
『オリエンタリズム』を知っていますか?/エドワード・サイード
こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!
今回はわたしの詩読書であるエドワード・サイードの『オリエンタリズム』を紹介していきます!
人文学系の大学の講義で必ず取り上げられる1冊であり、コメンテーターとしてテレビで見かける姜尚中も、この本を愛読しています。
ところで、皆さんは「オリエンタリズム」という言葉を知っていますか?
何やら難しそうな響きですが、実はこの言葉、私たちが普段触れている映画や小説、絵画や音楽、メディアやニュースなど、あらゆる場所に潜んでいる固定観念を表しているんです。
例えば、
アラビアンナイトの魅惑的な世界…… でも、どこか野蛮で退廃的なイメージも抱いていませんか?
ニュースで流れる中東の紛争…… そこには、私たちが知らない複雑な背景があるはずだと思い込み、理解できないものと諦めていませんか?
ハリウッド映画に登場する東洋人…… どこかミステリアスで蠱惑的、理解できない存在として描かれていませんか?
これら全てが、西洋が東洋を見るフィルター「オリエンタリズム」が生み出したものだとサイードは言います。
この「オリエンタリズム」、実は過去に西洋が東洋を植民地支配する際の強力な武器として利用されてきた歴史があります。
そして、現代社会にも根深く残り、私たちの無意識にまで影響を与えているのです。
「偏見や差別をなくしたい」
「多様な文化を正しく理解したい」
そう願うあなたにこそ読んでほしいのが、エドワード・サイードの『オリエンタリズム』です。
サイードは、私たちが当たり前だと思っている「東洋」のイメージが、実は西洋によって作られた虚像であることを鋭く指摘します。そして、その歪んだイメージが、どのようにして差別や不平等を生み出してきたのかを明らかにしています。
E・サイードとは
エドワード・サイードは、パレスチナ系アメリカ人の傑出した学者、文学研究者、文学批評家、そしてポストコロニアル理論の創始者の一人として、世界に多大な影響を与えた。彼の業績は学問の世界にとどまらず、パレスチナ問題に関する積極的な発言や活動を通じて、社会正義の実現にも貢献。サイードの著作は、現代社会における文化的多様性を深く理解し、根強く残る偏見や差別を克服するための重要な視点を提供しつづけている。まともな大学の講義では必ず取り上げられる必読書。
オリエンタリズムの概念
サイードは、「オリエンタリズム」という言葉の定義を大きく広げ、新たな解釈を提示しました。従来「オリエンタリズム」は主に美術における東洋趣味や異国趣味を指す言葉でしたが、サイードはこれを、西洋が東洋に対して抱くステレオタイプな認識やイメージ、そしてそれらを表現する体系全体を指す言葉として再定義しました。
オリエンタリズムの具体例
サイードは、オリエンタリズムが文学、絵画、音楽、学問など、多岐にわたる分野に深く根を下ろしていることを、具体的な事例を挙げて明らかにしました。
文学作品
『千夜一夜物語』や『アラビアンナイト』は、エキゾチックで魅惑的な東洋の世界を描きながらも、同時に西洋人にとって未知で神秘的な場所、あるいは野蛮で退廃的な場所として描くことで、西洋の優位性を暗示する
これらの作品は、西洋読者にとって東洋への憧憬とともに、優越感や支配欲を掻き立てる役割を果たしてきた
絵画の世界
ドラクロワの『アルジェの女たち』は、ハーレムという閉鎖的な空間で官能的に過ごす女性たちを描いているが、これは西洋男性の視点から見た東洋の女性に対する幻想や欲望を反映している
一方、ジェローム『蛇使い』は、裸体の少年が蛇を操る姿を描き、東洋を野蛮で未開な場所として描いている
このように、絵画の世界において東洋を理想化したり、逆に貶めたりする両極端な表現は、オリエンタリズムがいかに多面的で複雑なものであるかを示す
音楽
プッチーニの『トゥーランドット』は、中国を舞台にした物語ですが、西洋人が抱く東洋のイメージを強く反映しており、東洋の文化や音楽を西洋の美的感覚に合わせて解釈したオペラである。
リムスキー=コルサコフの『シェヘラザード』も、東洋の旋律や楽器を取り入れながらも、西洋の視点から見た東洋の神秘性やエキゾチシズムを強調した交響曲である。
学問
19世紀の東洋学者たちは、西洋中心主義的な視点から東洋を研究し、東洋の文化や歴史を歪曲して解釈する例がよくあった。彼らは、東洋を未開で停滞した社会とみなし、西洋の文明化の対象として位置づけることで、植民地支配支配の正当化を試みている。
このように、サイードは「オリエンタリズム」が西洋社会の様々な側面に浸透し、東洋に対する偏見や誤解を助長してきたことを明らかにしました。彼の分析は、現代社会における文化的な多様性を理解し、異なる文化を持つ人々を尊重することの重要性を改めて認識させてくれます。
ここからは上下巻に、何が書かれているのか?
