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クラシック音楽歳時期 2021-2024

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毎日聴いたり演奏したクラシック音楽のためのノート。どんな音楽に触れて思い書いたかを思い出せば、あの頃の自分を思い出すことができる。もちろん誰に読んでもらえてどんな感想をいただける…
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記事一覧

女王マリー・アントワネットが作曲した歌!「かわいそうなジャック」

大英帝国のヴィクトリア女王は素晴らしいソプラノ歌手でした。ヴィクトリア女王に限らず、音楽は伝統的に王侯貴族の最低限の教養と嗜みでした。大作曲家メンデルスゾーンにお世辞抜きで褒められたヴィクトリア女王並みの高度な音楽的教養は例外的だとしても、超一流の音楽教師から英才教育を与えられた王侯たちの多くはプロ顔負けの音楽技量を持ち合わせていました。

我が国の上皇后美智子さまの音楽的教養の深さには誰もが舌を
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ノクターンの歴史:知られざるドイツロマン派の大作曲家ファニー・メンデルスゾーン(3)

ノクターンの歴史:知られざるドイツロマン派の大作曲家ファニー・メンデルスゾーン(3)

夜を意味する

は、次のようなヨーロッパ語を生みだしました。

Night(英語)

Nacht(独語)

Nuit(仏語)

Notte(伊語)

Noche(スペイン語)

19世紀になると、これらのキーワードが特別な意味合いを持って理解されるようになり、芸術家たちの創作意欲をそそるようになります。

音楽の世界では夜を想う音楽が盛んに書かれるようになるのです。

未知なるものへの憧れを特徴と

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大英帝国のヴィクトリア女王:知られざるドイツロマン派の大作曲家ファニー・メンデルスゾーン(2)

大英帝国のヴィクトリア女王:知られざるドイツロマン派の大作曲家ファニー・メンデルスゾーン(2)

国産の大作曲家が生まれないお国柄だった英国。

18世紀にして欧州のどこの国よりも既に経済大国だった英国は、自前の音楽家を育てるよりも、海外の高名な作曲家を高給で招いて一流の音楽を楽しむという伝統を持つようになりました。

輸入作曲家第一号:ハンデルドイツのハノーファー選帝侯に仕えていたドイツ人ゲオルグ・ヘンデルは、雇い主の選帝侯が血縁から英国王(ジョージ一世)に選ばれた縁ゆえに英国に移住。

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ロマン主義音楽の憧れ:知られざるドイツロマン派の大作曲家ファニー・メンデルスゾーン(1)

ロマン主義音楽の憧れ:知られざるドイツロマン派の大作曲家ファニー・メンデルスゾーン(1)

大学生の頃にドイツ語を三年間も勉強したのは、ヨーロッパのクラシック音楽が大好きだったからでした。

若い頃に学んだドイツ語の歌曲はわたしのアオハルな時代を何よりも象徴する音楽です。

ビートルズよりも、ビリー・ジョエルよりも、スピッツよりも、尾崎豊よりも、シューベルトやシューマンやマーラーの歌曲がわたしのアオハル音楽なのです。

青春という古風な言葉は使わないことにします😌。

欧米とは異なり、

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本日の一曲 vol.468 バッハ ヴァイオリン協奏曲 (Johann Sebastian Bach: Violin Concertos, 1723)

本日の一曲 vol.468 バッハ ヴァイオリン協奏曲 (Johann Sebastian Bach: Violin Concertos, 1723)

ヴァイオリニストにとって、バッハ、ハイドン、モーツァルトというドイツ・オーストリアのバロックから古典派の音楽は扱いがとても難しい音楽です。ヴィルトゥオーゾ的なテクニックは使わないので、音をたどるだけであればむしろ易しい音楽かもしれません。しかし、言ってみれば、リスナーの要求が極めて高い音楽なので、迂闊な演奏はできないのです。また、音符が少ない分、解釈の幅が広がってしまうので、ヴァイオリニストが一生

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老いてリストがようやく気付いたこと-ワーグナー=リスト「トリスタンとイゾルデの愛の死」をきいて-音楽から眺めてみる世界から⑪-

老いてリストがようやく気付いたこと-ワーグナー=リスト「トリスタンとイゾルデの愛の死」をきいて-音楽から眺めてみる世界から⑪-

若き日のドビュッシーは、リスト編曲の「トリスタンとイゾルデの愛の死」を聴いて、

「ピアノはこれほどの表現力を持つのか」

と衝撃を受け、

「自分はこれまで、ピアノの表現力を引き出していたのだろうか」

と、発奮したそうである。

そのようにして、ピアノ新時代の扉が開かれたのであるが、ドビュッシーが力強く新時代の扉を開くことに、そっと手を貸した、老リストの存在を忘れてはならない、と思う。

しか

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舞に酔いしれる妖精たち:最もメンデルスゾーンらしい音楽

古典的なものは健康的で、ロマン派的なものは病的であると喝破したのは「若きヴェルタ―の悩み」の作者ヴォルフガング・フォン・ゲーテでした。ヴェルタ―は世界文学史上もっとも病的な青年ですよね(笑)。

