『invert 城塚翡翠倒叙集』(著:相沢沙呼)」〜推理小説という枠組み自体を楽しむキャラクター小説
※ネタバレします。
【内容】
霊媒することが出来る(?)探偵の若い女性探偵、翡翠によるシリーズものの第2作。
【感想】
第一作では、清純派美人霊媒探偵という設定の主人公・翡翠が、ラストでS気質の天才奇術師という意外な一面を見せ、読者を驚かせました。この衝撃的などんでん返しを踏まえ、続編ではより複雑な仕掛けを凝らした物語が展開されてます。
翡翠の設定が一作目途中までの設定であれば、筆者としてもそこまで苦労せずに作品を量産し、シリーズ化も容易だったでしょう。
しかし、もう後戻りできない展開で、物凄くハードルの上がった状態から、続編を書かないといけなくなってしまった。
当然、前作を読んだ読者も、一度裏切られた経験から、続編ではどのような展開が待ち受けているのか、ある種の「怖いもの見たさ」を抱きながらページをめくることは大暫定となっています。
そんな中で本作でも、最後に予想外の結末が用意され、読者を再び楽しませてくれます。物語の構成やキャラクター造形は巧みで感心しますが、一作目の衝撃的などんでん返しと比較すると、どうしても物足りなさを感じてしまうのは否めません。
本作では、主人公が最初から事件の真相を把握しているという、いわば「刑事コロンボ」型の物語構造を採用することで、新たな面白さを生み出しています。推理小説でありながら、ジャンルを転換することで、作品に深みを与えていると言えるでしょう。
本作は、読者に様々な思考を促す、非常に興味深い作品でした。
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