中村いぬ

大阪大学4回生 大学では情報工学を勉強していると見せかけて、大根を育てています。

中村いぬ

大阪大学4回生 大学では情報工学を勉強していると見せかけて、大根を育てています。

記事一覧

My Favorite Songs

それは偶然であの日雨が降ったから 君に逢ったあの日雨が降ったから 青の水平線に晴れた空が 落としていったもの鮮やかな夕日を見て もう始まっていたあっけなく好きに…

中村いぬ
2週間前
13

【曲】あわいろ

春 ひとつだけ わかる 君のこと 大きくふくらんで息をする そんなことばが欲しい 春 その下で 笑う 君もいる 路地裏から聞こえてくるノクターン 日差しが溶かした あ…

中村いぬ
1か月前
5

ひとは歩く

ひと ひとは歩く ひつじ ひつじは歩く ひと ひとは寝る ひつじ ひつじも寝る ひと ひとはおしゃべりする ひつじ ひつじもおしゃべりする? ひと ひとは笑う うーん…

中村いぬ
1か月前
10

日記

4/23(火)僕の失態ランキングで毎回上位に食い込んでくるのは、財布を家に忘れることである。改札の前でかばんをかき回し、底に沈殿したティッシュのゴミだけが僕の所持品だ…

中村いぬ
6か月前
18

日常の習作

公園の横を通り過ぎるとき、何も書いていない看板が見えた。その看板の下には白い花がたくさん咲いてあった。僕は墓のようだと思った。周りでは子供がいっぱい遊んでいた。…

中村いぬ
6か月前
9

【短歌】街のアボカド

中村いぬ
7か月前
7

【短歌】朝ごはん暴走族

中村いぬ
8か月前
11

大学生、介護中

関西空港から飛行機で一時間半。僕は新千歳空港に降り立った。大阪よりも一段と乾いて冷え込んだ空気が、山積みにされた白い恋人とともに僕を迎えてくれた。十月、北海道は…

中村いぬ
11か月前
47

人生の守り方がわからない

これやらん?って言われて、その場の勢いでやります!って言ってしまい、めちゃくちゃやりたくないという現象が毎回発生している。なんとかしたい。これは信頼問題にも関わ…

中村いぬ
11か月前
16

ザリガニをまき散らす

突然だが、あなたはザリガニを食べたことがあるだろうか。あのまずさといったらない。どこを食べてもドロの味がするし、醤油をかけてもポン酢をかけてもソースをかけてもド…

中村いぬ
11か月前
10

10年後、やりたいことはまだあるかな

やりたいことが多過ぎて時間が足りない。Googleカレンダーの予定はとっくにパンパンだが、これの3倍ぐらいやりたいことがある。21歳の自分は今何がやりたいのか、できる限…

中村いぬ
1年前
21

筒井と青春

「500円」 「いや、200円だ」 「商売を馬鹿にしているのか。500円は出してもらうぞ」 「なら間をとって400円だ、400円ならすぐ買う」 熱を帯びた口調で値段交渉をする2…

中村いぬ
1年前
15

自己啓発と僕とおかん

これはかの有名な詩人、谷川俊太郎の一作から抜粋したものではなく、僕がある特定の人々についてささげた詩である。 この世には「意識高い系」と呼ばれる人たちがいる。 …

中村いぬ
1年前
23

ナナメの夕暮れをつくろう

オードリー若林「ナナメの夕暮れ」を読んだ。 半年前に一回読んだことがあるが、もう一回読んでもやっぱりいい本だった。 この本が面白い理由は2つあると思う。1つめ、自…

中村いぬ
1年前
8

【絵本】ながいねこ

中村いぬ
1年前
10

主婦はネギだけを買わない

買い物帰りのおばさんが颯爽と自転車で駆けていく。 電動自転車にまたがり、待つ子供のために家路を急ぐ。 取り付けられた2つのチャイルドシートは城の如し、その自転車の…

中村いぬ
1年前
8
My Favorite Songs

My Favorite Songs

それは偶然であの日雨が降ったから
君に逢ったあの日雨が降ったから
青の水平線に晴れた空が
落としていったもの鮮やかな夕日を見て
もう始まっていたあっけなく好きになっていた

帽子と水着と水平線 / aiko

いちばん記憶に残っている雨の日はいつのときだろうか。まず僕の頭には、台風で氾濫した川に友達のさえきくんと自転車で突入して警察に通報されたことが思い浮かぶ。地面と水路の境界が曖昧になっ

もっとみる
【曲】あわいろ

【曲】あわいろ

春 ひとつだけ
わかる 君のこと
大きくふくらんで息をする
そんなことばが欲しい

春 その下で
笑う 君もいる
路地裏から聞こえてくるノクターン
日差しが溶かした

ああ僕は僕にだけ
伝えることがあるのに
ねえいつか
空が晴れたら雲を見ませんか
二人で今日をゆるして
明日もって言えるかな
Stand By もう少しだけ
くもりを数えて

ひとは歩く

ひと
ひとは歩く

ひつじ
ひつじは歩く

ひと
ひとは寝る

ひつじ
ひつじも寝る

ひと
ひとはおしゃべりする

ひつじ
ひつじもおしゃべりする?

