届いたりんごの行方
実家から沢山のりんごが届いた。
「いや…嬉しいよ、嬉しいんだけど」
段ボール1箱分のそれは、一人暮らしの許容量をゆうに超えていた。
数にして30個。
1日1個で1ヶ月。
「りんご好きなら…行けるのか…?」
そう思いながらまずは1つ、皮をむいて食べた。
昔母から教わった、簡易的なりんごの剥き方。
アニメのようなとぐろを巻いた皮は出来ないけど、
しっかり溜まった蜜を逃がさない、そんな剥き方。
「甘い…」
思わず口に出してしまう程の蜜が乗った甘いりんご。
これを、私だけが堪能するなんて勿体ない!!
私はスマホを取り出し、りんごの写真を撮り、
SNSに貼り付けた。
"友人へ
りんごがたくさん届きました。
欲しい方いたら数をコメントください"
断面図も載せた方が良かったかな、と思いつつ投稿。
30分後、友人Aからコメントがついた。
「剥いてくれるなら欲しい」
「それはオプション500円です」
純粋に欲しそうなコメントではなかったので軽くあしらった。
その5分後。
友人Bがコメントをつけた。
「りんご!!すごいね!4つ欲しい~」
「4つね!了解!LINEする!」
明確な数字と欲しいのコメント。
私は音速でコメントを返した。
その子とは明日、駅で落合い渡すことになった。
4人家族の、お母さん。
それ以降なかなかコメントはつかず、
いいねがつくばかり。
「職場に持っていこう…」
そう思った時、
ふと鳴ったLINE。
会社の、先輩からのLINE。
でもそれは、少し私が気になってた人で。
「りんご、あるの?」
ただそれだけの言葉。
でも、どんなコメントよりも
どんなLINEよりも
一瞬で返そうと思った。
あります|
いや
欲しいですか?|
いや、、
良ければお渡ししますよ!|
これだな。
一瞬とか言いながら、既読つけてから返信に5分もかかってしまった。
実質、誰よりも1番遅い返事。
すぐに既読がついて
「うん、ありがとう」
と返ってきた。
はい、何個ですか?|
と打ったら
「好きなだけ、ちょうだい」
と来て。
思わず、その『好き』に反応して
りんごのように真っ赤になった。
今日は、その翌日。
ドキドキしながら
先輩の分のりんごを持って会社に向かう。
あえて3つ。
もっと欲しいって言われたら
また持っていく。
いつか、直接剥いてあげられる日が来たら。
なーんて。
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