ざっくりご紹介します!
『オリエンタリズム』上巻では、主に以下の内容が論じられています。
1. オリエンタリズムのスコープと歴史的背景
オリエンタリズムの定義と範囲 文学、歴史、人類学など、様々な分野における西洋の東洋認識と表象の体系を「オリエンタリズム」と定義し、その広範な影響力を明らかにする
オリエンタリズムの起源と発展 古代ギリシャから現代に至るまで、オリエンタリズムがどのように形成され、変化してきたかを歴史的に追跡する
オリエンタリズムと帝国主義の関係 オリエンタリズムが、西洋の東洋に対する植民地支配や帝国主義を正当化するイデオロギーとして機能してきたことを指摘する
2. オリエンタリズムの構造と方法論
東洋と西洋の二項対立 「オリエンタリズム」を東洋と西洋を対立的な概念として捉え、東洋を西洋の「他者」として位置づけることで、西洋の優位性を確立してきたと論ずる
オリエンタリズムの表象戦略:東洋を神秘的でエキゾチックな場所、あるいは未開で劣った存在として描くなど「オリエンタリズム」が用いる様々な表象戦略を分析する
オリエンタリズムの権力構造 「オリエンタリズム」を、西洋が東洋に関する知識を独占し、それを利用して東洋を支配する権力構造を支えてきた概念と痛烈に批判する
3. オリエンタリズムの具体例
文学におけるオリエンタリズム 『千夜一夜物語』や『アラビアンナイト』など、東洋を舞台にした文学作品が、オリエンタリズム的なイメージをどのように形成し、普及させてきたかを具体的に論ずる
東洋学におけるオリエンタリズム 19世紀の東洋学者たちが、西洋中心的な視点から東洋を研究し、東洋の文化や歴史を歪曲して解釈してきたことについて批判する
上巻では「オリエンタリズム」の概念、歴史的背景、構造、方法論を詳しく解説し、文学や東洋学における具体例を通じて、その影響力を明らかにしています。
下巻では、オリエンタリズムが現代社会に及ぼす影響や「オリエンタリズム」を克服するための方法論などが論じられています。
『オリエンタリズム』下巻では、主に以下の内容が論じられています。
1. オリエンタリズムと現代
オリエンタリズムの現代における影響 冷戦後の国際情勢や、イスラーム世界に対する西洋の認識において「オリエンタリズム」がどのように影響を及ぼし続けているかを分析する
メディアとオリエンタリズム ニュース報道や映画など、現代のメディアがオリエンタリズム的イメージをどのように再生産し、拡散しているかを批判的に考察する
オリエンタリズムと文化交流:文化交流がオリエンタリズム的偏見を助長する可能性がある一方で、相互理解を深めるための可能性も秘めていることを提示する
2. オリエンタリズムを超えて
オリエンタリズムの批判と克服 「オリエンタリズム」の限界を指摘し、西洋中心主義的な視点から脱却することの重要性を説く
東洋の視点からの再解釈 東洋の文化や歴史を、東洋自身の視点から理解し、解釈することの重要性を訴える
相互尊重に基づく対話 西洋と東洋が対等な立場で対話し、相互理解を深めることの重要性を説く
3. オリエンタリズム再考
批判への応答と自己批判 『オリエンタリズム』出版後に寄せられた様々な批判に対して、サイード自身の見解を述べ、自らの議論を修正・発展させる
オリエンタリズム研究の展望 オリエンタリズム研究の今後の課題と可能性について論ずる
下巻では、現代社会におけるオリエンタリズムの影響を分析し、オリエンタリズムを超えて、西洋と東洋が対等な関係を築くための方法を模索しています。また、オリエンタリズム研究の今後の発展に向けた提言も行っています。
まとめ
この本を読めば……
世界を見る目が変わる!
これまで見えなかった、ニュースや映画に隠された偏見に気づくことができるようになる
異文化理解が深まる!
「東洋」とひとくくりにせず、それぞれの文化を多角的に理解できるようになる
より公正な社会の実現に貢献できる!
偏見や差別をなくすための第一歩を踏み出すことができる
『オリエンタリズム』は、決して簡単な本ではありません。だからといって、難しい本でもありません。大学1年生向けの講義で取りあげられるような必読書です。
あなたの世界を広げ、より豊かな人生を送るための鍵となるでしょう。
偏見を乗り越え、多様な文化を理解するための第一歩として、『オリエンタリズム』をぜひ読んでみてください。
そこには、新しい発見があなたを待っているはずです。
あなたの世界観が一変します。
今すぐページをめくって、未知の世界に飛び込みましょう!
【編集後記】
私たちは「すべての記事を無料で、誰にでも読めるようにすること」をモットーにしています。そのため、今後も有料記事は一切公開いたしません。もし記事に価値を感じていただけたなら、ぜひサポートいただくか、リンクから本をご購入ください。次の記事の書籍代に活用させていただきます。
いいなと思ったら応援しよう!
