マガジンのカバー画像

小説 まとめ

8
心揺さぶられた「小説」をかんたんな書評と感想付きでまとめています。
運営しているクリエイター

記事一覧

【読書メモ・感想】『錦繍』/宮本輝

【読書メモ・感想】『錦繍』/宮本輝

男はカコへ、女はミライへ
----------------

2024年現在で1番没頭して読めた本『錦繍』

昭和60年に発行された本書は
古いながらも、男と女の恋愛観や
貞操感をみごとに表現しています。

ざっくりとした内容。

離婚した男女が10年振りに
奇跡的にであい、そこから文通が
はじまります。最初は過去を
精算するための内容ですが
後半は、自分らしく生きるために自分の
今の境遇や本音を

もっとみる
【本の感想・書評】『ラン』 著:森絵都/角川文庫

【本の感想・書評】『ラン』 著:森絵都/角川文庫

天国に行くため、40km走る。

「カラフル」という小説で、一世を風靡した森絵都さん。今作は、読めばポカリスエットの味が口いっぱいに広がるような、そんなお話です。

「死と生」いや「死と青春」を題材にした本作は、簡単にいえば主人公の女の子が死んだ家族に会うため、40km走れるように努力し葛藤します。

家族全員を事故で失った主人公『環』

彼女が生きる希望を見いだし、目的も性格も年齢もバラバラな大

もっとみる
【小説書評・レビュー】『土の中の子供』/中村文則

【小説書評・レビュー】『土の中の子供』/中村文則

死に近づくと、生もまた近くなる。----------------
内から溢れでる暴力性や人間の持つ
根本的な欲求や脆弱性を
繊細に表現し、第133回 芥川賞を
受賞した本作 『土の中の子供』

主人公である27歳のタクシードライバーを
ずっと悩ませているのは、過去のトラウマ。

親に捨てられ、養家には日常的に
虐待を受けて育ち、ついには
「暴力」を引き起こさせる素養を
もってしまいます。

バイク

もっとみる
【読書メモ】 『東京放浪』 小野寺史宜 /ポプラ文庫

【読書メモ】 『東京放浪』 小野寺史宜 /ポプラ文庫

『東京放浪』小野寺史宜 : ポプラ文庫

▼以下、読みたてホヤホヤの感想です📖´-▼

3年務めた会社を辞め、あてもなく東京を放浪する主人公『森』の、新たな旅立ちまでを描いた爽やか青春小説。

仕事を辞め、学生時代の友人を頼りに毎日を過ごす主人公。

友人たちの人生に触れていくなかで新たな1歩を踏み出そうと決意する森の心の軌跡が緩やかに描かれています。

ぼくもそうでしたが、読みすすめるたび主人

もっとみる
【読書メモ】横浜コインランドリー/ZOO2

【読書メモ】横浜コインランドリー/ZOO2

『横浜コインランドリー』泉ゆたか :祥伝社文庫 

新卒から3年間働いたブラック企業をやめ、家にひきこもっていた中島茜。茜はとあるコインランドリーの店長と出会う事で人の温かさや悩んでいるのは自分ひとりじゃないことを再認識していく…。

洗濯を通じて、人と人とが心を通わせ、成長していく様子をふんわりと描いている素敵な小説でした。本当に心が洗われるストーリーでぼく自身、寝る前や仕事おわりに読んでたくさ

もっとみる
【読書メモ】遠野遥 「改良」

【読書メモ】遠野遥 「改良」

読後感がいい意味で悪くて、惹き付けられまくった本作。読み終わりホクホクの感想をここに残しておきたいと思います。

▼以下、感想です▼

遠野遥さんの本をはじめて読みましたが、とんでもなく引き込まれました。

ものの2時間で読める軽さなのにまるで主人公の人生をすべて追体験したかのような読後感。本当に感動すら覚えました。

本作は、ゆるやかに絶望しながら生きる大学生「私」の納得して生きる部分と、理不尽

もっとみる
【読書メモ】自傷本。四月になれば彼女は。

【読書メモ】自傷本。四月になれば彼女は。

今、映画も上映していて話題となっている、こちらの本📖

ついに読み終わりました。拙いですが読みたてホヤホヤの状態でぼくの思ったことを書かせてください。

本作は「ラブストーリー」や「純愛」なんていうフワッとした内容じゃありません。

むしろ物語に心を寄せるだけで、スパッと深い傷を負う「残酷」といっても過言じゃない作品です。

恋、愛、結婚、結婚後の生活、人が想起しうる感情やできごとが、グロテスク

もっとみる