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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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2022年8月の記事一覧

「納得のいく授業」と「費用対効果」や「コストパフォーマンス」は対立する

「納得のいく授業」と「費用対効果」や「コストパフォーマンス」は対立する

20年近くも前の話になりますが、教育実習に行ったとき「教師生活○十年で、納得のいく授業ができたことは数回だ。」という謙虚な話をされた先生がいたことを記憶しています。

就職してからも経験豊富な方や、研修会などでもよくきいた台詞であり、業界の中では一度は聞いたことのある人がほとんどではないでしょうか。
(あるいは口癖だ、という人もいるでしょう)

学校の教員というのは、総じて授業をすることが好きで、

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むしろ「学歴社会」は加速させるべき

むしろ「学歴社会」は加速させるべき

「日本は学歴社会である」と世間一般で言われています。

実際、大学の進学率はすでに50%を超えていて、現役世代の2人に1人は学士の時代になるのもそう遠い未来ではないため、確かに「学歴社会」化しているように見えます。

そんな中、「学歴社会」に対する批判は根強いものがあります。

学歴では人間の能力は測れない、偏差値のような数字で輪切りをすることは非人道的だ、などの批判はリアル、ネットを問わず目にす

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「リフレクション」の効果に関する考察

「リフレクション」の効果に関する考察

ここ数年、授業の後に「リフレクション」(=振り返り)を生徒に書いてもらっている。

授業のプリントに本時の到達目標などを設定し、それに対して言語化する作業をGoogle formで入力する形式をとっていました。

それに関してのこの2年で得た知見をまとめたいと思います。

授業の流れと書かせるタイミング私の授業では、原則として15~20分程度の範囲学習解説をはじめに行います。

基本的な内容や教科

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「ギフテッド」対応の学校が民業圧迫で誰も得しない未来を生む

「ギフテッド」対応の学校が民業圧迫で誰も得しない未来を生む

特別な才能を持つ子供、「ギフテッド」に対して公教育がどう対応するか、ということが話題になっています。

文科省は何らかの対応を表面上は行うようです。

こうした特別な生徒に対しての対応に関しては、これまで前向きな施策はほとんどなかったと思います。

そういった意味では今回の取り組みを行おうとする姿勢は評価できます。

「ギフテッド」へのこれまでの対応これまで「ギフテッド」に関して無策を貫いていた公

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「埼玉超勤訴訟二審敗訴」に見る教員の働き方の問題

「埼玉超勤訴訟二審敗訴」に見る教員の働き方の問題

教員の方、特に働き方改革に興味のある方ならばおそらく注目していたであろう裁判の控訴審が原告敗訴となりました。

内容としては、労基法上は時間外にあたる時間に勤務したものに対して手当てが出ないのは違法ということで教育委員会を相手に起こした裁判になります。

給特法と教職調整額給特法の正式名称は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」というものです。

その内容を簡単に言うと

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「卒業生による大学ガイダンス」の実施に関する備忘録と、卒業生の半年での成長

「卒業生による大学ガイダンス」の実施に関する備忘録と、卒業生の半年での成長

私の勤務校では「卒業生による大学ガイダンス」を実施しています。

対象は高校2年生で、コロナ前までは実際に卒業生に来てもらって話をしてもらっていましたが、近年はリモートで実施をしています。

Google Classroomが非常に便利数年前から、勤務校ではGoogle Workspace を導入しており、Google Classroomの利用を行っています。

