マガジンのカバー画像

美味しい北東北

36
北東北の食に関する記事やつぶやきまとめ
運営しているクリエイター

#ご当地グルメ

実家のレシピの梅干しならぬ「梅漬け (杏漬け)」と、津軽地方の伝統保存食「紫蘇巻梅」を作りたかった

実家のレシピの梅干しならぬ「梅漬け (杏漬け)」と、津軽地方の伝統保存食「紫蘇巻梅」を作りたかった

「梅の実を塩漬けにした保存食」と言われれば、日本全国で一般的なものは梅干しだろう。
 梅干しを作った経験がある人はわかると思うが、梅干しはその名の通りに途中で梅を干す工程が入る。そのおかげで適度に水分が無くなり、独特の食感が生まれると共に携行性が増し料理にも使いやすいというメリットが生じる。

 対して秋田県や青森県などの北東北の一部地域では、この「干し」の工程を挟まない梅漬けという保存食が存在す

もっとみる
助宗たらの丸干しは過小評価すぎやしないか

助宗たらの丸干しは過小評価すぎやしないか

 北東北の太平洋側のスーパーでは、よくタラの丸干しという干物が売られている。

 丸干しと言っても頭と内臓を取り除いたドレスと呼ばれる状態で干したもので、さらに言えばタラはタラでもよくイメージされる大きなマダラではなく助宗たら (標準和名はスケトウダラ、あるいはスケソウダラ)と呼ばれる大きくても30センチ程度の小ぶりなものだ。
 助宗たらと言われてもピンとこない方も多いかもしれないが、いわゆるタラ

もっとみる
【岩手県花巻市】「Wildcat House 山猫軒」で宮沢賢治の世界を味わう

【岩手県花巻市】「Wildcat House 山猫軒」で宮沢賢治の世界を味わう

“二人の若い紳士が、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴかぴかする鉄砲をかついで、白熊のような犬を二疋つれて、だいぶ山奥の、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを云いながら、あるいておりました。

「ぜんたい、ここらの山は怪しからんね。鳥も獣も一疋も居やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、やって見たいもんだなあ。」
「鹿の黄いろな横っ腹なんぞに、二三発お見舞いもうしたら、ずいぶ

もっとみる
八戸の館鼻岸壁朝市で買った謎の「ヤマモモ」と産直ならではの出会いを愛でる

八戸の館鼻岸壁朝市で買った謎の「ヤマモモ」と産直ならではの出会いを愛でる

 一般的にヤマモモというと、漢字で楊梅と書かれることが多い鮮やかな赤い果実をつける植物を指すと思う。

 しかし青森県の三八地方 (※)ではお盆明けの短い時期に、同じく「ヤマモモ」の名で呼ばれる謎の果実が売られていることがある。

※ 八戸市を中心に、階上町や五戸町などの青森県南東部の地域

 今回この「ヤマモモ」を購入したのは、青森県八戸市で行われている館鼻岸壁朝市だ。

 館鼻岸壁朝市は毎週日

もっとみる
【育てて食べた】復活した青森の伝統野菜 糠塚きゅうりはデカくて甘くてジューシーで旨い

【育てて食べた】復活した青森の伝統野菜 糠塚きゅうりはデカくて甘くてジューシーで旨い

 日本全国には、伝統野菜として古くから栽培されてきた野菜が数々ある。

 各地域毎で長年に渡り品種改良が行われてきた作物たちはそれぞれ独自の性質を有している。その多様性は時に今現在広く栽培されている主力品種のベースとなり、日々様々な品種が作られては我々の食卓に登っている。
 例えば現在寒冷地で広く栽培されているニンニクの品種である福地ホワイト六片は、かつて青森県に存在した福地村 (現在は南郷村に編

もっとみる
マアナゴではないアナゴの「沖はも」を、広島の郷土料理のアプローチでうなぎの蒲焼に近づける

マアナゴではないアナゴの「沖はも」を、広島の郷土料理のアプローチでうなぎの蒲焼に近づける

 以前記事にした「沖はも」ことイラコアナゴは、主に北海道や東北地方の太平洋側で漁獲される深海魚であり、これらが漁獲される地域では缶詰などの加工品はもちろん、大衆魚として親しまれている魚だ。
 マアナゴの代用魚として扱われることも多い本種だが、脂が乗ったこってりとした身とねっとりとした独特の食感はマアナゴとはまた違う旨さがある。

