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全ては幻想。愛も欲望も満たすことができない、追えば追うほど捕らえられない白ウサギ。ではどうする?『フワっと、ふらっと、精神分析(フロイト心理学)Ⅲ』
1. 映画「マトリックス」の元ネタ『シミュラークルとシミュレーション』現実性なき虚構の世界。
ボードリヤール(フランスのポストモダン思想家)の「シミュラークルとシミュレーション」という本は、
映画「マトリックス」を制作する際に制作者が参考にしていたようで、映画の中にも同書が映し出されるシーンがあったようです。
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シミュラークルとは、
「複製としてのみ存在する、実体をもたない記号であり、その記号がひとり歩きして現実を喪失する状態をいう。」
とされています。
また実在のない記号、オリジナルなきコピーと呼ばれたりもします。
秋葉原や大阪・日本橋のメイドカフェの
「メイドのコスプレしたウェイトレス」
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などは、シミュラークルかもしれません。
なぜなら、メイドカフェのメイドは、
本物のメイド、オリジナルである家政婦を完全コピーしているわけではありません。
本物のメイドとは明らかに違います。
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メイドカフェのメイドは、オリジナルをコピーしたものではなく、
オリジナルなきコピーである、シミュラークルであり、
そんなシミュラークルで構成されるメイドカフェは、
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実在がない記号にすぎない、「バーチャルリアリティの世界」
(これを、「現実性なき虚構の世界」あるいは「ハイパーリアル」といいます)
だといえましょう。
しかし、これが様々な要素を巻き込みながらコピーされ続け、
例えば、2001年に生まれたメイドというシミュラークルは、
萌え文化を生み出し、AKBグループを生み出すといったような形で、
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大勢の人々をも巻き込んで、記号の一人歩きがはじまり、
巨大なハイパーリアル世界を作り出し、
いまやメイドといえば、メイドカフェのウェイトレスを指すという、
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記号と現実が入れ替わるといったようなところにまできています。
そして人々は、知らないうちにそんなハイパーリアルな世界に閉じ込められてしまうというわけです。
現代社会は、あっちをみてもこっちをみても、シミュラークルだらけの、
(インターネットもパソコンも携帯もスマホもそうかもしれません)
ハイパーリアルの時代であるとボードリヤールは考えていたようです。
2. フロイトの正統後継者を自認するラカンの思想
映画・マトリックスの制作者は、出演者等に、ボードリヤールの「シミュラークルとシミュレーション」を読めということで、渡していたようですが、ラカン関連の本も同様に渡して読むように言っていたようです。
なので、映画「マトリックス」は、
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ジャック・ラカン
(フロイト精神分析学の正統後継者を自認する精神分析家で現代思想家)
の影響も受けているのかもしれません。
(フロイト精神分析学については以下をご参照ください)
そんなラカンの理論の概要は以下のようになります。
ラカンによれば人間が生きる世界は、
「現実界」・「想像界」・「象徴界」
の3種があるといいます。
ラカン理論を解釈する者によっては、
現実界=エス(欲動の貯蔵庫)
想像界=自我(私が「これが私だ」と思っているもの)
象徴界=超自我(自我にとって理想であると同時に、禁止するもの)
と、このように、
フロイト理論に対応するといっていたりするので、
世界というよりは、心的構造を表しているのかもしれません。
心こそが世界を表出するとする、仏教の唯識論のような考え方をすれば、世界構造といえるかもしれませんが。
(唯識論については以下をご参照ください)
ともあれ、「現実界」・「想像界」・「象徴界」をもう少し、イメージしやすい形で表すと以下のようになります。
『現実界』
プラトンのいうイデア(物事の真の姿、目には見えない完全なる本当の世界)、
カントのいう物自体(究極のもの)にも相当するかもしれない、真の世界で、認識も操作もできない領域。
コンピュータグラフィックスで作られた映画をここでいう世界に例えると、現実界はハードウェアに相当します。
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映画マトリックスでいうと「主人公が目覚めた世界」。
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『想像界』
容易に認識できかつ操作可能な世界。
想像界という名になっていますが、
私達が現実だと思っているこの世界、
現実世界だと思っている世界のことです。
しかし、現実ではない、仮想現実の世界です。
言語を用いることがまだできない、
幼児が見ている世界にはこの想像界しかないとラカンはいいます。
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ということは、いいかえるとイメージの世界ともいえます。
言葉がなくても把握できるということですから・・。
コンピュータグラフィックスで作られた映画におきかえると、画面上に現れたその映画の登場人物達、空間の画面イメージ。
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ディスプレイに映る世界。
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いずれにしても、今目の前に見えている世界が想像界で、
しかし、これは、感覚器官を通じて意識に現われたものであり、
しかも、
本当の現実世界を見てからタイムラグがあって認識していますので、
ありのままの世界(「現実界」)を見ているわけではありません。
さらに、事物の秩序
(後述する象徴界。言語・法・その他の社会規則・道徳・知識・物理法則等)
のフィルターを通じてみているので、なおさらありのまま見ているわけではありません。
つまり、想像界は仮想現実だということになります。
映画マトリックスでいうと「マトリックスの中」。
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『象徴界』
法・言語等の象徴的秩序がもたらされた世界。言葉で構成され、意識・無意識を刺激するもの。
想像界という仮想現実を構成する見えないルール。
コンピュータグラフィックスで作られた映画におきかえると、「プログラム」。
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映画マトリックスでいうと「マトリックスのプログラム」。
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なお、前述したように幼児の世界にはこの象徴界はないけれども、
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