見出し画像

12.25に彼らがするゲーム


待ち合わせ場所の時計台の下でAが待っている。
そこにBが来る。

A「よぉ」
B「よぉ」

歩き始める2人。
周りはクリスマスではしゃぐカップル達。

A「あ、って言ったら負けゲーム、しようぜ」
B「なんだよそれ」
A「言葉の通りさ。あって言ったら負け」
B「あ、つまりこういうこと?みたいなこと?」
A「そうそう。人間がよく使いがちやつ」
B「なんだよその言い方(笑)」
A「よくいるじゃん、言葉の最初にあってつけるやつ」
B「わかるよ、わかるけど。何でそれを使ったら負け?」
A「意外に難しそうだから。使わないこと」
B「まぁ確かにな。気をつけないと言っちゃいそうだ」

前方から歩いてくる男。
歩きスマホ。
そのままBにぶつかる。

B「あ、すみません」
A「あ、言った」
B「あ、お前も言った」
A「あ、マジだ。やべっ」
B「おいおい何回続けるんだよ」
A「難しいなー。でもこれがデスゲームだったら、お前もう死んでたな」
B「こんなバカみてぇなデスゲームあってたまるかよ」
A「まぁ、確かに」

再び歩き出す2人。
大きなクリスマスツリーの前を通り過ぎる。

B「で、これ負けたらどうすんの?」
A「…考えてなかった」
B「おいおい、何でそんな提案したんだよ」
A「何か買うか?」
B「いや、それじゃつまらねぇな」
A「よし分かった。勝った方が何か1つ秘密を言うってのはどうだ?」
B「何で勝った方なんだよ?」
A「男気、的なあれさ」
B「なんだそりゃ。まぁいいけど」

前方から迫るカップル。
ギリギリで避けるA。

A「危ねぇ」
B「いや、ぶつかっても言わなきゃいいだけじゃん」
A「いや、そうだけどさ、ひょんなことから漏れるかもしれないじゃん」

2人は周囲を警戒しながら歩き始める。
2人の動きを見てくすくすと笑う人たち。

A「そんなに、俺に言いたい秘密があるのかよ?」
B「お前こそ」
A「俺は…ねぇよ」
B「それはあるやつの間だよ」
A「負けたくないだけだよ」
B「そりゃそうだ」

ケーキ屋の前にサンタ。
ケーキの箱を持ってベルを鳴らしている。

Bの電話が鳴る。

B「ごめん、ちょっと電話だ」
A「いいよ、出てこいよ」

少し離れるB。
サンタの方へ歩いていき隣のベンチに座る。

B「もしもし。あ、その件ですが今」
A「あー」

Aは懐からサイレンサー付きの銃を出し、
Bを撃ち抜く。

サンタのベルとクリスマスの喧騒が相まって、周りは気付かない。

Bの元へ寄るA。
電話の向こうの人間に何かを話すB。
Bを人混みから隠すように立つA。

B「すんません…しくじりました…」
A「残念。俺の勝ち。俺はお前の暗殺を頼まれてた殺し屋でしたー」
B「お前のそんな秘密は…知ってたよ」
A「だろうね」
B「何で…俺を…」
A「デスゲーム。考えてたでしょ」
B「……」
A「変な組織と組んでさ」
B「変な組織じゃねぇ。神の名のもとに、だ」
A「ま、それを食い止めるように言われてたの」
B「あー、…あと少しで…勝てた、のになぁ」
A「どうして?勝てるわけないじゃん」
B「お前は、絶対にあ、って言う」
A「何の負け惜しみを」
B「俺も、お前を殺すように、言われてた」
A「な」

その瞬間、クリスマスツリーが爆発。

Aは爆風でかなり吹っ飛ぶ。

A「あ、やられた」

Aは激しく壁に打ち付けられ全身を強く打つ。

B「へ、ほら見ろ。人間は、ふとした瞬間に、あって、言うんだ、ろ」

2人、絶命。

2021年12月25日。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?