シューマンやショパンのロマンティックな音楽はまさに病的ですが、メンデルスゾーンの音楽は非常に健康的。わたしは彼の作風を「健康的なロマン主義」とゲーテの言葉に矛盾する表現で言い表しますが、「現実世界にはない
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ロベルト・シューマン Robert Schumann

ロベルト・シューマン Robert Schumann

アイドルのファンは、誰より応援している子のことを「推し」という。
流行りのアニメやマンガのおかげで、推しを使う人が増えたが、急に生まれた言葉でもない。
何を隠そう、私だって四半世紀前は、モーニング娘。の中では石川梨華が推しメンだったし、四十年前のアイドル全盛時代、そうそうたる顔ぶれがしのぎを削りあっている頃は、デビュー間もない菊池桃子を推していた。

「推し」というものは決して、決してアイドルだけ

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19世紀ベルリンの誕生日プレゼント:メンデルスゾーン家の場合

19世紀ベルリンの誕生日プレゼント:メンデルスゾーン家の場合

「メンコン」と言えば、世界三大ヴァイオリン協奏曲。

モツレク、ハルサイ、ブル8、チャイ5、ブラ3、ドボコン,ラフ2、ショスタコなど、日本のクラシック音楽界は訳のわからない言葉でいっぱいです。

英語では Jargon と呼ばれて、内輪の人にしかわからない言葉。隠語とも訳されますね。

長い単語を縮めてしまう日本語の造語力は世界的に見てもユニークなものです。

メンコンはメンデルスゾーン・コンチェ

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バッハ エピソード23 マルシャン未対決

バッハ エピソード23 マルシャン未対決

前回のお話:バッハはワイマールを離れ、ケーテンに就職することを決めます。

1717年、ケーテンへの就職が決まったバッハはドレスデンへ旅行します。その頃、音楽的に最先端をゆくドレスデンの音楽に触れ、これからのケーテンでの活動に向けて世俗器楽曲の作曲の準備勉強をしたかったためではないかと言われています。

その時、ドレスデンの宮廷から、ちょうど同じく滞在していたマルシャンと音楽で競演することを提案さ

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ヴィヴァルディの《四季》について

ヴィヴァルディの《四季》について

《四季》はヴィヴァルディのヴァイオリン・コンチェルト集『和声と創意の試み (Il cimento dell'armonia e dell'inventione) Op. 8 』(1725) の初めの4曲の総称です(RV 269, RV 315, RV 293, RV 297)。ちなみにこの「四季 quattro stagioni」というタイトルは、ヴィヴァルディ本人も献辞の中で使用しているので公式

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J.S.バッハの最後の弟子、ヨハン・ゴットフリート・ミューテル(176)

J.S.バッハの最後の弟子、ヨハン・ゴットフリート・ミューテル(176)

これはJ.S.バッハの《ミサ曲 ロ短調》BWV 232 の最後の "Dona nobis pacem" の箇所の自筆譜です。

しかしとてもバッハとは思えぬほど音符の書き方が拙く、おまけに線がプルプルと震えています。

晩年のバッハは視力の衰えに悩まされていたと伝えられていますが、この譜面からはさらに何らかの神経障害を患っていたことが疑われます(いずれも糖尿病が原因ではないかという説もあります)。

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クリストフォリによる世界最初のピアノで奏でるスカルラッティのソナタ

イタリアルネサンス期にローマ教皇を生み出し、ダ・ヴィンチやミケランジェロやガリレオ・ガリレイを養い、フィレンツェの君主として長く君臨したメディチ家に雇われていた楽器職人が、バルトロメオ・クリストフォリでした。

当時のメディチ家は衰退期にあり、1737年にはメディチ本家は家系断絶。しかしながら、史上最大の芸術パトロン最後の矜持か、クラシック音楽の象徴ピアノを最後に生み出すことに貢献したのち、歴史の
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全て無料! ゲーム感覚で音楽を学べる「洗足オンラインスクール」の魅力を知ってほしい

全て無料! ゲーム感覚で音楽を学べる「洗足オンラインスクール」の魅力を知ってほしい

みなさんは「洗足オンラインスクール・オブミュージック」(以下:オンラインスクール)を知っていますか?
その名の通り“音楽の知識をオンライン上で勉強できちゃうところ”なんですが、まずは何も考えずにサイトを覗いてみてください!

「聴音RPG」や「りずむん」……。出てくるコンテンツは難しそうなものばかり。「よくわからない」「何だか難しそう……」「そもそも音大生がやるものじゃないの?」

そう思われた方

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