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『プライベートバンガー(著:清武英利)』〜富裕層の知られざる実態ーーシンガポール移住の現実
【内容】
シンガポールで、富裕層向けの資産形成をするプライベートバンガー杉山の活躍を描くノンフィクション。
※少しネタバレします。
【感想】
年の半分以上を海外で過ごし、それを5年間継続すると、日本による相続税がかからなくなる。(可能性が高いということらしい…)
そうした富裕層の優遇策を推進する国として知られるオフショア地域や、タックスヘイブンであるシンガポールがあります。
この本では、野村證
『婚活マエストロ(著:宮島未奈)』〜婚活産業×お仕事小説――『成瀬は天下を取りに行く』作者の新境地
※少しネタバレします。
【内容】
ワーキングプアのwebライターの40歳の猪名川健人は、婚活会社の仕事を依頼される。そこで出会った婚活会社社員『婚活マエストロ』の鏡原奈緒子との出会いによって、それまで閉塞感抱えて生きてきた健人の人生が動き出す。
【感想】
『成瀬は天下を取りに行く』の作者が「婚活の小説家」をテーマにした作品を書くと知り、主人公は女性だと思い込んでいました。しかし、実際には男性が
『今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる(著:畑中章弘)』〜フィールドワークで見る人間社会──宮本常一と日本の民俗
【内容】
庶民からの視点で日本の歴史を捉えた民俗学者である宮本常一の評伝。
【感想】
「姥捨を残酷とは思わなかった」
深沢七郎の小説『楢山節考』が世間に広まり、「姥捨」(年老いた老人を山に置き去りにする風習)が知られるようになった際、民俗学者の宮本常一は当時の対談の中でこう語ったそうです。
現代を生きる私のような人間にとっては驚き、あるいはショックを受けるような言葉ですが、「姥捨」が日常の一部だ
『灰色のピーターパン 池袋ウエストゲートパークVI(著:石田衣良)』〜盗撮小学生から無認可在留外国人強制送還問題まで、社会派人情エンタメ小説シリーズ
【内容】
池袋西口の果物屋の息子のマコトは、“池袋のトラブルシューター”。依頼された難事件を次々と解決していく。
石田衣良の人気短編小説集シリーズ『池袋ウエストゲートパーク』のシリーズ第6作目。
※ネタバレします。
【感想】
今回は、盗撮動画の販売、無認可保育園、シングルマザーの子育て、在留外国人の強制送還、暴力団新法といった、当時のタイムリーな社会問題を題材にしていました。
相変わらず、時事
『反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパークV(著:石田衣良)』〜池袋発、社会問題行き。作家と主人公マコトが歩む成長の物語
※ネタバレします。
【内容】
池袋西口の果物屋の息子のマコトは、“池袋のトラブルシューター”。依頼された難事件を次々と解決していく。
石田衣良の人気短編小説集シリーズ『池袋ウエストゲートパーク』の水商売のスカウトマン、地面師、中国の過酷な労働問題、自殺系サイトを題材として扱ったシリーズ第5作目。
【感想】
時事や社会問題を積極的に取り入れ、それを池袋周辺の事件として物語に落とし込むスタイルは、
『世界史の中の戦国大名(著:鹿毛敏夫)』〜新しい研究に基づいた新しい戦国大名
【内容】
近年の研究成果を反映させた世界史の中の戦国大名と戦国史について述べた本。
【感想】
戦国大名の中で、ヨーロッパで最も多く絵に描かれているのは、織田信長や豊臣秀吉、徳川家康ではなく、キリシタン大名でもない大友義鎮だというのです。
また、鉄砲の伝来についても驚きの事実がありました。種子島に鉄砲が渡来する以前に、さまざまな場所にさまざまな種類の銃がすでに渡っていたことを、この本で初めて知りま
『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち(著者:レジー)』〜「ファスト教養」の裏側を知る:自己責任論と現代の教養論
【内容】
手早く解説本やYouTubeで教養を得ようという昨今の時流の現状とその分析を語った本。
※ネタバレ(?)します。
【感想】
耳が痛くなるような本でした。
というのも、この本を手に取ったきっかけが、YouTubeでこの本の編集者の話を見たことだったからです。