また、卒業生のアカウントも現時点で

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どうして日本人は「英語を話せない」のか

どうして日本人は「英語を話せない」のか

これまでの日本の英語教育を否定する文脈や、新しい4技能重視の教育方針が出るたびに、批判の根拠として見かける台詞があります。

「中高6年間英語を習っていたのの話せません。」

こういった言葉はリアルでもネット上でよく耳にします。

もちろん、中高の学習をそれほど熱心にしていない人ならばまだしも、それなりの学歴がある人がこうした言葉を口にします。

大学受験では英語を利用する試験を受けて大学に進学し

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「陰キャ」×「ボッチ」でも教員は務まる

私は友人がいません。そのことについて以前記事を書きました。

当然、私は基本的に社交的なタイプではありません。

地域の交流なども最低限のあいさつ程度ですし、知人と出かけたりすることもほとんどありません。

趣味はガジェット収集とアニメ、音楽の視聴ですし、アウトドアはとことん苦手です。

卒業生とつながりがあるようなキラキラ教師でもあるわけがありません。

プライベートで話すのはほとんど妻子のみと

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ペーパーテストは「公平性」を演出するシステム

ペーパーテストは「公平性」を演出するシステム

大学入学の仕組みの内、日本で最もスタンダードな受験方法が「一般入試」です。

ペーパーテストを受験し、高得点を取ることで合否が決定するシステムです。

推薦やAO(総合型)選抜と比較すると、客観性や公平性が担保されていると考えられています。

このテーマについては一度記事にしています。

先日、メンバーが高学歴(正確には高大学歴ですが)が売りの「学歴の暴力」というアイドルのツイートに以下のようなも

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判定困難な「教員の適性」からの「でもしか先生」歓迎論

判定困難な「教員の適性」からの「でもしか先生」歓迎論

「でもしか先生」という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。

主にやる気がない教員に対して使われる表現で、最初に流行ったのは1950年代というなかなか伝統ある表現のようです。

教員人気と生徒数減少その後は人材確保法(学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教職員の人材確保に関する特別措置法)や給特法の成立で、教員志望者数が一定数確保できるようになりました。

また、1990年代をピ

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リアル授業の価値の低下が教員に「教科学力」を要求する

ICT普及に伴い、リアル授業の価値が低下しています。

オンライン授業で教員側が配信するというケースもコロナ禍の初めにはありましたが、現在ではオンデマンド配信を利用するケースが増えているようです。

小学校ではNHK for School、中高でのスタディサプリや学びエイドなど多くの授業動画がそろっています。

またYouTubeにも無料で利用のものが多数存在し、学校でリアル授業を受ける価値は相対

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課題の適量は「腹六分」

課題の適量は「腹六分」

「腹八分」という言葉を知らない人はいないでしょう。

何事もほどほどが肝心、という意味です。ニュアンス的にはあと少し入りそうだが、適度なところでやめておくということでしょう。

課題を「満腹」で出す熱心さ進学指導に携わっている高校教員には非常に熱心な指導をされる方も多いようです。

特に九州では公立、私立を問わずそうした「熱血指導」、「丁寧な指導」を売りにするケースが散見されます。

そうした教員

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「勉強をしなくても豊かに暮らせる時代」に、あえて勉強をする理由

「勉強をしなくても豊かに暮らせる時代」に、あえて勉強をする理由

私が子供のころは勉強をする目的について多くの大人は同じような言葉を口にしていたように思います。

「将来いい会社に勤めるため」、「安定した仕事について貧しさから解放されるため」といった理由です。

幸福追求のための手段の一つとして学問を修めるという目的は非常に明確でわかりやすい理由づけと言えます。

右肩上がりの成長の時代右肩上がりで経済成長を遂げている時期はそうした価値観に疑いを持つ必要もなかっ

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教員は「感動ポルノ」といかに戦うか

教員は「感動ポルノ」といかに戦うか

学校教育の場には運動会、部活動の大会、発表会、クラスマッチ、卒業式など人生の一ページとなりそうなイベントが溢れています。

こうした行事は教育上の何らかの目的をもって実施を行われています。

ところが、こうした行事の目的がすり替わり、皆で感動するだけを目的とするようなすり替えが学校現場では頻繁に行われてきました。

今回はそのことについて考えたいと思います。

「感動ポルノ」とは何かまずは定義を確

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