 さて、この記事の投稿日の前日である2024年7月24日は土用の丑の

もっとみる
花見といえば団子より桜餅よりカニ。そんな文化が青森にある。

花見といえば団子より桜餅よりカニ。そんな文化が青森にある。

 2024年。4月も半ばの今、北東北は桜の盛りを迎えている。
 花見の定番といえば、間違いなく団子と桜餅だろう。桜の名所と名高い青森県の弘前公園でも、桜祭りの季節には有名な花より焼き団子などが売られ、コンビニやスーパーでも関東風・関西風問わず様々な桜餅が売られている。

 しかし青森では、団子や桜餅と並んで一風変わったものが花見の定番としてこの時期にもてはやされている。
 それがタイトルにもある通

もっとみる
「珍味」より「佳味」と呼びたいヌタウナギ

「珍味」より「佳味」と呼びたいヌタウナギ

 ヌタウナギという魚がいる。
 厳密には無顎類という魚類とは違うグループなのだが、広義では魚に含む場合もあり、しかも「魚屋に売っている魚っぽい生き物」なので当記事では魚として扱う。

 その独特のビジュアルや「ピンチになるとスライム状の粘液を体から放出する」というそろそろポケモンのモチーフになりそうな特徴的すぎる生体からか、鉄腕DASHなどのテレビ番組で幾度となく取り上げられており、数々のライター

もっとみる
「八戸ブイヤベース」が美味しすぎたので、直売所を回って集めた食材で自作した

「八戸ブイヤベース」が美味しすぎたので、直売所を回って集めた食材で自作した

 青森県の八戸市では、毎年2月1日から3月の終わりまで八戸ブイヤベースフェスタというイベントを開催している。
 ちょうどえんぶりの期間と重なることもあり、えんぶりを見に来た際にポスターなどを見かけた方も少なくないと思う。

 このイベントの期間中、八戸市内の様々なレストランでは八戸港で水揚げされた魚介類を用いた各店舗オリジナルの八戸ブイヤベースが提供される。
 ブイヤベースはフランス南部などで見ら

もっとみる
ハモじゃない!マアナゴでもない!でも美味しい!「沖ハモ」の旨さを再確認する

ハモじゃない!マアナゴでもない!でも美味しい!「沖ハモ」の旨さを再確認する

 青森県や岩手県の魚屋では、時折「沖ハモ」と表記された細長い魚が開かれた状態で売られている。

 ハモは基本的に暖かい海で獲れるはずなのに、多くの場合表記されている「青森県産」または「岩手県産」の文字と、透明感のあるハモの身とは似ても似つかない真っ白い身からわかる通り、この魚はハモではない。
 この魚の正体はイラコアナゴという太平洋の深海に生息する魚だ。

※このイラコアナゴという名称については、

もっとみる

生のウニを乗せた「ウニ丼」もいいですが、ウニの炊き込みご飯「うにめし」も捨てがたい。見た目こそ地味ながら、一口食べればウニの香りを存分に味わえる料理ということがわかるはず。それにつけても、加熱で甘味が増したウニの旨さよ。
写真は岩手県久慈市の小袖海女センターにて購入したもの。

美味しかったお店紹介。
青森県野辺地町の「のへじ活き活き常夜灯市場」の海鮮丼。休憩に立ち寄ってみたら併設されていた食堂の雰囲気がやたらと良かったので、普段はまず頼まない海鮮丼を頼んだところこれが大当たり。これでもかと乗った日替わりの海鮮は勿論、名物のあら汁や小鉢まで隙がない。

「山のきぶどう」と改めて向き合う

「山のきぶどう」と改めて向き合う

「山のきぶどう」という、清涼飲料水と健康食品の中間のような飲み物が主に北東北……というか岩手県と青森県の一部にある。個人的には高齢の方が農作業の合間に飲む、というイメージがある。
 製造地である岩手県内ではこれを使ったゼリーが土産物屋に並んでいるので、そちらで知っている人も多いかもしれない。
 これは「ヤマブドウ」という日本在来のブドウの仲間の100%ジュースであり、北東北であればスーパーや道の駅

もっとみる