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トランプ2.0/カネと権力/リバタリアンと保守派

日本時間の本日未明、第二次トランプ政権が発足した。今回はそのことについて、私見を述べてみたい。

まず、トランプという人物についての印象だが、かなり強烈である。「グリーンランドを買う」「カナダは51番目の州」など、世界中の人が驚くような突拍子のないことを言い出す。彼が最初に政権を握ったのは2016年だったが、当時からキャラクター的にはそういう認識だった。しかし今回は当時よりも大胆になったような気がしている。

押さえておきたいのは、彼は元来ビジネスマンだということ。ずっと政治家をしてきたわけではない。その才長けた交渉能力を活かし大金を稼いだ背景がある。納税額も大きい。なので、自身が収めた税金が、自分にメリットのない形で社会に再分配されることを強く嫌がるのである。移民や少数民族、社会的弱者への救済措置に対し「なぜ自分の実力で稼いだ金を彼らに使われなければならないのか」と思っている(=右派)。加えて、他国への出資などもってのほかである。

今後、少なくとも彼の任期中、アメリカはどうなるか。本人が述べるように『自国第一主義』となるだろうか? 私は疑問を抱いている。トランプ政権下では、カネはカネのある場所に集まり、権力はより大きな権力に吸収されていくだろう。これはつまり格差拡大を意味する。『自国第一主義』と言うとアメリカ国民にとっては聞こえがいいだろうが、『自国』という言葉に『社会的弱者』は含まれていないことに気がつかねばならない。

さて少し話を戻すが、トランプは「グリーンランドを買う」「カナダは51番目の州」「関税引き上げ」「パナマ運河を取り戻す」等々、発言のみで国際情勢にも大きな影響を与えている。今日以降、100にも上る大統領令で実行に移していくだろう。

ビジネスマンのいやらしいところは、表ではニコニコ手を組みつつ、裏では自分の勝ち逃げを狙う姿勢だ。しかし資本主義経済においては、これが王道の勝ちパターンである。いかに周囲を出し抜くかという狡猾さが、競争社会で生き残る術である。トランプはこの社会のルールを身をもって経験し、実際に勝ち残り、米国大統領まで上り詰めた。しかも米国において、一度退任したのちに再度大統領に返り咲くケースは132年ぶり2人目だという。これらの事実が、彼が相当なやり手であることの何よりの証拠である。

多くの人が「買い物をするときに値引きをしたければ、一番最初に最低金額を提示し、徐々に、相手が提示する高い金額に近づけていけ。それが結果的に値引きにつながる」というような話を聞いたことがあるだろう。逆に自分が売り手である場合は、最初に高値を提示する。相手が買い渋ればそこで初めて値引きをして売りつける。成績が自らの給料に影響を与える営業マンのほとんどはこの手法を用いているはずだ。

経済はこのような仕組みの連続で動いているわけだが、トランプの発言を見ていると、まるでぼったくりBARの店主のようである。それもタチの悪いほうだ(批判したいのではなく客観的な印象としてそうだということ)。驚くとか、腹が立つとか、そういうレベルを超えて「それ本気で言ってるの?」と、まずジョークを疑いたくなるような提示を自ら先に仕掛けることで、自分が有利な方向に話を持っていく戦略。(世の中の営業マンはトランプ大統領をよく観察すると成績が上がるかもしれない)

気を付けたいのは、彼は必ずしもグリーンランドやカナダ、パナマ運河等の入手を断固として実現したいわけではないかもしれないこと。真の狙いは、そうした細かいことよりも「アメリカは大きく方向転換する」「アメリカに甘えるな」というメッセージにありそうだ。アパレルで例えるなら「我々は一流ブランドなのだからセールで安売りなど一切しない」という路線であることを明確に示している。セールは顧客層の変化を引き起こし、ひいてはブランド価値を毀損させるという発想である。まさに『保守』。

私は正直、トランプ大統領のような人物(方向性として、納税者を保護する思想を持つ人物)に、日本政治の指揮を執ってもらいたい。『日本は隠れ社会主義』という言葉を最近耳にした。格差是正を旗に税金をバラマキ過ぎており、結果として中途半端、むしろ弱い状態になってしまっているという批判。世界を見渡しても社会主義で大きく成功してる国はない(どれも一時的なもので、持続性がない)。

<補足>社会主義のマズさについては次の記事を参考されたい。

出版社に勤務していた頃の上司がよく「薬にも毒にもならない本は作らない」と言っていた。今の日本の政治は薬にも毒にもなっていないと思う。とにかくビジョンが不明瞭で国民心理としては将来への不安が大きいのではないだろうか(私はそう)。

盛者必衰という言葉がある。数十年単位の長期で見ればやがてアメリカも廃れるだろうが、トランプ2.0によりしばらくはアメリカ一強が続くのではないか。ひとたび自己中心的な存在が現れると周囲もそれを真似て(自分だけ損を被りたくないので)自己中心的になっていく。そういうときは混乱が生じ、秩序が乱れ、衝突が起きる。

第三次世界大戦が勃発し、地球が”大惨事”にならないことを願うばかりだ。


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