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ニュースの手帖

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2018年12月の記事一覧

ドローンの東京オリンピック

▼イギリスで2番目に大きな空港であるガトウィック空港が、ドローンのせいで36時間麻痺したというニュースがあった。2018年12月28日付の東京新聞が特集記事を載せていた。

〈ドローン テロの脅威/英空港大混乱 36時間閉鎖/日本 ひとごとではない〉

〈英国ロンドン近郊のガトウィック空港で今月、小型無人機ドローンが相次いで侵入し、空港が計三十六時間も閉鎖を強いられ、軍が出動する騒ぎにまで発展した

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日本は「移民大国」であるーー「論点100」を読む

▼『文藝春秋オピニオン 2019年の日本の論点100』に、日本は「移民大国」であることを示すデータが紹介されていた。

社会学者の下地ローレンス吉孝氏の論考から。見出しは

〈本当は世界第4位! 「移民大国」日本の課題〉

〈重要なことは「受入れ側」がすでに多様であるという現実への理解である。1990年の入管法改正、1993年の技能実習制度開始により地域住民としてくらす外国人が増加していき、これに

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受精卵のゲノム編集が解禁

▼受精卵のゲノム編集が解禁になることをニュースで知ったのは、今年の秋だった。以下の記事は産経新聞2018年9月28日配信。

〈生物の細胞が持つ全遺伝情報(ゲノム)の中で、狙った遺伝子を自由自在に改変する「ゲノム編集」技術を使って、ヒトの受精卵を操作する研究が来春にも解禁されることになった。厚生労働省と文部科学省の有識者合同会議が28日、研究に関する倫理指針を了承した。現時点で医療への応用はできな

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民間船の戦争 「戦乱特約」の衝撃

▼文化庁芸術祭の受賞一覧が発表された(2018年12月27日)。その一覧を眺めていて、思い出した新聞記事があった。

一覧で目に止まったのは、テレビ・ドキュメンタリー部門の優秀賞『行ってみれば戦場 ~葬られたミサイル攻撃~』。夜中に放映された番組で、残念ながら未見だが、内容紹介を見ると、とても大事な調査報道であることがわかる。

〈他国の戦争のために、「派遣される場所は安全だ」という根拠で派遣され

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将棋界の変化ーー羽生世代と藤井世代の違い

▼2018年は2017年に続き、将棋に大きな注目が集まった年だった。AI(人工知能)をめぐる羽生善治世代ーー40代後半と、藤井聡太七段に象徴される10代半ばとの違いについて、深浦康市九段が体験的な分析を話していてわかりやすかった。「将棋世界」2019年1月号から。話のきっかけは、「端攻め」のタイミングについて、藤井聡太七段が10代中盤ですでに中原誠十六世名人のような巧みさを会得していることへの驚き

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ギャンブル依存症を生む日本の仕組み

ギャンブル依存症を生む日本の仕組み

▼2018年はカジノ法(特定複合観光施設区域整備法)が成立した年でもある。ギャンブル依存症について、『文藝春秋オピニオン 2019年の論点100』で筑波大学教授の原田隆之氏が日本の特徴をわかりやすく紹介していた。適宜改行。

〈厚生労働省の研究班が2017年に発表した推計によれば、わが国でギャンブル依存症が疑われる人は、320万人おり、人口の3.6%に当たる。諸外国と比較すると、オランダ1.9%、

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新聞を読む効用 「労働権」を学ぶ

▼まったく知らない言葉を知ることも新聞を読む効用の一つだ。海外旅行好きの友人が、紙の雑誌よりもネット情報のほうが便利、と言っていたのに、最近会ったら「雑誌で調べるほうがいい」と意見が変わっていた。彼いわく、ネットだと「自分の興味のある範囲しか調べられない」とのことだ。「結局、検索するじゃないですか。自分が思いつく検索ワードを超える話は見つからない。でも紙の雑誌だと、思いもよらない情報にであうことが

