見出し画像

夜爪を切る

夕方。私は爪を切っている。

夜に爪を切ると親の死に目に会えなくなると
そう聞いて私は育ってきた。

周りに言うとそれは迷信だといわれる。

子どもが夜爪を切ると危ないからと
そこから来た迷信だと。

でも私は絶対に夜、爪を切らないようにする。

よく考えてみてほしい。
この迷信とほかの迷信との差を。

「午後に新しい靴を降ろすと怪我をする」
もちろんこれは子どもへの注意喚起であると思う。

「食べてすぐ寝ると牛になる」
これもそうだ。まぁ子どもと言うより、大人にも当てはまるか。

ただ、「夜、爪を切ると親の死に目に会えなくなる」これだけ、何だかおかしいのだ。
なんだかおかしく感じるのだ
周りの人に言うとおかしく感じる理由がわからないと言うが、私はなにか変に思えるのだ。

何故、親の死に目?

子どもへの注意喚起なら、足に怪我をするで良いではないか、と。

だからとても不気味に感じるのだ。

だから私は爪を切るのは夜ではなく夕方までにしている。
切った爪を眺めて、私はティッシュを丸めて捨てた。

スッキリした手を見て、またやる気が出る。

「よしっ!」

私はキッチンへ向かい、フライパンに油を敷く。
今日の夕飯は野菜炒めにしよう。

その日の野菜炒めは、とても美味しくできた。

翌日。私の家の隣の男性が亡くなったと連絡が入った。

夜勤ばかりの人だったから、疲れていたのだろうか。
何も外傷がない、不審な死であったらしい。

ただその近くには

切られた爪がばらまかれていたそうだ。

まるで何かに食われたような
いや、まるで何かに切られたような

そんなズタズタな、爪だったらしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?