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僕と鹿 (短編小説 I)
僕の父親は猟師。
小さい頃から僕はその様子を横目で見ていた。
僕の地元の長野はジビエという鹿肉の料理が有名で、僕の父の十朗は、地元の森の中にある夏の時期だけオープンする別荘客が多いレストランに鹿肉を提供している。
そのレストランのシェフとは高校の同級生で、昔は相当のやんちゃボーイだったらしいが、今となったら趣味のクラシックカーが似合わない二匹の小太りの小さなおっさんだ。
そんな父とは全く違
短いエッセイ|君の手紙と、金木犀
金木犀の香りがすると、君の手紙を思い出す。
それは春、新しい家に引越したばかりの日のこと。君から引越し祝いにプレゼントを渡したいと、電話がかかってきたのだ。私は「いいよ」と言い、君はやってきた。まだダンボールばかりの空っぽの部屋に、君と私の2人きり。
そして帰り際、君は玄関で恥ずかしそうに
「今は読まないでね」
そう言って私に手紙をさしだした。なんだか甘い香りのするそれは、白地に黄色の花の
ぐりとぐらのカステラを探しに、絵本の世界を散歩する。
本棚から取り出したる1冊の本。
絵本「ぐりとぐら」のすべて。
と銘打たれたこちらの本が、今回のお散歩のガイドブックである。
ぐりとぐらのカステラ
子どもの頃、もしくは子どもと一緒に、はたまた大人になってから、耳にしたことはないだろうか。
〝ぼくらのなまえは ぐりとぐら
このよで いちばん すきなのは
おりょうりすること たべること〟
というあの歌を。
作者の中川李枝子さんは、節をつ
絵本テキスト「ぐるんぐるん〜パパにプレゼントする絵本〜」
「ぐるんぐるん」
〜パパににプレゼントする絵本〜
友人や家族の妊娠・出産祝いを贈る時、ママや赤ちゃんに対してのプレゼントの選択肢はたくさんあるのに、パパへのプレゼントの選択肢って少ないなぁと感じることが多々ありました。
パパへのお祝い絵本をつくりたい!
そう思ってこの絵本テキストをつくりました。
タイトル:ぐるんぐるん
扉
おかおがぼくとそっくりで
こえがとってもやさしくて
「みーつけた
舐められない私になる。
私の性格を一言で良く言えば、優しい。
でも、悪く言えば自分の意見が弱い、人に使われる。
では、生まれつきそんな性格だったのか?
そんなことは全くない。
むしろ、小さい頃は自分の意見がしっかりしていて
周りが右と言っても自分が左なら左にいくことができていた。
それが変わったのが「中学時代」
多感な時期、みんな一度は経験あるかもしれない、友達とのトラブル
きっかけは些細なことだった。
でも、そ
能あるおじさんは爪を隠す。第1話(note創作大賞2024 お仕事小説部門)
あらすじ
「何だこれ??」
トイレから戻ってきた遠藤くんが自分の席に置いてあったメモ帳に目をやると、描いた覚えのないうんちの落書きがしてあった。
困惑しながらメモ帳を眺める遠藤くんに
「もう〜、ダメじゃん仕事中にこんな落書きなんかして〜。
まじめに仕事してよ、えんちゃん!」
遠藤くんの後ろの席からニヤニヤした大林さんがでかい声で話しかける。
どうやら犯人は大林さんのようだ。
「あ!もう〜、こ
【連載小説】「心の雛」第一話
「はい、本日はありがとうございました。お大事になさってください」
朗らかに笑って先生が患者様を見送っている。
ペコリと患者様が——来た時よりは幾分明るい表情で——一礼して帰って行った。玄関のドアがゆっくりと閉じ、先生と私はほっと一息つく。
「あと二回、というところでしょうか、先生」
私が尋ねると、先生はゆるゆると首を横に振った。
「さぁ、それは誰にも分かりません。あと二回の診療で卒業で
日本で一番小さな県で育まれる愛のサイズ【一話】【創作大賞用】
完読時間目安:50分
あらすじ
◇
去年の今頃は、まさかこんな状況になって桜を眺めているだなんて想像すらしていなかった。桜の満開を祝すかのように五年ぶりに開催される歌舞伎の旗が踊っている。
幸助が故郷の香川県琴平町に戻ってきたのは一年前のことだ。高校を卒業して以来の帰郷で、気づけば幸助は二十六歳になっていた。
◇ 春 4月
一年前のその日。
幸助はかつて祖父母とよく来ていた金比羅山の