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日本の「性差別」のルーツ 前川直哉氏の「男の絆」論に学ぶ

▼『文藝春秋オピニオン 2019年の論点100』に、なぜ日本に男女差別が強いのか、前川直哉氏がわかりやすいまとめ記事を書いていた(118-119頁)。前川氏の『男の絆――明治の学生からボーイズ・ラブまで』(2011年、筑摩書房)の簡潔な要約になっている。キーワードは「男の絆」である。

〈明治時代、エリートだった男子学生たちの一部で、学生男色と呼ばれる関係性が流行した。当時の新聞・雑誌記事などによ

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ニュースを解説する意義 坂村健氏の分析に学ぶ

▼一紙しか報道していないニュースが、とても大事な場合がある。その場合、そのニュースの意味を丁寧に解説することに、とても重要な価値がある。

坂村健氏が2018年11月15日付毎日新聞に書いた記事は、ニュースの背景を解説するお手本のような記事だった。

▼もとになった記事の見出しは〈「MMRワクチン接種で自閉症増」 日本公開中止 「監督の主張成り立たず」〉(毎日新聞2018年11月9日 東京朝刊)と

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コラムのお手本 山内マリコ氏の「内助の功」論に学ぶ

▼ノーベル賞の季節に、匕首(あいくち)を突き付けられたような、コラムらしいコラムを読んだ。作家の山内マリコ氏が2018年12月12日付毎日新聞夕刊に書いた〈「内助の功」の意味するもの〉。

〈受賞者の陰には、彼を献身的に支えてきた妻ありという話が、美談調に語られるアレだ〉という第一段落の一文からしてキレている。

内助の功という日本語独特の表現を、〈内助の功とは、夫が仕事のことだけ考えていられるよ

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「博士」にはなったけれど 崩れる基礎研究と雇用

▼日本の大学の基礎研究が危ない、という話は最近よく聞くようになった。京都大学の前理事長で理化学研究所理事長の松本紘氏のインタビューが平易な解説になっていた。2018年12月11日付読売新聞。知野恵子記者。

見出しは〈日本の研究力 黄信号/競争に追われる若手ら 崩れた交付金システム〉

〈国立大学や国の研究機関は、政府から「運営費交付金」を支給されています。規模などに応じて配分され、自分たちの裁量

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『日本国紀』に学ぶ「編集」の効用

▼名著『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』(中公新書)で知られる歴史学者の呉座勇一氏が、作家の百田尚樹氏の新刊『日本国紀』(幻冬舎)をバッサリ斬っている。2018年12月11日付朝日新聞。

見出しは「通説と思いつきの同列やめて」。

呉座氏は、『日本国紀』の古代史、中世史の記述は〈作家の井沢元彦氏の著作に多くを負っている〉ことを示す。『日本国紀』は、そもそも参考文献を載せていないことが批判されてい

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「ゲノム編集ベビー」の警告

▼2018年の11月、中国・南方科学技術大学の賀建奎(がけんけい)という学者が「ゲノム編集で双子を誕生させた」と発表したことが世の中を騒がせている。

本当なのかどうかわからない。ゲノム編集技術の世界に革命を起こした「クリスパー・キャス9」(CRISPR-Cas9)による遺伝子編集がされた、生まれた赤ちゃんは感染症にかからない、ということなのだが、証拠が未だに出されていない。 

▼2018年12

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読みくらべてみたーー河野外相の「黙殺」報道

▼2018年12月11日に、河野太郎外務大臣が記者の質問を4回無視した。無視というのは、「ノーコメント」とも言わなかった、ということである。寡聞(かぶん)にしてこれまで聞いたことのない対応である。くわしい内容がわかるのは14日付の朝日「メディアタイムズ」欄。

紙の見出しは〈外相が質問無視「知る権利軽視」/「メディアへの甘えか」「面倒な議論 避ける社会」〉。電子版の見出しは〈「甘え」「時間の無駄」

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