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詩集 第6部

30
今まで書いた詩をまとめました。
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2023年8月の記事一覧

【詩】花びら

【詩】花びら

ひまわりの
花びらが ひとつ
じめんへ まう
ひらり ひらり
ちゃくちは しずか

ひまわりの
黒いたね ふたつ
じめんへ とぶ
ぽろん ぽろん
ちゃくちは はずむ

ひまわりの
背たけは いつつ
じめんを みる
ゆらり ゆらり
かぜは そよぐ

【詩】ない夏

【詩】ない夏

あついあつい夏が
この四季というなかから
音もなく なにもなく
こつぜんと 姿をけしたなら

祭りはなくなり 花火はきえ
傑作の山車 夏料理
青い海 みずみずしい野菜
ひまわり あさがお
みんな なかったことになる

せんぷうきの風にふかれ
頭をとかしていた
そんな日は 八月三十日

【詩】赤々とまんまる

【詩】赤々とまんまる

お弁当のはこを
しずかにひらき
いろどりゆたかな 花畑
白いごはんには
ゆらがぬつぼみ
赤々と ひろがる光線

口にほおばり 幸せになれば
ちくっと さされて 腕をみる
白い腕には
赤々と ひろがる小山ができた

【詩】朝

【詩】朝

朝日がのぼって 光さす
頬をくすぐられ
頭のひびきに 目をさます

鳥のさえずり
二輪車のベル
雲はゆうゆうと
時はすすむ

朝は いちばん
ゆううつな時間

【詩】色彩

【詩】色彩

よろこびは きいろ
いかりは あかいろ
かなしみは あおいろ
たのしさは きみどり

この よっつの感情を
この よっつの色彩を
いったい ぜんたい
誰がきめたんだろう

だれが よろこびは あかるいと
だれが いかりは しゃくねつと
だれが かなしみは つめたいと
だれが たのしさは はずむと
誰がきめたんだろう

わたしは おりがみをおった
きょうは 晴れ間らしい

【詩】空の氷山

【詩】空の氷山

青空をあおぎ 男の子
かきごおりみたいと 指をさす
水平線の かなたには
天までとどく 入道雲
その頂へ なにいろの
シロップをかけよう 男の子

あまい赤色
やさしい緑
すずしい青に
げんきな黄色

空のかきごおりは うらやましい
ずっと ずっと
溶けることがないのだね

【詩】体内奇譚

【詩】体内奇譚

身体の内の どこかが痛む
ツンツン ザクザク
刺されている
痛むところは 身体の袋
赤い皮膜が 溶けてるよう

くすりを九錠
くすりを十八錠
くすりを二十七錠
くすりを三十六錠

のんでも のんでも 治りやしない
ジクジク ゾワゾワ
波動している
痛むところを 手でかばい
気絶するよう 寝こんでみれば
これ おどろくほどに
治っている

【詩】アルバム

【詩】アルバム

ページをめくり あらわれる
どんどん どんどん あらわれる
それは 彩り豊かな 過去の写真
みんな笑顔でたのしそう
ときに涙のいちまいあり
息をしていた痕跡が
たったいちまいに あらわれる
私はちっとも 残っていないけど
ぬるく 幸せな 気持ちになる

【詩】暗黙

【詩】暗黙

日々つねづねと
意味もない文字を連ねていると
ぽっきりと どこかで
枝のおれる 音がする
そうしたら
快活な筆は息をとめ
なにもしない日々が つねづねと

青空を振動させ 戦闘機
公園の中央から おもちゃの銃声
地下を躍動する 大型トラック

こうしているあいだにも
うかばない うかばない 文字
なにもしない日々はつねづねと
なにもしない日々はつねづねと

【詩】車窓から

【詩】車窓から

雨あがりの 車窓から
追いかける影をみつめた
それは 藪のなかで
それは 長草のなかで
それは 稲のなかで
風をまとわせてついてきた

はしる車の影
座る私の影はなく
無人で走っている 車の影が
夕陽に照らされて 茶色くている
前方の硝子窓をみれば
雨がふってきた

【詩】心は雪

【詩】心は雪

これは遠慮でしょうか
それとも自信がないのでしょうか
さめざめとふる
心のなかの粉雪に
いくど冷やされ
真っ赤になったことでしょう

いつかそのいじらしい人間性が
仇となって癖になって
階段をふみこむことも
怖くなってやめてしまい
それでも登りつづける人々に
いくど悩まされ
真っ赤になったことでしょう

憎悪と嫌悪と嫉妬
ざぶざぶ沸いてくるのが
人間の心の性分ですが
幼きころから私の心には
白く冷

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【短編小説】夏風

【短編小説】夏風

 ボロ小屋に住まう婆さんは、いつも休みなく家事をしていた。料理に掃除に買いもの。その多忙さは、皺を隠すほどに身についているようだった。なによりも婆さんは、洗たくをしているときが一番綺麗であった。洗たく籠のなかには、洗たくものが、花が咲き誇ったかのように目まぐるしく詰めこまれている。それを婆さんは、地面を掴むように引き上げ、洗たく機のなかへ送り出す。夏の乾いた青空の陽は、濡れた衣服たちを風になびかせ

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【詩】束縛

【詩】束縛

愛はあたたかい
愛はこうふく
愛はえいえん
愛はみえない

愛はつめたい
愛はくるしい
愛はみじかく
愛はかくれる

愛はげきやく
愛はおもく
愛はにげられず
愛はしばられる