日本は「移民大国」であるーー「論点100」を読む
▼『文藝春秋オピニオン 2019年の日本の論点100』に、日本は「移民大国」であることを示すデータが紹介されていた。
社会学者の下地ローレンス吉孝氏の論考から。見出しは
〈本当は世界第4位! 「移民大国」日本の課題〉
〈重要なことは「受入れ側」がすでに多様であるという現実への理解である。1990年の入管法改正、1993年の技能実習制度開始により地域住民としてくらす外国人が増加していき、これに対応する形で支援団体は草の根的に増加してきた。川崎市では、外国人市民を地域づくりのパートナーとして位置づけ、市政にかれらの意見を伝える外国人市民代表者会議を1996年に設置した。また、外国人が特に集住する浜松市や群馬県太田市などの自治体が集い外国人集住都市会議も開催されている。全国の自治体には国際交流協会やNPO団体も設立され、多言語対応や交流事業など定住に向けたさまざまな支援体制がとられ、多くの人が日常的レベルで「移民社会日本」の現実に関わっているのである。数世代にわたって日本に暮らす在日コリアンの人々、「ハーフ」等と呼ばれる人々、外国籍から日本国籍へと帰化した人々など、受入れ側の「日本」は実際にはすでに多様化しているのである。〉(127頁)
▼ここで下地氏が「移民社会日本」と書いているのがキーワードだと思う。国家が自らを「移民国家」とは認めなくとも、すでに日本は「移民社会」なのである。
〈経済協力開発機構(OECD)の外国人移住者統計によれば、加盟国のうち日本はドイツ・米国・英国に次いで第4位と「移民大国」の現状が浮き彫りとなった。また、2016年の一時労働者の流入数はすでに英国やカナダを上回っている。2018年の『移民政策研究』に掲載された是川夕氏の論文によれば、日本国内における外国籍人口や帰化人口、「国際児」人口を合算すると、「移民的背景を持つ人口」は2015年10月時点で332万5405人であると推計されている。さらに是川氏は、2065年にはこの人口は1075万6724人、総人口の12%にのぼると予測しており、この推計値は現在のフランスやイタリアとほぼ等しい水準であるという。なお、是川氏は2015年までの数値を基に推計しているが、来年度の受入れ拡大を勘案すれば将来の人口増はさらに大規模になる可能性がある。〉(同)
▼こうしたデータを読めば読むほど、安倍政権の「移民」を拒否する言動が滑稽に見える。この問題は、いろんな角度から、何度もメモしておく必要がある。
(2018年12月29日)