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画面が割れる理由


携帯のケースを買った。
ずっと前から狙っていた、落としても画面が割れにくいというケース。

何故か分からないが、俺の携帯は落ちやすい。
俺の持ち方が原因かもしれないが、
それにしてもよく落ちて画面が割れてしまうのだ。

いい加減不便で困るし、それを防ぐという意味でもしっかりしたのが欲しかった。

元々俺はスマホケース否定派で、無しの方が持ちやすいし、何よりスマホリングが付けやすいので好きだった。

カチッと音がして、スマホケースが俺の携帯を包む。
なんてことないその作業がすごく新鮮に感じて、俺はスマホケースをスっと撫でた。

「ふ」

何やってんだ俺、と心の中で呟き、
少し恥ずかしくなってスマホをバンッとテーブルに置いた。

彼女が出来たらお揃いにしたいとか思ってたっけなぁ。

色違いとか、

あのテーマパークのキャラとか、

あとは、

なんだろ、ブランドロゴ?

結果そんな考えつかないということは
考える機会が無かったということだ。

「ふ」

俺は昔のことだ、とまた心の中で呟いた。

そうだ、いいことを考えた。
もし彼女が出来たら、この最強ケースをお揃いにしよう。

まぁ何にせよ、俺のスマホはもう最強。
落とされても投げられても割れることはないし。

なぜなら強いと有名なケースを買ったからな!!

あ、ついでに気になってるマホちゃんに連絡しよ。
今回も願掛けしよっかな。マホちゃんに告白するまでに画面が割れなかったら、俺は絶対付き合える!

なーんて!!

そんなことを思いながら、俺は机のスマホを持ち上げる。


軽い。

…軽い??

俺は慌ててスマホケースを確認する。

ケースの中には携帯はなく、空っぽ。

え、何?ハマってなかったってこと?

「でもカチッて音が…」

机に残っている裏返しのスマホを見ると、
カメラの所にプラスチックの枠がくっついていた。

「え、何これが外れてハマってなかったってこと?え?そんなことある?」

確かに、初めてケースにはめた時、微妙にしっくり来なかった。
でもまぁ、こんなもんかとは思っていた。

「なんだよ、もー」

俺はスマホを持ち上げる。

ザリッ…

「え…」

表面に感じたこの感覚。
紛れもなく、俺が知ってるあの感覚。

ゆっくりスマホを表にする。

世界がスローモーションに変わる。

思い出されるあの瞬間。
俺が机にこいつを置いた、あの瞬間。

音がなるほど、強く置いた!!!!!

そのスマホの画面が目に入った瞬間、
俺は思わず微笑んだ。

「油断、大敵…」

スマホの画面はしっかりと、割れていた。

どうやら俺に彼女が出来る日も、
程遠いようだ。

「あーあー、俺はずっと1人なのかなぁ」

落ちておかしくなったのか、AIが俺に話しかけてくる。
「大丈夫です、私がそばに居ますよ」

俺は秋の夜ただ1人静かに、携帯ショップに修理依頼をするのだった。


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