法曹界の事件を若手弁護士・美晴の視点を通して、非常にわかりやすく描き出しています。特に、ベテラン刑事・不破の魅力が、美晴の新鮮な視点と対比されることで際立ち、読者を物語に引き込む力があります。
意外な結末や警察組織の闇を暴く展開には驚かされましたが、その一
『medium 霊媒探偵城塚翡翠(著:相沢沙呼)」
【内容】
売れっ子推理作家の香月が、美人霊媒師の翡翠による霊媒能力によって事件を解決する推理小説。
※思いっきりネタバレします。
【感想】
気持ちいい裏切りの爽快感を楽しむエンタメ作品でした。
白人系の血を引く人形のような美少女と、人気の高いイケメン小説家、そして死者の霊媒というオカルト要素。これらの要素を、リアリティのある霊視の設定と描写で巧みに結びつけ、嘘っぽくならない範囲でドラマを作り
『なぜあなたの話は響かないのか(著:影山洋介)』〜デジタル時代に必要な、新しいコミュニケーションのルールとは?
【内容】
次世代のコミュニケーション術に関する本。
【感想】
コミュニケーションの意味が時代と共にどのように変化してきたかを説明し、その変化に適応するためにはどうすればよいのかを、生き方の視点から再考するというビジネス書的な内容でした。
具体的には、かつては対面でのやり取りが中心だったコミュニケーションが、技術の進化に伴いデジタル化し、リモートワークやSNSを通じたやり取りが一般化する中で、コミ
『伝えることから始めよう』(著:髙田明)〜言葉のジャパネット
【内容】
通販の会社であるジャパネットの元社長である髙田明による自叙伝。
【感想】
髙田氏の著書は、氏の熱量あふれる語り口がそのまま文字になったような一冊でした。特に、分割払い手数料無料のサービスをジャパネットが初めて導入したことや、経営が苦しかった時期に東京に収録スタジオを開設したといった裏話は興味深かったです。氏の言葉を通して、彼のスピード感、決断力、そして顧客への深い洞察力を感じることがで
『フィンランドの覚悟』(著:村上政俊)〜ムーミンの国の安全保障
【内容】
ロシアによるウクライナ侵略以降のフィンランドを、安全保障という面から捉え直した本。
【感想】
フィンランドといえば、ムーミンの作者トーベ・ヤンソンの生まれ育った国です。そのムーミンの最初期の一作である『ムーミン谷の彗星』は、実は米ソ冷戦下の核戦争を暗喩していたことをご存じでしょうか。
今回紹介する本を読んで、ムーミン谷の世界観は、当時のフィンランドが抱えていたソ連に対する潜在的な不安
『プレゼンの極意はマンガに学べ』(著:三田紀房)〜プレゼンのノウハウ本というエンタメ
【内容】
『ドラゴン桜』などのヒットマンガの作者が、その手法を開陳したノウハウ本。
【感想】
様々なヒット作を生み出してきた著者の言葉は、どれもが鋭く、心に響きました。
「連載の第1作目は、一世一代のプレゼンテーションだ」という言葉は、特に印象的です。
漫画家という仕事が、常に新しい挑戦とプレゼンテーションの繰り返しであるかのように感じられるなあと…
また、「全ての漫画は個人商店、漫画雑誌はシ
『伝わるのは1行。(著:田口まこ)』〜コピーライターの言葉のノウハウ
【内容】
コピーライターが、その経験を元に伝えることのノウハウや考え方をまとめた本。
【感想】
近年、SNSの普及により、短く簡潔な表現が求められる時代になりました。そんな中、この本は、その状況を踏まえて、より効果的な表現方法について深く掘り下げています。
特に印象的だったのは、あるCMクリエイターが、企画をたった一行で説明していたというエピソードです。タイトルだけで内容を理解させることの重要性
『なぜか惹かれる言葉』(著:能勢邦子)〜編集者が教える『言葉』の作り方
【内容】
元マガジンハウス編集者が教える、記事企画とタイトル作成のノウハウ。
【感想】
それほど期待せずに読み始めたのですが、大手出版社で活躍されていた著者ならではの経験談は、非常に興味深く、多くの学びがありました。特に、業界の裏側や仕事の具体的なノウハウなどは、他の本ではなかなか読めない貴重な内容だったと思います。
とはいえ、本書が2021年刊行ということもあり、一部の情報はすでに時代が変わっ
『キリンを作った男(著:永井隆)』〜読後感は少しほろ苦い、キリン『一番絞り』を作った人物のノンフィクション
【内容】
キリンビールの『一番搾り』、『淡麗』、『氷結』などの商品開発に携わった前田仁のノンフィクション。
【感想】
『岩崎弥太郎と三菱四代』という三菱財閥についての本を読み、三菱系列のキリンビールはどうだったかということが気になり、手に取ってみました。
が、タイトルからの印象と違い、キリンビールの創業関係の本ではなく、キリンを商品開発と経営から再生された前田仁に焦点を当てたノンフィクションでし