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2023年7月の記事一覧
ハードボイルド書店員日記【146】
「ビジネス書、ここだけですか?」
猛暑が続く平日。夏休みに入った子どもや外国人観光客、そして近隣に住む常連さん以外の来訪が少ない。外出を控えているのだろうか。いまは本屋に用はないと感じている可能性もある。増税に物価高。目に映る見返りの多寡で衣料や飲食物と競ったら寂れる一方だ。
午前中、ビジネス書の棚へ品出しをする。売れ筋の補充分や新刊ばかり。一歩離れて眺めてみた。認めたくない。だが新鮮味と驚き
ハードボイルド書店員日記【145】
「あ、おはようございます」「おはよう」
珍しく荷物が入ってきた土曜日。早い時間から賑わっている。どうにか午前中に自分の分を出し終えた。
昼休憩から戻り、カウンターでシフト表を見る。変更されていた。30分品出し。社員に訊かなくても意図はわかる。昨日入荷した学習参考書の補充分が、まだブックトラックの両面を埋め尽くしている。担当者である店長は夏休みで出せる人がいない。
「いらっしゃいませ」声掛けを
ハードボイルド書店員日記【144】
「こういうことしてるから、じゃないすか?」
3連休を控えた平日の午前中。穏やかなレジ時間だが手元は忙しない。絵本をシュリンク用の透明なプラスチック袋に詰める。女性誌や幼年誌に付録を挟み、ゴムで留める。カバーも各種折らねばならない。
一緒にカウンターに入った雑誌担当がぽつりと漏らす。朝礼でレジ誤差が続いていると注意された件についてだ。「俺らは買いに来るお客さんにもっと集中すべきっすよ」「まあな」
ハードボイルド書店員日記【143】
「タービの本、ドコデスカ?」
夏休みが目前に迫った灼熱の土曜。親子連れと子どもたちの集団に加え、今年は外国人観光客も多い。品出しがひと段落してレジへ向かうと、問い合わせの人たちが殺到してくる。車から降りるや否やマイクを何本も向けられる不倫疑惑のタレントになった気分だ。
アジア系の女性ふたりを旅行ガイドの棚へ案内する。まさか足袋ではないだろう。ディズニーランド関連の書籍を手に取り、何か言いたげな
ハードボイルド書店員日記【142】
「君が言うならよっぽどだねえ」
メンターが口元をかすかに緩める。前に会った時よりも白髪が増えた。
11坪の町の本屋。かつて指導してくれた人がひとりで支えている。いまでも店長としか呼べない。心の中では永遠にメンターだ。
「まあ棚卸の前は仕方ないけど」「でも店長は社長から怒りのメールで返品を催促されても『棚がガタガタの店では買ってもらえない』と踏み止まっていました」
30箱以上。毎日それだけの