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ふわりふわりと少年は


蝉の鳴く声が
遠くにも響かなくなった季節

僕は今
旅をしています

ふわりふわりと
気持ちを宙に浮かせ
僕自身を誰も知らない街を旅しています

そこには何も無くて
人もいない
嫌いもなければ
好きもない

平和な街

街を歩く中で僕は
とあるお店を見つけたので入ってみました

入った先に勿論店員はいなく
雑多な食器が並んだ食卓が1つ

使われた形跡もなく
ただ並べられた食器たちを見て

僕はまたふわりふわりと店を出ました

カラフルな扉があったので
扉を開けるとそこには綺麗な布団が
ビリビリに破れて落ちていました

ふわりと
ふわりふらりと僕はまた扉を出て

ふらりと
ふらりふらりと僕はまた歩きだしました

誰もいない
誰も僕を知らない街は

何も言わず僕を受け入れてくれます

僕がボロボロでふらふらでも
誰も理由を聞いてこないのです

だって誰もいないから

僕はずっとここにいたくて
永遠に旅を続けようと思いました

僕は僕で生きることを
認めてくれる世界に生きていたいのです

だからお母さん

だからお父さん

どうか僕を忘れて幸せになってね

僕は死んで、永遠の旅をするのです

旅の途中で見つけたリンゴを齧り
ボクはゆっくりと前に歩き出す

ヒュっと高いところから落ちた気がした

齧ったりんごは砕け散り
僕の周りに跡を残した

僕は幸せの中を
永遠に生きることにしました

ふわりふわりと
ふらりふらりと

この命を生きていたいと思いました

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