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覚書

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わたしが消えたくなった夜のための
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贅沢な二週間

贅沢な二週間

 歳を重ねるごとに誕生日の過ごし方がわからなくなっている。

 毎年の誕生日を“誰かに祝ってもらう”ことが確定しているわけではないわたしみたいな人間は、どうその一日を過ごすかを自分が考えてあげなくちゃ、ただ孤独を感じる一日になって、特別さが薄らいでいく気がする。わたしはいくつになっても自分の誕生日にうきうきしていたいよ。

 そんなわけで、今年の誕生日、わたしはずっと念願だった免許合宿に行くことに

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深淵なんてもんじゃない

深淵なんてもんじゃない

 どんな人に出逢っても、どんなに好きなものに囲まれても、ずっとむかしにぽっかり空いた心の穴が塞がらないまんまだって?

 おめでとう、それは心の穴なんかじゃない、ブラックホールの赤ちゃんだ。君が発している引力のこと。

 ブラックホールは、光すら脱出できないんだって、絶望みたい。でも、ブラックホールに呑み込まれる宇宙の塵たちは、最期の一瞬、あまりの熱と引力に宇宙で最も輝くらしい。もしかするとその光

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独白

独白

 あなたに手紙を書けたらいいのに、と思う。

 わたしが時間をかけて書いた文章のほとんどは、誰でも見れる場所に投げ込んでばかりいる、だってこの言葉を、同じくらいの深度で受け止めてくれるひとが、いつ、どこにいるかわからない。たった一人のために丁寧に宛てた言葉をひとに贈っているうち、わたしの熱量を上回って受け取ってもらえることは自分が期待するほどあることではない、と感じることが増えた。だからやっぱり、

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しあわせ?ふざけんな

しあわせ?ふざけんな

 自分の暮らしに不満や不自由がない状態や富、名声、絆、才能、美しさ、そういう類のものが有る状態がしあわせだ、と認識されがちだけど、きっとそうではなく、自分が望んでもないのに人生が置き土産にくれた悲しさ寂しさ不条理のすべて、をうっかり開けてしまったときに、それでもまだ自分自身に灯火をともせる心があることを、しあわせだというのだろう 

 ほしいものを手にしていないことが悔しいのであれば、絶対に自分が

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ヘイトを叫べ

ヘイトを叫べ

 なにかに感動したり、ときめいたりすることがめっきり減った。

 以前はどんなものにも心の底から共感したり、自分自身に備わっていないものであれば解ろうと近づいたり、音叉のように心を震わせたり、そうやって好奇心の赴くまま、ひとの心や、それらから生まれたものたちに触れたりしていたのに。

 今はもうなにかを見たり聞いたりしてもへえーすごいねという感じだ。もしかして、ちょっとは五感が肥えたせいかもしれな

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朝寝坊

朝寝坊

 布団から出られなくて魘されるとき、今もわたしは未だ、ずっとなにかと必死に闘っていた頃の自分を思い出す。

 六月は、一年のなかでわたしが二番目に不調になる月だ。この時期は雨や曇りばかりで朝日が差し込まないし低気圧が襲うから目覚めは最悪である。昼まで寝てしまうしそのせいか身体が一日中重くて頭もぼうっとしてやる気も起きない、寝たい、ただ眠りたい、なにもしたくない、そうやって孤独感をすっぽり頭まで被っ

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好きとかもうやめてほしい

好きとかもうやめてほしい

 わたしは今まで、本当は心底好きだとおもってるものたちを「気に入ったから自分の側に置いておいてるもの」だと脳内解釈していたらしい!

 たぶんいつも、自分の選択で側に置いてる、って主導権を握っていたいから認めたくなかったんだ。いやだー!好きなものが忽然と姿を消したり変えたりでもしたらわたしはきっと発狂する、なにかに心を掻き乱されること、そんなのみっともないって何処かで思ってるから、わたしが自分で選

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たからもの

たからもの

 なにかの拍子に自分の幼少期を思い出すと、訳もわからず鼻先がつんとして涙目になる。自分の手が映る主観の記憶もあるけど、大体浮かぶのは、外から見たちいさいわたしの姿だ。想像が生んだ景色かもしれないし、親が撮ってくれたビデオを繰り返し観ていたおかげで染み付いた景色かもしれない。当時のわたしは人と遊ぶとき、楽しんでいた記憶があまりなくて、いつも泣かないように我慢していた気がする。だいじょうぶだよ、と言っ

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大変だけど

大変だけど

 "本来感"という言葉にはじめて出会った。

 「自分自身に感じる本当の自分らしさの感覚」という意味らしい。友人の修士論文、本来感にまつわる調査に協力しますと名乗り出て、唐突に突きつけられた質問、「今、あなたは、自分の職業に対して本来感を抱いていますか」。 

 高校を卒業してすぐの頃、個人事業主になるための開業届を出して、自立しなきゃ、はやく自立しなきゃと奔走していた頃を思い出した。主に写真や映

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喪失

喪失

 今日もケーキ屋さんで買ったパンナコッタのガラスの器が捨てられなくて、わざわざ洗って家まで持ち帰ってしまった。キャンドルの器に丁度良いかな、と思って。

 なんでもかんでも、勿体ないと言ってとっておいてしまうのは、きっと祖母譲りのクセだ。映画の半券だって、偶然見つけたときの、懐かしんで過去に想いを馳せるあのキラキラした気持ち、にいつか遭遇することを期待して、ノートのあちらこちらに挟んでしまう。未来

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漂流

漂流

 どういう話の流れだったか、今日、友人といるときに、すごくひさしぶりに、むかしの自分の文章を読んだ。懐かしさを感じながらも、ただ無我夢中に想いをしたためている自分はとうに別人に感じて、わたしから生まれた言葉は、気づけばわたしからずっとはなれた場所に居てただじっとそこに、わたしの生きていた証を静かに示し続けていた。ちゃんとそこに見えているのに、それはもう過去の光だから、今もそこに在るのかどうかわから

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夏、或る質問への答え

夏、或る質問への答え

 逆説的ですが、わたしの解釈としては、つくることは壊すことだと考えております。
それは、今まで信じて疑うことのなかったことを問い改めて、自分の中で固まっていた価値観や考えを崩す姿勢だったり、あるいは自分を形成していると思うもの、周囲が自分に抱いているであろうイメージや自分が自分に抱いてる期待やプライド、それらを壊すことだったり、途中までつくったものに対して何か違和感を感じたときに、ズレを抱えたまま

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からっぽだった

からっぽだった

 18歳が終わってからもうすぐ半年経つというのに、振り返ると真っ白なのだ。インスタもTwitterも、去年ほどにもがいた跡の引っ掻き傷は残っていなくて、個人事業主になった、テレビに出た、ここには書けないくらいの大事件や悩まされたこと、出来事はいろいろあるはずなのに、なんだか味気ない。味がないというのは澄んでいるという意味ではなくて、自分に起きたことすべてがずっと他人事に感じるということだ。どこかで

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足るを知った話。

足るを知った話。

  こんばんは、すみあいかです。

 短編映画のこととか、紅茶は茶道だと気づいた話だとか、語るべき言葉は積もっているのですが、ちょっと最近、SNSから離れて生活していました。今までも、もう疲れたーって言っていきなりログアウトしたり、一時的にアカウント削除することはあったのですが、今回の場合はどちらかというと、フェードアウトという感じでした。

 結構前から、いい加減にスマホ離れしたいなと思いながら

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