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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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2022年3月の記事一覧

皆勤賞の存在意義

皆勤賞の存在意義

学校という組織は社会の中でも極めてコンサバティブな組織です。

未だに昭和的価値観をそのまま引き摺っている習慣が、令和も4年になろうというのにいくつも残っています。

そしてその代表例の一つが「皆勤賞」の存在です。

皆勤賞とは…先日、終業式があり私の勤務校も3学期を終えました。

終業式後のホームルームでクラスの生徒達に毎年賞状を渡すのですが、その賞状が「1カ年皆勤」の賞状です。

学校では1年

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担任が謝る文化の違和感

担任が謝る文化の違和感

学校で教員をしていると、担任をしているクラスの生徒と他の教職員の間に何かしらのトラブルが発生することがあります。

授業中の問題行動であったり、言葉の行き違いであったりです。

そんな時に、日本の学校文化ではクラスの生徒のことに対して

「うちのクラスの生徒がご迷惑をおかけしてすみません。」

のように、担任教員が別の教員に謝罪するという不思議な文化が存在します。

担任が疑似保護者として機能する

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暗記とは「思考の付箋」

暗記とは「思考の付箋」

高等学校でも次年度から新課程のカリキュラムがスタートします。

学力の三要素が「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「主体性・多様性・協働性」と定義され、最初の要素を基礎としつつも、これまでよりも後者の二つに重きを置く指導方針が示されています。

「知識・技能」を軽んじるわけではありませんが、必然的にその習得に当てる時間は減少する方向にあるようです。

共通テストの変化これに伴い、大学入試も

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学習を苦役と考える生徒

学習を苦役と考える生徒

生徒に課題や宿題を出すとき、私は必ず模範解答と解説をセットで渡します。

高校数学の内容で解答無しで考えることは、大抵の場合は不毛な時間を費やすだけに終わるからです。

その宿題を提出してもらったとき、最も困るのが

「赤ペンで解答を書き写した」ノートやプリントです。

何のために課題をするのか私は課題を授業で習った復習を行うために出しています。

授業中に説明した、あるいは自身が考えた問題や定理

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この4月に教員になる人が今すべきこと

この4月に教員になる人が今すべきこと

この記事は、この4月に大学を卒業して教員としてスタートする方に向けた内容です。基本的には新卒の大学生がメインになります。

本当に感謝まずは本当にありがとうございます。

教員の志望者が年々減少する中で、あるいは教員の労働環境の悪さが露見しつつあるこのご時世に教員になろうと思った人、そして実際に一歩を踏み出した人には感謝の言葉しかありません。

私が勤務する私立の高校であっても教員不足のそれは変わ

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「ホワイト社会」化と教員の在り方

「ホワイト社会」化と教員の在り方

「ホワイト社会」とは「ホワイト社会」とは評論家、オタキングの岡田斗司夫氏が提唱している概念です。

詳しくは動画を見るのが一番早いのですが、簡単にまとめると

ポリティカル・コレクトネスの重視

コンプライアンス

集団主義からの脱却

これらを重視し、それが人間の価値や評価基準として認められた社会の事です。

逆に言えば、これらに反する発言を公にすることで、極めてマイナスな(あるいは致命的な)評

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生徒が「成人」になる日、準備はできていますか?

生徒が「成人」になる日、準備はできていますか?

平成30年に民法改正が行われ、令和4年の4月1日より施行されます。

これに伴い成人年齢が満18歳に引き下げられますが、学校現場はその準備ができているのでしょうか。

文科省は関係各所に「事務連絡」という形で対応に関して周知をしているようです。

事務手続き上の問題おそらく、最も直接的に影響があるのは事務手続きでしょう。

授業料や教材費、その他諸費などの費用が原則は本人が支払い義務を負うことにな

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「教員が何かを変えた」という幻想とやりがい

「教員が何かを変えた」という幻想とやりがい

学校の教員の仕事は生徒の人生に関わるものだ、という話をよく聞きます。

多感な数年間を、日中の時間を共有して交流することを考えれば、これは間違いではないでしょう。

しかし、実際のところ教員は生徒にどれほどの変化を与えることが出来ているのでしょうか。

教育の成果は検証不可能「あの先生のおかげでオレは変われた」や「あの先生のせいで数学が分からなくなった」といった発言を聞くことがあります。

こうい

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むしろ「学びたいものが決まらない」状態で進学すべき

むしろ「学びたいものが決まらない」状態で進学すべき

私は私立高校に勤務していて、大学への進学指導関係の仕事を担当しています。

少し前から「キャリア教育」と銘打った志望動機を自分で考えていこう、といった進路学習が一般的になっています。

ベ〇ッセやリ〇ルートから提供される進路学習用の教材もかなり充実しており、最近はオンラインで適性判定が出るようなシステムも広がっています。

三十代ぐらいの人ならば、高校のときにそのような学習をした記憶がある人も多い

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「教え子」を大学に「通した」という表現

「教え子」を大学に「通した」という表現

今回の内容は私の個人的な感覚の問題であり、特定の人物を批判する意図は一切ありません。

「教え子」という表現「教え子」という表現が苦手です。

この言葉にとても恩着せがましい印象を抱いています。

なぜならば、学校で学び、成長し、そして卒業したのは本人の行動と努力によるものでしかないからです。

別に私が何かを「教えた」からできるようになった訳ではないと思います。

この仕事を10年以上もしている

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