【祖国を憂う全ての諸君へ!】政治哲学考究 Ⅱ ジョン・ロック『統治二論(市民政府論)』と暴走する天賦人権説
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政治哲学考究シリーズまとめ
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「政治哲学考究 Ⅰ トーマス・ホッブズ『リヴァイアサン』と権利及び国家への憂い」に始まった『政治哲学考究』シリーズ。
第二弾では、ジョン・ロックに依る『Two Treatises of Government(統治二論又は市民政府論等と呼ばれる)』を扱おうと思う。
『Two Treatises of Government』は様々な訳が出版されているが、今回は「政治哲学考究 Ⅰ トーマス・ホッブズ『リヴァイアサン』と権利及び国家への憂い」(以下「前稿」)に於いて扱った『リヴァイアサン』と同じく、加藤節氏の訳を選んだ。
加藤節氏の訳を選んだ事に、特に深い意味は無い。
『政治哲学考究』シリーズについての御説明を以下に記しておくが、前稿と全く同じ文であるから、必要に応じて読み飛ばしてもらって問題無い。
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前稿の公開が先月の18日であり、其の後数日、他の書籍を愉しんで過ごした後、私は直ぐに『完訳 統治二論 ジョン・ロック 著 加藤節 訳』を開いた。
私はジョン・ロックにあまり良い印象を持っておらず、自分のデスクで読んでばかりいると息が詰まるものであるから、先月と同様にとはいかないが、時偶例の喫茶店に御邪魔させていただいた。
地元の、歴史ある、然し小ぢんまりとした喫茶店に於いて、珈琲と煙草を愉しみながら読書に耽る 。
やはり贅沢であり、優雅な気分である。
皆様にも是非お勧めしたい。
政治、教育、宗教等々、様々な分野を研究していたジョン・ロック(一六三二~一七〇四)の『Two Treatises of Government』即ち『統治二論』(以下『統治二論』)は、1689年に出版され、アメリカ独立宣言やフランス人権宣言に大きな影響を与えたとされる政治哲学書であり、王権神授説への反論である前篇(第一論)と、社会契約について論じた後篇(第二論)から成る統治「二論」の構成となっている。
ロックの社会契約論は現在に於いても好意的に受け止められており、「近代」を築いた思想家の代表的な一人として扱われている、と言って差し支え無いだろう。
『完訳 統治二論 ジョン・ロック 著 加藤節 訳』の表紙(ブックカバー)には、次のように書かれている。
前稿に於いて述べた通りホッブズは中学校の公民教科書から排除されているそうだが、ジョン・ロックは現在に至っても、代表的な啓蒙思想家の一人として教科書に鎮座している。
ホッブズが教科書に記載されていなかったかについては昔の事であるから正確に覚えていないが、少なくとも、授業ノートに基づいて暗記した啓蒙思想家が「ロック、ルソー、モンテスキュー」の組み合わせであった事は未だに覚えているものだ。
前稿に於いて「私が『リヴァイアサン』の存在を明確に意識したのは、総合安全保障シンクタンク・日本平和学研究所の機関誌『湊合』創刊号、"政治哲学論考 Ⅰ 近代政治学という「神学」ーー人権神授説はいかに誕生したか" の特集に触れた際であった」と述べたが、ロックの『統治二論』についても同様にである。
小川榮太郎氏は「政治哲学論考 Ⅰ」に於いて「ヨーロッパの知識人が、ホッブズのリアリズムではなくロックの神学を選んだ時、近代政治理論の虚偽と流血の運命は定まった」と看破した。
「人権」思想の危うさを捉えて我が国の今後を案ずるに於いて、私は之を非常に重要な指摘であると考える。
ロックの論には、凄まじい欺瞞と神学的要素が含まれていたのである。
本稿に於いては、ロックの論とホッブズの論とを対比しつつ、現代日本に巣食う病理について考えたい。
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但し、私はロックの全てを否定する訳ではない。
言う事全ての正しい人間が存在し得ないように、言う事全ての誤った人間も存在し得ないのである。
例えば、ロックは「緒言」に於いて、「私は、常に、要点に良心的な配慮を払い、十分な根拠をもって自らの疑念を示していると思われる人には満足のいくように答える義務を負っているとみなしているとはいえ、悪口雑言は議論ではなく、揚げ足取りや悪口雑言は顧みるに値しないと考えている」(『完訳 統治二論』20頁)と述べている。
現代日本人が100回は口に出して読むべき文である。
昨今、リベラル極左勢力は以前からであるが、「保守」を自称する勢力迄もが、要点に良心を払って根拠を示す事無く、唯々感情に任せた悪口雑言、誹謗中傷を繰り返すばかりとなっている。
SNSにはディスインフォメーション(誤情報)と罵詈雑言とが溢れ、国益を論ずる空間は日に日に縮小を迫られている。
此の様な言論空間が、我が国の国益に資し、何か事を良い方向へと進め得るだろうか。
悪口雑言は何も生まないのである。
確かに、根拠を示した真剣な言論よりも、根拠を問わず造り上げた "悪魔像" に悪口雑言を投げつける方が、手軽に勧善懲悪を気取りたい者を集め易く、金を儲け易いのかも知れない。
其の収益が数百万、数千万、数億ともなれば、笑いは止まらず妄言を吐き続ける口も止まらない事だろう。
然し、悪口雑言は何も有意義なものを生まず、益を生み出さないばかりか、往々にして国益を害するものである。
SNSにデマや陰謀論をばら撒いて金を稼いでいる皆様に、少しでも良心があるのであれば、自分のしている事の罪を能々考えてもらいたい。
そして、"インフルエンサー" や "言論人" の言葉を鵜吞みにしている皆様に於かれては、自分が信用している相手は本当に信用に値するのか、信用に足ると言える根拠は何か、能々考えてもらいたい。
今、信用している相手が信用できない、嘘を流布する人物であったならば、貴方は「騙されて養分にされている」という事であり、恥を晒し続けさせられている、という事である。
今一度、「要点に良心を払って根拠を示す」という原点に還ろう。
「常識」に還ろう。
私自身、自分の言動が品の良いものであるとは言わないし、時に強い言葉を用いる事もあるが、最低限、議論の要点を示し、根拠を示して話を進めているつもりだ。
『父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ德器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ』(教育勅語)
己は恭儉の心を持しているか、博愛を大衆に及ぼすべく努めているか、学を修め智能を啓発すべく研鑽しているか、徳器の成就を期しているか、其の行動は「公益を広め」る事に繋がるか。
我々は一度、根本に立ち返るべきである。
此の論稿は、其の為の一つに外ならない。
現在の我が国に於いては、ラディカル・リベラリズムの訴える、際限無き「人権」「自由」ばかりが注目され、「人権」や「自由」とは何であるか、「人権」や「自由」を制限し得るものがあるとすれば其れは何か、等の議論が軽視されている。
私の読解は未熟であるかも知れないが、持ち得る全力を尽くし、今此の外来イデオロギーに揺れる我が国の未来の為に、「政治哲学考究 Ⅱ ジョン・ロック『統治二論(市民政府論)』と暴走する天賦人権説」を皆様に問いたい。
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ロックは前篇第一章の「序論」に於いて
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