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枝ちなみ
2021年9月27日 23:02
ついさっきまで、俺はイライラしていたんだ。ほんの少しだけ前、の話。でも今は、放心。というか、無心?それがさぁ、聞いてくれよ。お前らはレモンってどうしてる?なんの?って、そりゃあレモンはレモンだろ。あの、唐揚げとかに付属する、カットレモン。え?他にもあるって?そんなことはどうでもいいんだよ。レモン。これ、いつかける?注文が来て最初にかけるか自分が皿にとってすこしだ
2021年12月1日 20:38
「結婚…するんでしょ」「……まだ、しない」歯切れの悪いその言葉に、腹が立つ。でも好き。私は彼女がとても好き。抱きしめられた時の温もりがシャンプーの香りが寝る時の吐息が全てが私をドキドキさせる。「…何よ、まだって」「だって、まだなんだもの」彼女は私に背を向けて寝転がる。私も同じ布団に入り、彼女を抱きしめた。「…ごめん」「…ううん」いつかは、私の横から居なくな
2021年11月17日 20:04
交差するその模様を見ながら僕の横にいる彼は「全てが直線だったらいいのに」と呟いた「どうして」と僕が聞くと彼は「そうすれば交わることを知らないから」そう言った。前々から彼には不思議なところがある。僕と彼は幼なじみなのだが、たまにボーッとしながら何も無いところを眺め、その後考え事をしていることがある。「何を見てるの」、と尋ねても「何にも見てないよ」という答えが返ってくるその
2021年11月16日 23:18
下の顎にあいつが出来た。私は慌ててビタミン剤を飲む。困る!週末には大好きな阿部くんとデートなのに!そういう時に限って出来るんだよね。本当困る。私は顎のあいつを触りながら鏡を見た。え?なんでちゃんと名称で言わないかって?絶対嫌。なんかこいつを認めた気がするから。治っても治ってもすぐ出来て、挙句の果てに肥大化して増えたりする。なんなの。水もいっぱい飲んでるし、基礎化粧品だって
2021年11月14日 23:27
夕方。私は爪を切っている。夜に爪を切ると親の死に目に会えなくなるとそう聞いて私は育ってきた。周りに言うとそれは迷信だといわれる。子どもが夜爪を切ると危ないからとそこから来た迷信だと。でも私は絶対に夜、爪を切らないようにする。よく考えてみてほしい。この迷信とほかの迷信との差を。「午後に新しい靴を降ろすと怪我をする」もちろんこれは子どもへの注意喚起であると思う。「食
2021年11月12日 20:50
昼休憩。会社の外にあるベンチで私の隣に座っている男の子が、上を見ながら叫んだ。「東京タワーだ!!!」ここは池袋。到底東京タワーなんて見えるはずがない。母親が息子に向かって「東京タワーなんてある訳ないでしょ」と冷たく言い放った。「あるってば!あそこに!」子どもは見ている方向を指さした。私が見ても、その方向にあるのはビルだけ。「だから無い!」「あるってば、見てよぉ」
2021年11月11日 23:36
いっぱい食べる君が好きその歌声がとても好きでいっぱい食べようと思った確かに我慢をする方が太るって言うし、私的にも変なストレスを溜めたくない。だからいっぱい食べようと思った今日もまた聞こえてくる「いっぱい食べる君がすき~」私の愛する歌声がそういうんだもの。いっぱい食べなきゃダメ、よね。私は目の前にあるハンバーグをナイフで切りフォークでさす。そしてそのまま口内
2021年11月8日 20:11
1人、社内で残業していて、ふと思い出したことがある。脳内で再生された声に、私はパソコンのキーボードを打つ手を止める。「このF1のFって、なんの略だと思う?」ちょっと低いようなそれでいて高いような特徴のある声で、隣の席の君は言った。「いや、Functionでしょ。機能」いたって普通な私の声がそう返した。「あー、なるほど」「え、なんだと思ったの?」「いや、特に何、とも。あ、
2021年11月10日 20:20
携帯のケースを買った。ずっと前から狙っていた、落としても画面が割れにくいというケース。何故か分からないが、俺の携帯は落ちやすい。俺の持ち方が原因かもしれないが、それにしてもよく落ちて画面が割れてしまうのだ。いい加減不便で困るし、それを防ぐという意味でもしっかりしたのが欲しかった。元々俺はスマホケース否定派で、無しの方が持ちやすいし、何よりスマホリングが付けやすいので好きだった。
2021年11月3日 19:42
待ち合わせ場所の時計台の下でAが待っている。そこにBが来る。A「よぉ」B「よぉ」歩き始める2人。周りはクリスマスではしゃぐカップル達。A「あ、って言ったら負けゲーム、しようぜ」B「なんだよそれ」A「言葉の通りさ。あって言ったら負け」B「あ、つまりこういうこと?みたいなこと?」A「そうそう。人間がよく使いがちやつ」B「なんだよその言い方(笑)」A「よくいるじゃん、言葉の
2021年10月24日 23:56
蝉の鳴く声が遠くにも響かなくなった季節僕は今旅をしていますふわりふわりと気持ちを宙に浮かせ僕自身を誰も知らない街を旅していますそこには何も無くて人もいない嫌いもなければ好きもない平和な街街を歩く中で僕はとあるお店を見つけたので入ってみました入った先に勿論店員はいなく雑多な食器が並んだ食卓が1つ使われた形跡もなくただ並べられた食器たちを見て僕はまた
2021年10月17日 23:47
ウォークインクローゼットがあればこんな面倒な衣替えいらないのに。そう思いながら積み上がった冬服と棚に入る夏服を交互に見た。終わる気がしないその量に深いため息をつくのは毎年恒例。仕事があるから昼はできない。だから夜にまとめてやる。でも明日も仕事だし、本当に面倒。私は片付けが苦手。だからやり始めるまでに時間がかかる。私にお金があれば、家政婦さんを雇ってやってもらうのに。私が魔法
2021年10月16日 23:45
夜、帰宅。ベッドの上にカバンごと飛び込む。今日は友達のアケミと久々のショッピングで、つい浮かれて色々買ってしまった。カバンから財布を出し、レシートを見る。なんでこんなもの買ったんだろうって後悔する。訳の分からない顔をしたお揃いのくまのキーホルダーと、大して可愛くない銀色のピンキーリング。その場では、とても可愛いと思った。だから買った。でも家に帰って見てみると、さほど可愛くない
2021年10月13日 21:26
実家から沢山のりんごが届いた。「いや…嬉しいよ、嬉しいんだけど」段ボール1箱分のそれは、一人暮らしの許容量をゆうに超えていた。数にして30個。1日1個で1ヶ月。「りんご好きなら…行けるのか…?」そう思いながらまずは1つ、皮をむいて食べた。昔母から教わった、簡易的なりんごの剥き方。アニメのようなとぐろを巻いた皮は出来ないけど、しっかり溜まった蜜を逃がさない、そんな剥き方。