その編集者は、三宅香帆さんの著書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の編集にも携わっている方でした。この二つの本には、「そも
『世界のニュースを日本人は何も知らない2(著:谷本真由美)』〜コロナ禍からわずか4年、変貌する日本と世界
【内容】
コロナ禍以降の世界事情を、日本人があまり触れることのない世界のニュースを紹介した2020年に出版
コロナ禍を経て海外から日本への観光客が押し寄せているという話など、興味深く読みました。
この本は、短い文章でわかりやすく世界のニュースを要領良くまとめており、気分転換にパラパラと読むのに最適でした。
2020年のコロナ禍に発売された本ということもあり、当時の社会的混乱について書かれているので
『電子の星 池袋ウエストゲートパークⅣ(著:石田衣良)』〜「池袋ラーメン戦争」から20年──長期に続くシリーズもの小説分析
【内容】
池袋西口の果物屋の息子のマコトは、“池袋のトラブルシューター”。依頼された難事件を次々と解決していく。
石田衣良の人気短編小説集シリーズ『池袋ウエストゲートパーク』の第4作目。
※ネタバレします。
【感想】
この短編小説集の冒頭作品は、池袋東口近辺の「ラーメン戦争」を題材とした物語でした。シリーズ全体が時代を象徴する社会風俗を巧みに掬い取り、きっちりと物語としてまとめている点が特徴で
『世界のニュースを日本人は何も知らない(著: 谷本真由美)』〜知られざる海外事情ーー日本では語られない真実
【内容】
日本人は世界のニュースを知らなすぎるという問題意識をもとに、世界情勢やニュースを解説する。
【感想】
海外の知られざる一面を知ることができ、興味深く読みました。日本のメディアではあまり取り上げられないような、海外のニュースや社会情勢について深く知ることができ、大変参考になりました。著者の経歴や活動については、賛否両論があるようです。本書の内容を参考にするときには、その点を踏まえて、客観
『駆け込み訴え(著:太宰治)』〜ユダの告白に潜む太宰治の自意識過剰――自意識という名の終わらない十字架
※ネタバレします。
【内容】
イエス・キリストについて語るユダの一人称短編小説。
【感想】
イエス・キリストを「殺されたがって、うずうずしていやがる」と、一人語りをする男。銀貨30枚で神の子を売った男として、様々な汚名を帯びたユダという名のその男の独白を、太宰治は自らの煮えたぎる自意識を吐き出すようにして書いた作品でした。
彼は作中、イエスを「気取り屋の坊ちゃん」とこき下ろし、弱くて、気取り
『「これから何が起こるのか」を知るための教養 SF超入門(著:冬木糸一)』〜SF好きが未来を作るーービジネスと空想の交差点
【内容】
これからの社会を見ていく指針として、未来社会を描いたSF作品をダイジェクト的に紹介する。
【感想】
テスラ創業者のイーロン・マスクや、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグなど、IT業界の成功者たちは皆SF小説の愛読者だった。
最近そんな話をよく耳にするようになりました。
こうしたテック業界のリーダーたちは、未来社会を想像する助けとしてSFを活用し、それが直接・間接的にビジネス
『骨音―池袋ウエストゲートパーク3(著:石田衣良)』〜骨音が響く、狂気とリアリティの交錯点
【内容】
池袋西口の果物屋の息子のマコトは、“池袋のトラブルシューター”。依頼された難事件を次々と解決していく。
石田衣良の人気小説シリーズ『池袋ウエストゲートパーク』の第3作目。
※ネタバレします。
【感想】
表題作となっている冒頭の短編は、「ホームレス」という、誰もが一度は耳にしたことがあるものの、実際にはよく知らない世界を扱っています。その一方で、インディーズ・バンドという華やかな世界を
『機嫌のデザイン(著:秋田道夫)』〜「穏やかなデザイン」に秘められた力ーー名言集から見える人生の蓄積
【内容】
プロダクトデザイナーでXで人気の著者に対してインタビューしたものをまとめた本。
【感想】
「既に飽きられているものは、飽きられない」
「ロングライフに耐えられるものは、穏やかなデザイン」
こうしたプロダクトデザイナーの視点から生まれた名言をX(旧Twitter)で発信したところ、バズったことで注目され、その言葉をまとめた名言集が出版されました。さらに今回、その名言を掘り下げたインタビュ