ひと
ひとは笑う

うーん、ひつじは笑わない

ひと
ひとは空気を読む

ひつじ
ひつじは雲を見る

ひと
ひとはかっこつける

ひつじ
ひつじは足を折りたたむ

ひと
ひとは自分で死んだりする

ひつじ
ひつじは自分で死んだりしない

ひと

もっとみる
日記

日記

4/23(火)僕の失態ランキングで毎回上位に食い込んでくるのは、財布を家に忘れることである。改札の前でかばんをかき回し、底に沈殿したティッシュのゴミだけが僕の所持品だとわかって絶望した日が何回あっただろう。今日、僕はこの問題に終止符を打つ方法をやっと思いついた。それは国道171号線を自転車でシャリシャリと漕いでいるときに突如天啓のように僕の頭にやってきたのだった。神は告げられた、「かばんの小さいと

もっとみる

日常の習作

公園の横を通り過ぎるとき、何も書いていない看板が見えた。その看板の下には白い花がたくさん咲いてあった。僕は墓のようだと思った。周りでは子供がいっぱい遊んでいた。

ある女の後ろ姿を見た。後ろ姿だけで、幼い性格であることがわかった。覚えているのはショートカットの襟足が乱れていたこと、ズボンを履いていたこと、その色がライトブルーだったこと。

ハンバーグを作った。ラップを剥がし、中に入っているひき肉を

もっとみる
大学生、介護中

大学生、介護中

関西空港から飛行機で一時間半。僕は新千歳空港に降り立った。大阪よりも一段と乾いて冷え込んだ空気が、山積みにされた白い恋人とともに僕を迎えてくれた。十月、北海道はもう冬だ。これからバスを乗り継ぎ乗り継ぎ、四時間かけて北海道の南端、浦河町へと向かう。

浦河町にある「べてるの家」は統合失調症の患者たちが共同で暮らしている施設である。そこでは患者自信が自分の症状を研究し、発表する「当事者研究」が行われて

もっとみる
人生の守り方がわからない

人生の守り方がわからない

これやらん?って言われて、その場の勢いでやります!って言ってしまい、めちゃくちゃやりたくないという現象が毎回発生している。なんとかしたい。これは信頼問題にも関わってくるのだ。めちゃくちゃやりたくないことなんか、力入れてやれるわけがない。そのため、テキトーにやってしまい(または全くやらない)、あいつは物事に対してテキトーなやつだ、とか真剣に取り組んでいないとかいう評価を下されるのである。もちろんその

もっとみる
ザリガニをまき散らす

ザリガニをまき散らす

突然だが、あなたはザリガニを食べたことがあるだろうか。あのまずさといったらない。どこを食べてもドロの味がするし、醤油をかけてもポン酢をかけてもソースをかけてもドロの味がする。ドブ川のドロというドロをかき集めて5時間ぐらい煮込んだ上、隠し味に砂利と錆びた鉄を入れたものがザリガニという食べ物のレシピである。カレー味のうんことうんこ味のカレーどちらを食べるかという議論があるが、僕は第三候補にザリガニを追

もっとみる
10年後、やりたいことはまだあるかな

10年後、やりたいことはまだあるかな

やりたいことが多過ぎて時間が足りない。Googleカレンダーの予定はとっくにパンパンだが、これの3倍ぐらいやりたいことがある。21歳の自分は今何がやりたいのか、できる限りここに残しておこうと思う。10年後、腹のたるみを気にするようになってきた僕はこれを楽しく読めるだろうか。

文章を書きたい。解像度が高くて美しい文学的な文章も書きたいし、くだらなすぎて笑えてくる文章も書きたい。本を読み出したのはい

もっとみる
筒井と青春

筒井と青春

「500円」

「いや、200円だ」

「商売を馬鹿にしているのか。500円は出してもらうぞ」

「なら間をとって400円だ、400円ならすぐ買う」

熱を帯びた口調で値段交渉をする2人の男がある。
どちらも一歩も引けを取らない、熾烈な争いである。

男たちの手元に焦点を当ててみる。みるとスマホが一人の男の手に握られている。画面は真っ黒だが、2人の男はそれを見つめている。どうやら取引の対象は、この

もっとみる
自己啓発と僕とおかん

自己啓発と僕とおかん

これはかの有名な詩人、谷川俊太郎の一作から抜粋したものではなく、僕がある特定の人々についてささげた詩である。

この世には「意識高い系」と呼ばれる人たちがいる。

とにかく自己顕示欲がとんでもなく高い奴らの集まりである。SNSで個人が発信できる時代になり、その数は次第に増えていった。前なんか、あるひとのSNSのプロフィールを読んで「どひゃあ」と言って尻もちをついてしまった。大体こんな感じだった。

もっとみる
ナナメの夕暮れをつくろう

ナナメの夕暮れをつくろう

オードリー若林「ナナメの夕暮れ」を読んだ。
半年前に一回読んだことがあるが、もう一回読んでもやっぱりいい本だった。

この本が面白い理由は2つあると思う。1つめ、自分の弱点を開示し、それが自分の弱みであると認めている点。2つめ、好き、嫌いという自分の感情を大切にしている点。

思えば自分に足りないのはその2つかもしれない。

「お前、誰かに言われたことをそのまま流されてやってて、自分の好き嫌いの感

もっとみる
主婦はネギだけを買わない

主婦はネギだけを買わない

買い物帰りのおばさんが颯爽と自転車で駆けていく。
電動自転車にまたがり、待つ子供のために家路を急ぐ。
取り付けられた2つのチャイルドシートは城の如し、その自転車の大きさが母親の偉大さである。

見ると、前カゴにははみ出した2つの長ネギ。俺はまだ生えているんだと言わんばかりに、買い物袋から夕暮れの景色へと顔を覗かせている。私たちが見えるのは、この2本のネギだけである。落ちかけた太陽の光を、今日最後に

もっとみる