幸せを測るモノサシとは? Well-Beingを高める「SPIREモデル」の活用
「おお、また一つWell-beingを測るモノサシが増えた。上手に使いこなしたいな」
幸せの概念として注目度が高まっているWell-beingという概念。先日、別の記事でもWell-being理論から考える「PARMAモデル」という5つの構成要素を紐解いて幸せを手繰り寄せる手法を考えました。
この記事でご紹介したパーマモデルがこちら。
【PERMA(パーマ)モデル】
POSITIVE EMOTION :前向きな気持ち
ENGAGEMENT :没頭できること
RELATIONSHIP : 良好な人間関係
MEANING :人生の意味・意義
ACCOMPLISHMENT : 達成する感覚・熟練して行く感覚
このモデルを使って日々の生活の中で具体的にアクションとして落とし込む工夫を整理しました。詳しくは上記の記事をご参照ください。
今回は、パーマモデルとは異なるもう一つのモデル。SPIREモデルをご紹介します。パーマモデルと何が違うのか、生活に取り入れる工夫を考えます。
SPIREモデル
ポジティブ心理学自体はアメリカの心理学者マーティン・セリグマン博士によって創設された学問で、Well-beingな状態を高いレベルで維持することが、人生を好転させ、自らの力で充実した幸せな日々を送ることができるとされています。
セリグマン博士を中心に研究が深まっていますが、その中心的な人物のひとりがタル・ベン・シャハー博士。タル博士は「ハーバードの人生を変える授業」の著書でも知られる心理学者。「ハピネス」を専門にされています。
彼はWell-beingをより具体的に高めるためのものさしとしてSPIRE(スパイア)というモデルを提唱しています。
【SPIREモデル】
Spiritual Well-Being / 精神のウェルビーイング
Physical Well-Being / 身体のウェルビーイング
Intellectual Well-Being / 知性のウェルビーイング
Relational Well-Being / 人間関係のウェルビーイング
Emotional Well-Being / 感情のウェルビーイング
これら5つの項目の頭文字をとったものがSPIREモデルですが、5つのWell-beingが実現されている状態をWhole-Beingと呼んでいますね。Whole(全体)と、being(在る)を合わせた言葉。「全体性を持った在り方」のような意味で使われています。
SPIREの5つの要素
SPIREモデルの5つの要素について、もう少し詳しく見てみます。
1.Spiritual Well-Being / 精神のウェルビーイング
自分の人生の目的や意義が何か。どんな価値観のもとに行動するのか。今ここを感じているマインドフルな感覚などを分かっているか。もしくは感じている状態かどうか。
2.Physical Well-Being / 身体のウェルビーイング
生活に習慣として運動を取り入れているか。栄養のバランスを考えた食生活がおくれているか。十分な休息が取れているか。身体的に良い状態が保てているか。
3.Intellectual Well-Being / 知性のウェルビーイング
新しいことを学び、知的好奇心を日々満たしているか。何かしらの挑戦に取り組んでいるか。
4.Relational Well-Being / 人間関係のウェルビーイング
人間関係が良い状態かどうか。互いに大切に思い合えるような関係でいられているか。周囲との関係が自分自身と健全につながっている状態か。
5.Emotional Well-Being / 感情のウェルビーイング
心地よい感情が自分の中を流れているか。心地よくない感情に対しても、レジリエンスを発揮して、穏やかな感情を維持できているか。
なるほど、これらの5つの要素はいずれも幸福感やWell-beingには確かに密接に関わっていそうな項目ですね。これらの中で最も重要なのはどれでしょうか。タル博士によれば、「Relational Well-Being / 人間関係のウェルビーイング」こそが最も幸せとつながりが強い要素とのこと。
アドラー心理学でも、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言していますよね。人間関係のウェルビーイングが担保できた状態は「=悩みが無い状態」とも言えます。これは幸福に大きく近づく要素であると言えますね。
そしてタル博士はこれらの中でも見落としがちな要素としているのが「Intellectual Well-Being / 知性のウェルビーイング」。確かに、5つを俯瞰して考えると序列では最後のピース感はありますね…。
PERMAとSPIREの違い
前述のPERMA(パーマ)モデルとSPIREモデルは何が違うのでしょうか。「人間関係」など、共通する言葉もありますね。
幸せやWell-beingについて語るとき、往々にして「精神的な側面」に注視しがちです。PERMA(パーマ)モデルは自分の内面に意識を向ける項目が多く、それに対してSPIREモデルは「身体」というボディ自体への意識を補完している点が違います。
共通点としては「バランス」に注目している点。それをタル博士は明確に全体性(Wholebeing)という言葉で明確にしていますね。一つの構成要素だけ秀でていても、全体のバランスは取れません。
やはりバランスが大切ということですね。
私が考えるSPIREの順番
ここからは私なりの解釈です。以下の順番で自分のWell-being具合をチェックするのがよいのではないかと思います。
①Physical Well-Being / 身体のウェルビーイング
②Emotional Well-Being / 感情のウェルビーイング
③Relational Well-Being / 人間関係のウェルビーイング
④Spiritual Well-Being / 精神のウェルビーイング
⑤Intellectual Well-Being / 知性のウェルビーイング
まずは①②の心身の状態から。カラダとココロが資本です。ここのキープが最優先です。そして、自分以外の所では③人間関係ですね。ここがやはりキーです。さらに求めるものとしては④精神と⑤知性のウェルビーイング。この順番で満たしていくイメージを持つと良いのかなと思います。
まとめ
今回は幸せの概念として、Well-beingをより具体的に高めるためのものさしとしてSPIRE(スパイア)というモデルを整理してみました。
このモデルによるとSPIREの5要素すべてのバランスと全体性という考え方が幸せには欠かせません。マーティン・セリグマン博士のPERMAモデルとも共通する要素が多く、面白いですね。
個人的には、Emotional(感情的)なウェルビーイングのところで、心地よい感情だけではなく、精神的な痛みや心地よくない感情についても言及されていることにとても共感しています。心地よくない状態でもレジリエンスを発揮して自らの力で整えられるかということですね。
ポジティブ心理学はその字面から、ポジティブシンキングや楽観主義と混同されがちですが、ネガティブ感情を決して否定したり、なくすべきものとは考えていません。どっちもあって自然なものなんですね。プラスもマイナスも両方受け止めるということだと思います。
今回の記事を通して、自分の幸福度をチェックする順番として、心身→人間関係→精神→知性の順で今の自分はどうなっているのかを定期的にチェックしてみようと思いました。
幸福感やWell-beingは、なかなか掴みにくいものですし、ともすると日常生活の中では意識しにくい概念だったりします。
今回ご紹介した「モデル」という枠組みをうまく活用して、都度セルフチェックをして「整える」意識を持っておくことで、自分の幸福度を客観視できるのではないでしょうか。
幸せとは探し求めるものではなく「気づく」こと。
自分で自分の幸せに気付ける習慣を持てると良いですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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