まだ暗い早朝。目の前を救急車がサイレンを鳴らしながら走る。 乗っている人が無事に家族の元へ戻られますように。 いま、看取り段階に入った母の見送り方や介護のことをきょうだいと話せるこをとても幸せと思う。 突然のサヨナラではそんは余裕はないものね。
三十年近く愛用していたカップアンドソーサーが割れた。毎日一緒に過ごしてくれた器。これが割れたらどうしようと想像する度、代わりはないと頭を振って考えないようにしてきた。喪失感で何も手につかない。泣きじゃくる私に「黄色い器さんの代わりね」と、黄色い服を着た母が、頭を撫でてくれた。